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公爵姉妹は幸せです  作者: 京栞


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50/63

#50

50話目ですって奥さん!

こんな日も日付を越えるなんてどうかしてますよ作者は(orz

(sideリリアーネ)

「……やっぱりエルヴィンは無実なのね、良かった。けど、地下牢にまで入るのは作戦とはいえ心配だわ」


 転移で部屋に戻ってきたビリーの報告の内容は、エルヴィンは裏切ってなんかいないと、安心してもいられなさそうな状況だった。

 ビリーは地下牢の様子については詳細に教えてくれなかったので、それだけでエルヴィンのいる環境が相当に悪い所なのだと察せられる。


「おっさんはとりあえず公爵様がいる間は何もできないだろうって言ってたけど、公爵様はいつ出発するんだ?」

「……遅くとも明日には。早ければ今日中にでもって……」

「じゃあもうほとんど時間はないってことか」


 北部の反乱を収めるのは当然、北部の大領主たるお姉さまであるべきだが、今回はさらに王家から使いも来ているのだ。

 家中に裏切り者がいようが、これ以上手間取ってはいられない。

 お姉さまは公爵として一刻も早い出陣を迫られていた。

 ましてや、人命もかかっている反乱なのだ、私の我儘で引き延ばせるようなものではない。


「そうね。一刻も早く助けないと……」


 急がなければ、エルヴィンが負わなくてもいい傷を負うことになる。

 逸る心を察してか、一緒に話を聞いていたアノンが私を制した。


「けど、エルヴィン・シュトゥルムはそれも分かったうえで選択してるんだよ。それを邪魔するのも良くないんじゃない?」

「じゃあ、どうすれば……」


 確かに下手に私が余計なことをすれば、エルヴィンが自分の犠牲を覚悟してまで仕掛けた罠に引っかかる者は出ないかもしれない。

 けれど、自分勝手だとは分かっていても、エルヴィンが悪いことをしたわけでもないのに傷つくのは嫌だ。


 私の悔しげな顔を見たアノンはため息を吐いて解決策を告げた。


「やることは単純だよ。誤解を解いてあげれば良い」

「どういうことだ?」


 ビリーが首を傾げる。

 アノンは冷静な顔で淡々と説明してくる。


「エルヴィン・シュトゥルムの処遇の権限は、公爵様の不在中は執事長さんとユリウス・カルストが持つことになっているんでしょう? なら、カルストが暴走せず、エルヴィンに危害を加えなければ良い。リリも外出は禁止されていても、呼び出すことは禁止はされてないし、シュトゥルムが放置していた誤解を解いて上手くこちら側に抱き込めば良い」


 確かに、いくらユリウスが忙しくとも、エルヴィンを勝手に拷問するよりかは令嬢である私の呼び出しを優先するのが筋だろうし、真面目なユリウスがそれをそうそう破るとも思えない。

 やんわりと拒否される可能性もあるけれど、拒否し続けることはできないだろう。


「でもどうやって誤解を解くんだ? リリの話でさえ冷静に聞ける状態じゃあなさそうだったけどな」

「確かに、彼がどこまで冷静に話を聞いてくれるのかは未知数だけど。でも、きっと突破口がすぐ近くにいると思うんだよね」


 ビリーの疑問に内心で同意していると、アノンはにこりと笑んだ。


「突破口?」

「リリの侍女だよ」


 私の侍女ということは、ミディのことだろう。

 彼女が、突破口?


「確か執事長の孫なんだって? 彼女もシュトゥルムへの当たりが妙に強そうだし、随分とカルストに肩入れしてるみたいだから、きっと彼がそこまでシュトゥルムを恨む根本的な理由を知っているんじゃないかな」


______

 部屋に呼び戻されたミディは、落ち着いてこそいたものの、私とのやり取りは尾を引いているらしく、どこか動きがぎこちなかった。

 私の両隣りに座るアノンとビリーに怪訝な顔をしつつ、向かいの席への着席を促すと恐る恐る席についた。


「ミディ、私、あなたに聞きたいことがあるの」


 私の言葉を聞いたミディは、何かを察したかのようにまた険しい表情をして、語気を強めに話す。


「私に聞きたいこと、ですか。残念ですが、私はシュトゥルム卿の居場所へお嬢様をご案内するような真似は出来かねます。私はお嬢様をお守りしなければなりませんから」


 ミディの言葉に私は慌てて否定の言葉を返す。

 確かにアノンやビリーがいなければ、すぐさまそのような発想に至ったのだろうけど、今の目的はそれではない。


「違うの! 確かに会わせてくれれば嬉しいのは確かだけど。聞きたいのは、もっと根本的なことなの。私にとってエルヴィンはとても優しくて思いやりのある人だから、裏切ったなんて信じたくないの」


 私の言葉に、ミディは少しだけ気まずそうな顔で目をそらす。

 いくら日頃敵視していても、私に対して常に尊重と優しさをもって接しているエルヴィンの姿は私以外ではミディが一番見ているはずなのだ。


 私はミディの手を取って握り、彼女の顔を覗き込み視線を合わせて話しかける。

 ミディの目はうるうると、今にも零れ落ちそうなくらいに見開かれている。

 私はその瞳の奥に、泣いている小さな彼女の幻影を見た。


「でもね、同時にミディやユリウスが悪い人ではないってことも十分知ってしまっているの。私を思って貴女が怒ってくれたんだって分かってしまうの。だからお願い。私に教えてちょうだい」


 あなたたちが、エルヴィンを嫌う理由を。

いつもお読みいただきありがとうございます。


次回更新予定 5/29

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