#31
久々に12時台に間に合いました!(歓喜)
話が煮詰まり、資料をまとめ終えたエルヴィンが、椅子から立ち上がる。
「よし、これで大体の予定は決まりですね、姫様。……けど、本当に大丈夫ですか? 領都でパレードとかの方がお金はかかっても貴族へは会わずに済みますよ?」
「ありがとう、エルヴィン。けれどパレードになってしまうと、その分、道の舗装だったり、警備の人だったりって動かさなきゃいけない人も多いみたいだったし。お姉さまの妹として認めてもらうためにも頑張りたいの」
公爵邸の広大な庭で行われるお披露目は、ブルーメ公爵家の伝統の形に沿ったガーデンパーティーだ。
所属する派閥や一族ごとに私とお姉さまのいるテーブルを訪ねてもらい、私のことを知ってもらう。
お姉さまの時は、先代公爵夫妻が事故で亡くなり、急遽、公爵位継承のお披露目も兼ねることになってしまったようだけど、先代も先々代もお披露目はガーデンパーティーを行っていたようなので、私もそれに則ってみることにしたのだ。
エルヴィンは、他の貴族たちのお披露目の資料も集めてもらったけれど、パレードや食事会といった他のやり方の方が私への負担は少ないのではと心配してくれたけれど、出来るだけ例外にはならない形で進めたいと私の意見を押し通した。
……巻き戻りの前、ブルーメ家が行ったのは民衆に向けたパレードで、お姉さまと装飾した馬車に乗り、二人で領都を中心に一週間かけて領内を回った。
既に、公爵邸の屋根裏で監禁同然だった私は、当日までお披露目が必要なことすら知らなかったので、早朝いきなり屋根裏から侍女たちに引きずり出され、わけの分からぬままに、高価で綺麗な衣装を着た「公爵令嬢」として、お姉さまの隣で領民に手を振り続けた。
貴族社会に慣れていない私が言質を取られないようにする為か、貴族へのお披露目はパレード直前に三十分程度一同の前でお姉さまに紹介されるだけのシンプルなもので、駆け付けた貴族個人との時間は取らなかった。
今回は前回とは逆で、貴族たちと話す時間をたっぷり取るための形式だ。
招待する人々も、北部の貴族は勿論、王都や南部、東部、西部の高位貴族、有力な商人や近隣国の大使など、公爵家のつながりのあるような人物はほとんど呼ぶことにした。
お姉さまの傍にいると決めた以上、同じ結末に辿り着くことを避けるには、出来るだけ多く顔をつないで頼れる人を見極めることが必要だ。
「姫様は一人で無理しそうだから、心配ですよ俺は。出来るだけ一人で対応しなきゃいけない時間は出ないようにしますから、準備段階でも本番でも、何かあったらすぐ言ってくださいね? 別に俺じゃなくて、ユリウスでもミディちゃんでも良いですから」
エルヴィンがそう言って、先ほど部屋に戻ってきて私の後ろに待機し始めたミディを指すと彼女はキッとエルヴィンを睨みつける。
「シュトゥルム卿、私を名前で呼ぶことは許した覚えはないのですが」
「ん-、でもさ、家名だと執事長や君の親父と被るじゃないか」
にこやかな表情を崩さないエルヴィンに対して、ミディはあからさまな嫌悪の表情を浮かべている。
二人の様子を見るに以前からの知り合いではあるようだけれど、前回の生ではミディに出会うことは無かったので二人がどういった関係性なのかは分からなかった。
ミディがいない時にエルヴィンに聞いてみようかとも思ったけれど、何となく言い出せずに結局ミディの強い怒りが何に対してなのかは分からなかった。
「それじゃ、俺はこのままマーガレット様に報告しに行きますんで。次はガーデンパーティーに絞った資料を持ってくるので、もっと具体的な計画を立てていきましょうか」
私が何も仲裁できずにいると、それを察したのかエルヴィンは後を引くことなく、さっさと部屋を出て行ってしまった。
ミディも、彼女なりの線引きなのであろう、本人がいなければ殊更に怒りはしないようで、さっと表情をすまし顔に戻している。
それにしても、さっと決めてしまったせいで、思いがけず夕食までに空き時間が出来てしまった。
今日もお姉さまが一緒に夕食を取ってくれる予定なのだ。
一日あれば、またアノンにこの前の続きを聞きに行くことも出来るだろうけれど、ビリーたちに会いに行くには時間がないし、今更絵本や人形遊びみたいな子どもらしい遊びをしたいと思える精神年齢でもない。
最初の内容は私でも知っている最低限のマナーとは言え、この子供の体で実行できるかは怪しいし、時間のあるうちに復習でもするか。
後ろを振り返って、ミディに声をかける。
「図書室で今日の復習をしようかな」
「かしこまりました、すぐにじゅ……」
コンコンコン。
ミディが返答しかけたとき、扉がノックされ、外から執事長であり、ミディの祖父でもあるゼルスの声がした。
「リリアーネ様、ゼルスでございます。ご在室ですか?」
「どうぞ入ってください、ゼルス!」
ミディが開けたドアからさっと入って来たゼルスは素早くドアを閉める。
私と普段接するときは優し気なおじいちゃんのような雰囲気を纏っているのに、今日の顔はいつになく真剣だ。
「お嬢様、これから数分もしないうちにお客様がいらっしゃるので、リリアーネ様は念のためお客様がお帰りになるまでお部屋から出られないようにお願いします」
「お客様?」
私が首を傾げると、苦虫を噛み潰したような表情になったゼルスが頷き、重々しく口を開く。
「……はい、公爵家とはあまり仲の良い関係ではない方々ですので、リリアーネ様はまだ体調を崩していらっしゃることにしたいとマーガレット様が……」
なるほど、お披露目前に押し掛けることが出来る相手ではあるが、教育が終わる前の私には悪影響かもしれない相手、ということだろうか?
公爵家と長年敵対しているような間柄で、直接ここを訪ねてくるような相手だと王族がまず先に思い浮かぶけれど……。
「そうなんですね。分かりました、今日はもうお部屋の中で過ごします。ちなみにどんな方がいらしたんですか?」
「……王都中央神殿に仕える教会の第三聖女、レストゥラ・シモン様の御一行です」
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次回更新予定 4/13




