#55
最近ずっと間に合ってない(泣)
本当お待たせしてすみません……
「お姉さま、失礼します」
ビリーとアノンにもついてきてもらい、お姉さまの執務室を訪ねる。
出迎えてくれたお姉さまは私以外に二人の少年もやってきたことに一瞬目を見張るが、何も言わずに全員を招き入れてくれた。
「リリ、いらっしゃい。……ゼルス、人払いを頼むわ。お前も一度下がって構わないから」
「畏まりました。彼らは?……」
「大丈夫。話すべきこともあるから」
執事長に対して人払いを命じて下がらせると、お姉さまは私たちに着席を促して、用意されていたティーセットにお茶を入れ出してくれる。
余分に用意されていたはずのティーカップも使って、ビリーとアノンにも紅茶を出してくれる。
既に出征の準備を終えたらしいお姉さまの出で立ちは、白馬の王子もかくやと言わんばかりの麗しさだ。
黒地に青と金の装飾が為された騎士服は、戦場での機能性を考えてか、いつか見た騎士服よりも些か地味なデザインだけれど、却ってお姉さまの素の美しさを際立たせている。
高い位置に結わえられたポニーテールはお姉さまの整った顔立ちをより一層凛々しく見せている。
エルヴィン曰くお姉さまもエルヴィンの無実を理解しているという話だったけれど、一体何の話だろうか?
「あの、お姉さま」
「大丈夫。エルヴィンがこの家を裏切るようなものではないことは分かっているわ。……というか、リリ達もエルヴィンがわざと牢に入っていると聞いたのではないの?」
「えっ」
戦いの準備中に勝手にエルヴィンの所に行ったなんて知られたらお姉さまを困らせると思い、私は連絡もしなかったのに。
どうしてお姉さまがそのことを⁉
驚きで私は一瞬固まったけれど、右隣のアノンの台詞で謎は氷解する。
「僕が報告を出しておいたんだよ。僕はリリの意思を尊重するつもりだけど、だからと言って安全を放棄するつもりもないから。保護者に伝えておくくらいはした方が良いでしょう?」
そう言われてしまうと、ぐうの音も出ない。
精神上は一度成人した身とはいえ、肉体は完全なる子ども。
保護者が知る必要があると言われればそれまでだし、アノンは協力もしてくれたうえで報告をしているのだから責めることはできない。
「正直教えてくれるならことを起こす前に行って欲しかったものだが」
「そうしたらリリの望んだことが出来ないでしょう? 最低限報告をして差し上げたのだからそれで満足していただかないと」
お姉さまはジト目でアノンのことを見て少しだけ嫌味を込めて言うけれど、アノンはあっさりといなす。
涼しい顔で紅茶にミルクと角砂糖を足しながら話す姿はとても堂々としている。
私は決まりが悪くなって、目線をそらしながらも、お姉さまに謝罪する。
「……ごめんなさい、お姉さま。でもエルヴィンが裏切るなんて信じられなかったから、どうしても確かめたくて……」
「リリ」
私の名前を呼ぶお姉さまに、恐る恐る顔を向けると、お姉さまはいつになく真剣な顔で話し始める。
「私は貴女の姉で、今は保護者でもある。責任のある大人としても、貴女を大事に想う姉としても危険なことはしてほしくないし、何が起きても自分から関わろうとはして欲しくない」
お姉さまはそこまで言うと一度言葉を切り、顔を綻ばせ、優しい顔になる。
「……でもね、貴女がエルヴィンの潔白を信じようとしてくれたことはとても嬉しく思っているし、行動を起こそうとしたことは誇らしいとすら思えるわ。貴女が信頼する大人を見つけられたという事でもあるのだもの」
「アノン、ビリー」
私がどう返事したものか迷っているうちに、お姉さまの視線は私の両隣りに座る二人に向けられる。
お姉さまは一瞬瞼を閉じると目を開き、真っ直ぐな瞳で二人に問いかける。
「私がいない間、私の妹を頼んでも大丈夫か?」
ビリーとアノンはその問いかけに間髪入れずに返答する。
「リリは俺にとっても大事な家族ですから、任せてください」
「公爵様に言われずとも、僕はリリを守りますよ」
「……仕方ない」
二人の返答を聞いたお姉さまは、苦笑いをして一つ頷く。
それから再度私と目線を合わせてくる。
二本指を立てて、注意事項を説明してくる。
「情けない話、エルヴィンのことまで手が回っていないのも事実だ。リリ、自分の命を危険にさらすような真似だけはしないで。それと何をしたのかはしっかり報告する事」
「それってつまり……!」
流れを理解した私がお姉様の言葉の意味に目を輝かせたのを見て、お姉さまが頷いた。
「ええ。リリアーネ・ブルーメ、貴女にエルヴィンの件の捜査権を与えてあげる」
いつもお読みいただきありがとうございます。
次回更新予定 6/12




