↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵姉妹は幸せです  作者: 京栞


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

106/110

#106

二話公開一話目です!

連続で更新しております。

「それでは私は一度、神殿の方に戻り必要な手続きを準備してまいります」


 私が泣き止むのを待った後、神父様はお姉さまとエルヴィンと共に一通りの実務的な打ち合わせを行い、一度その報告に北部大神殿へと戻ることになった。


 神殿の公爵家への外交権はほとんどアスター神父様にあるとはいえ、上層部への報告と協力の要請は欠かせない。

 まあ北部神殿内は、派閥争いはほとんどなく、敬虔な教徒が多いので、女神の選んだお方の考えだと言えば否とは言いますまい、とは神父様の台詞だ。


「過去の記録でリリアーネ様と同じ状況におかれていた方がいらしたのか調べさせるよう指示しておきましょう。子どもたちの養子縁組に関しても、一切の問題が出ないように手配いたします」

「リリアーネのことは、出来るだけ他に広めたくない。ただでさえ、公爵家にも慣れてきてくれたところだというのに、余計な意図を持って近づいてくる者が増えては堪らない。頼めるわね?」


 心配性のお姉さまが最後にまた念を押すと、神父様はしっかりと頷いて微笑んだ。


「心得ております、閣下。神殿長を始めとした事情を知っている者のみで進めるようにしますのでご安心を」

「俺はとりあえずコイツを神殿まで送ってから、一度北部を回ってきます。失敗したばかりとはいえ、まだ何か企んでいる者がいないとも限りませんから」


 疑いが晴れて以降、仕事ばかりでずっと忙しくしているエルヴィンは最近ではほとんど話せる時間がない。

 その上更に公爵邸からも離れてしまうと、顔すら見れなくなってしまう。

 私にとってはお姉さまやビリーたちの次に、心配している人でもあるので、私が気付けないような所で窮地に陥ってしまったらどうしようかと不安になる。

 そんな私の表情に気付いたエルヴィンは苦笑してそっと私の頭を撫でてくれる。


「……大丈夫ですよリリアーネ様。危険な所に行くわけではなく、しばらく休んでいた部下に指示を出してくるだけですから。気楽にお土産でも待っていてください」

「じゃあ、何かお姉さまと食べられる甘いものを買ってきてください」

「はい、分かりました。甘いものを馬車いっぱいに積んで帰ってきますから」


 エルヴィンと神父様が公爵邸を出立した一週間後、今度はビリーやアノンを始めとした孤児院組が、公爵邸から元の使用人宿舎へと戻り、そのままそれぞれの養子先へと向かうことになった。


 元はお姉さまの不在の間、私の遊び相手として滞在するという名目で滞在していたけれど、お姉さまが戻った後も私が外出が許される状況でもなかったので、そのまま居続けてもらったのだ。

 しかし、エルヴィンたちによってそれぞれ身元のはっきりとした家に養子に行けることになって、流石に公爵邸から直で向かうことは避けたいとなったそうだ。

 私としては神父様たちが養子縁組の準備を整えて戻ってきてからでも良いと思ったのだけれど、ビリーはそれ以上は甘えられないと首を横に振った。


「皆、本当に出て行っちゃうの? まだこっちに居てくれたって良いのに……」

「本当は公爵様が戻ってくるまでって話だったろ? 養子の件とかもあって、ご厚意に甘えてたけど、それぞれの養子先も決まったし、元々頂いてた部屋も片付けないと」

「……それは別に使用人の人たちにお願いしても良いじゃない。そこまで荷物が多いわけでもないし」


 そもそも私の遊び相手という名目で呼びよせているのだ。

 多少私がわがままを言ったということにして、お仕事として荷造りをお願いすれば問題ないはず。


 そう言って拗ねて見せたけれど、ビリーは頷かなかった。


「駄目だ。リリが俺たちを気にしてくれるのは嬉しいけど、俺たちはこれからはリリの家来ってことになるんだ。最低限、筋は通さないと」


 それでも寂しいものは寂しい。

 私が目を伏せると、ビリーは私のことをぎゅっと抱きしめて言ってくれる。


「……大丈夫、養子に行ったって、俺たちの一番大事な家族は変わらないから」

「ビリー……」

「それより、次会う時はもうちょっとお嬢様らしく偉そうにできるようになってろよ。俺たちとか、公爵様だけなら良いけど、いずれ外に出るなら俺たちを家臣としてあごで使うくらい出来なきゃ舐められるぞ」


 そう言ってニヤッと笑ったビリーは、私がいくらそう言われても敬語を使われることを嫌がったり、気を遣ったりしてしまうことを分かっている。

 私だって、公爵令嬢としてはそれがいけないことだとは分かっている。

 分かっていても、その距離感の変わり方はどうも落ち着かないのだ。


「うぅ……」

「リリは、それが出来ないから良いんだよ」

「アノン」


 先に送迎用の馬車に乗っていたアノンがひょいと顔を出したかと思うと、降りてきて私の手を握る。


「僕も本当は出来るだけリリから離れたくないんだけど。当分は公爵様がいるから安全だろうしね。養子に行ったらしばらくは神殿に籠らなきゃいけないかもしれないけど、出来るだけ早く戻るから。……女神や過去関連で何かあったらいつでも呼んで。絶対に助けに行くから」


 アノンは最後にぎゅっと距離を縮めると、声を潜めて私の耳元に囁き、すっと離れる。


「分かったわ、ありがとう。……皆、次会うまで体調を崩さないように気を付けてね」

「うん、気を付けるよ」

「ああ、そっちもな!」


 最後に一回ずつ二人とハグをして、馬車に乗り込み出発するのを見送る。


 空は、よく晴れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。