#81
月曜日は更新できず申し訳ありませんでした!
本日は二話更新しております(こちらは一話目です)
(sideクラウス)
寝室とした天幕に向かう主を見送り、執務用の天幕に戻る。
気を遣ってかエルヴィン様の部下が用意してくれていた軽食をありがたく頂き、報告書に目を移す。
元々護衛騎士として公爵閣下のお側に侍ることしか興味が無かった己に、無理矢理書類仕事も仕込んでくれていた叔母に感謝を感じつつ、ただ淡々と業務をこなしていく。
業務量の多さに、マーガレット様の凄さを改めて認識しつつ、出来るだけ簡潔に、必要な情報を書き出す。
こちらの反乱を首謀した連中はどうも計画性はおざなりのようで、占領していた施設からは山のように証拠品や身元に繋がりそうな品が見つかっていた。
逃げた連中がどこまで裏に関わっているかは微妙なところだが、ここに来ていたのはどうせ使い捨ての末端だ。
大した情報は望めないし、証拠品から辿ることも防がれているだろう。
しばらくすると、音もなく天幕に入って来た男が、書類の山を机の上に置いた。
エルヴィン様の部下の大半は一般人と大差ない能力しか持たぬが、直属の部隊だけは汚れ仕事や裏工作も辞さない鍛え上げられた影の者である。
存在自体は昔から知っていたが、今回の同行では直接指揮権を貸し与えられることになるとは誰が想像できたか。
「……気配を消すのは止めてくれないか。心臓に悪い」
「クラウス様、職業病ですからどうかご容赦を。追加の資料を持ってまいりました。……エルヴィン様から、こちらをと。閣下にお知らせなさるかはお任せするそうです」
「……なるほど? ありがとう、後は下がって大丈夫だ。何かあれば明日また頼む」
「心得ました」
閣下宛てではなく、自分宛てという事ならば危急の用ではないのだろうが、今回の件についても何か調べがついているのかもしれない。
書類から顔を上げ、取り急ぎ封筒の中身を確認する。
伝えられたのはユリウスの裏切りと、それを裏で手引する勢力の存在。
自分と同じく幼い時分より側近として育てられてきた後輩の裏切りに呆然として声が出る。
「ユリウスが……」
辺りの気配を探り、近くに人がいないことを確かめ、もう一度手紙に目を通す。
薄々感じていたが、やはり旧知の者が敵となるのは少しだけきついものだ。
ユリウスは幼くして両親を亡くし、執事長に育てられているが、代々ブルーメの側近を任される内政に長けた一族の跡取りとして生まれた男だ。
性格は至って真面目、直情型の自分とは違い、武芸はからきしだが冷静に物を見ることが出来る奴だと思っていたから、根拠に乏しい親の仇を主家の危機に乗じて討とうするほど向こう見ずな馬鹿をやるとは驚きだ。
性格的にいえば、一度信じ込んだものを疑いもしないのはむしろ自分の専売特許だろうに。
先代公爵閣下の側近は当初十人ほどいたというが、現在マーガレット様の側近としてお仕えしているのは執事長、エルヴィン様、自分とユリウスの四人のみ。
無礼を働いた自分と裏切りの疑いをかけられたエルヴィン様に続き、ユリウスはついに反逆行為に加担する不祥事続き。
エルヴィン様はともかく、自分とユリウスに関しては間違いなく自分たちの視野の狭さが原因なのだから、目も当てられない。
それでもマーガレット様が自分をクビにしなかったのは、あの方の恩情以外にも人手不足という切実な問題があるのだ。
とはいっても、それ以前の私がここまで仕事を肩代わりして差し上げることはなかったのだが。
外交に関しては閣下の御婚約者とリリアーネ様が担われるとしても、やはり側近にこうも傷の付いた者が多いのは困るだろう。
騎士団にもやり手は多いが、自分と同年代となるとどうしても見劣りする者ばかりで、結局自分の後任候補も出せない。
時間はかかるが一から育てる他ないのかもしれない。
「呪いとは、今時古風な……いや、だからこそ、なのか? リリアーネ様が狙われたことは自分からは言えないな……」
ユリウスを捕らえるために、向こうで色々とやったようだと分かり、思わず顔をしかめる。
エルヴィン様は自分よりいざという時に動ける分、子ども相手でも危険な行為をあまり止めてくれない。
騎士志望の見習いや平民であればまあ良いが、リリアーネ様は孤児院が長かったとはいえ公爵令嬢だ。
閣下も許したとは聞いていたが、これは直接ご本人が説明するべきだと判断する。
閣下にはユリウスのことと、呪いとやらの話だけ伝えることにする。
ふと、こちらで捕らえた連中の様子を思い出す。
無事だった家臣たちから聞く限り、相当な暴れようだったそうだが、調べがついている肉親からの情報と必ずしも一致しない部分があることが気にかかっていた。
こちらでも似たような手段が使われているかもしれないとすると、狙われているのは北部だけではないということだ。
二話目は夜更新です!




