第38話 フラグは早いうちに
「バルド?!それはさすがに急すぎない?!」
「坊ちゃん、いまだ倒れているドンゴ様のご友人もおりますし、ココよりもバルゼルムにある魔王国所有の館に案内する方が安全ですので」
え?バルゼルムに魔王国所有とかあるの?
魔王国の城自体が結構古くて、土地がまだ枯れ果てている状態ということもあるから、別の国に館なんてものがあるというのは驚きだ!
「バルドさん?ちょっと質問なのだけれど……」
「どうかしましたか?坊ちゃん」
そんな綺麗な顔で、首を傾げられても
「いや、展開についていけてなくて」
「バルド殿 私もルシアン殿と同意見だ」
お、推しに名前を呼ばれましたよ?!
落ち着け俺!ボイスメモが無いこの世界が恨めしい!
「ユ、ユーリス様の言う通り!」
「ふむ。当初の目的は果たしましたが、まだまだ彼らには聞きたい事もありますので、その方がよろしいかと思ったのですが。」
いや、そうだけれども!
「そもそもなんでバルゼルムに魔王国所有の館があるの?」
「あぁ、そのことでしたか。魔王国は魔物退治を主に請け負っているので魔王国で討伐依頼を受けてから向かうより、各国に拠点を置くことで定期的に討伐する方が効率が良いのです。勿論、依頼を受けてからも出動しますが『ちょっとお!何するのっ!!!』……騒がしいですね」
「サンゴ!お前何をやってるんだ!」
バルドに話を聞いている途中で、リュシアさんの叫ぶ声が聞こえた
その後でドンゴさんの声も聞こえたが、サンゴ?
急いで後ろを振り向くと、寝ていたはずのドンゴの仲間がリュシアさんに後ろから抱きついた形でナイフを首に当てていた
俺は驚いて身動きが取れずにいたが
「リュシア!」
ユーリス様が名前を叫びながら、リュシアさんに向かって剣を抜きながら走って向かう姿がスローモーションに見えて、さながらヒーローショーを観ているようだった
いやほんと、大変な時にトキメキが勝ってしまう俺の馬鹿!
「貴様!その手を話せ!」
えー!もう本当に勇者!!
なにそのセリフ!
生まれてこの方、そんなセリフ1回も使ったことない!
「坊ちゃん、坊ちゃん」
「え、なに?バルド。今いい所なんだけど」
横から肩を軽く叩かれてバルドに耳打ちされるが、今クライマックスかってくらいのシーンなんだけど?
「助けなくてよろしいのですか?」
「・・・」
あ。それもそうか
あまりにも転生前に夢に見たシーンだったので
現実と夢の違いが曖昧になってた
「バ、バルド!すぐ助けに行って!」
「仰せのままに」
「そんな必要なさそうよぉ?」
「「え?」」
「ム。」
ヴォンッという音と共に、ロークが斧を力強く振ると 忽ち強風が吹き荒れてリュシアさんにナイフを向けていた男とリュシアさんが吹き飛ばされた
「い、いやぁぁぁあー!」
「のぅわあーーー!」
俺も危なかったが、バルドとヴァイスは平然と立っていてバルドに抱っこされていたので無事だった。
「リュシア!無事か?!」
「もう!全然無事じゃないわよう!」
「無事で良かった!」
「だあからぁ!無事じゃないったら!もうユーリス!」
「ム!」
ロークは誇らしげに腰に手を当てて旨を張っているのはなんだか可愛いな
いやでも驚いた
まさかロークが出てくるとは思わなかった
なんとも呆気ない幕引き
もっとユーリス様の勇者感を見ていたかった
リュシアさんの声は明るいので、大丈夫そうだしユーリス様がついているから安心だ
「坊ちゃん。サンゴ様は木にひっかかってますがどうしますか?」
「本当だ、器用だなあ」
あんな綺麗にひっかかることってあるんだ
「っ申し訳ありませんでしたぁぁあ」
「あらぁ?なんで貴方が謝るのかしら?」
ドンゴは遠くからすごい勢いで走ってきて土下座をかまし、ヴァイスがドンゴを睨みつけたせいで、ビクリと身を震わせるが頑張って喋ろうとしていた
「い、いや、きっとアイツ勘違いしてるんじゃねぇかって……」
ドンゴはなんだか分が悪そうに手をこまねきながら、視線をあちこち泳がせた
「勘違い?どういうことですか?」
「あ、坊ちゃん。いや、その……実はレクスを探してる奴が実は坊ちゃん達以外にもいて……以前にもレクスのことを聞かれたことがありやして」
「え、そうだったんですか?」
つくづくお茶飲んでる場合じゃ無かったな
全く聞いていないせいで情報がまだ出てきそうだ
「明らかにソイツらはヤバい感じがしたんで、その場は濁したんだ……その、ヴァイスさんが来た時は同じ魔族だし むしろレクスのことを知ってるんじゃねえかと思って協力しようとしたんだが襲われて……」
「アイツ、多分襲われたからソイツらの仲間が坊ちゃん達だと思って、、レクスを守ろうとしたんだと……」
「何処の誰だか存じませんが、坊ちゃんと一緒にされるのは許せませんね」
「僕よりも勘違いで襲われたリュシアさんの方が可哀想だよ」
レクスを守るってどういうことだろう。
勘違いして襲ってしまったサンゴさんにも早く誤解を解いて話を聞かないとだ
「バルド、サンゴさん降ろしてあげて」
「ヴァイス、降ろしなさい」
「なあんで私なのよぉ」
バルドに言われて渋々サンゴさんを降ろすヴァイスを待つ
臼と杵の材料を取りにきただけなのに、なんだか不穏な空気をより加速させてしまっている感が否めない
「ドンゴさん?まだなにか話していないことがありませんか?」
転生前は人の顔色ばかりを伺って生きてきたから、どうしても気になると話かけられずにはいられない
「坊ちゃんは良く人を見てんなあ、」
ドンゴはなんだか言いずらそうで、きっとサンゴさんがリュシアさんを襲ってしまわなければ穏便に事が運んだのかもしれない
「魔族がレクスを探してるって時点で薄々思ってはいたんだ。」
人って、嫌な予感ほど妙に当たる。
きっとドンゴさんも、そうであってほしくないと思いながら気づいていたんだ。
「レクスが青い土に関係してるって話だろ?」
「青い土をご存知なんですね」
「まあ、商人だからな。俺たちは」
「……どこまで青い土を知っているんですか?」
「詳しくは分からねえ。ただサンゴが手ぇ出しちまったからな。先にゲロっちまった方がいいと思ったんだ」
「他の国に、どれくらいそのことを知っている人が?」
「噂程度だから、ほとんど知らねえんじゃねえかな。俺たちはレクスの会話をたまたま聞いただけだ」
「レクス……」
バルドの顔が曇る。それはそうだ
俺よりも付き合いが長いし、勇者一行の件には直接関わっていなければと。
ただ、父さんに認めてもらいたかっただけだと
そう願って、レクスの情報を聞きにきたんだろう。
俺の材料集めが、むしろついでだったのかもしれないな
「……俺たちよりも」
「?」
「あっちの2人の方が詳しいんじゃねえか?」
ドンゴの視線の先には、
金色に輝く髪を靡かせながら先程抜いた剣を懐に収める俺の中では紛うことなき勇者様と
長い髪をかきあげながら、立っているだけで魅惑的な女性がいた
あぁ。言わんこっちゃない
だから嫌だったんだ
フラグっていうのは立つ前に折らないと、だいたいその通りになるんだって




