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町へ行く途中で見つけたものは・・・

カムイとシャルは二人で声のした岩のある方へ向かっていく。

カムイは前で、シャルはカムイの指示通り後ろに。危険はないだろうとは思ってるが少しだけ警戒もしてである。

二人が近づいていくと街道の辺りではカムイがかなり小さな声を聞く程度であったが、その声が段々と大きくなっていきシャルにもその声が聞こえるようになってくる。


クスン・・・・・スンッ・・・・・ヒック・・・・ウゥッ・・・


岩まで二メートルほどになるとはっきりとその声が聞こえてきて、声を殺しながら泣いているのがはっきりとわかる。

そのまま二人はゆっくりと声のする岩に近づき、ある程度来たところでカムイがシャルを振り返り囁くように指示を出す。


「シャルはそこ場所で待ってて、ボクが回り込んで声をかけてみるから。ちょっと周りを見張ってて。周りは平原だから何か来たらすぐにわかるだろうし、その場合はボクに聞こえる声で呼びかけてね」


カムイはそういってシャルがうなづいたのを見て、動き出す。

カムイは隠れている者に聞こえないように足音を殺しながら岩に近づいていく。

声の聞こえた岩のそばまで来ると、裏に回りこみ声の主を確認する。


そこにいたのは薄汚れた貫頭衣に身を包んだカムイより少し幼いくらいの子供であった。

両膝を抱え込むように座る、いわゆる体育座りと呼ばれる座り方をし、顔を伏せて泣いている状態であったため瞳の色などは見えないが、背中の半ばまでのグレーの長い髪に同じ色の犬のような耳がつき、お尻の上の辺りに開けられた穴からしっぽが生えている。

その子供の首には武骨な首輪が付けられ、体は食事をあまりとれていなかったためかやせ細っていて男女の区別はもう少し詳しく見ないとわからない。

そんな子供の姿を確認するとカムイは話しかけてみることにする。


「あの、こんにちは、でいいのかな?こんなところでどうしたの?」


すすり泣いていた子供はいきなりカムイに近くから声を掛けられ少し肩をビクッとさせた後、さらにうずくまり震え始める。


「ぃゃ、こないで、ぉねがいします・・・・もうぃたくしないで。」


カムイはこの反応に少しまずいと思い、子供からいったん離れシャルの元へ向かう。子供の方に気を向けながら・・・・。

シャルは少し険しい顔をして戻ってきたカムイに何事かと思い話しかける。


「カムイさん、どうしたんです?何かあったんですか?」


「・・・うん、シャル、聞きたいことがあるんだけどいい?」


「はい、何ですか?」


「シャル、この世界って奴隷がいるのかな?」


カムイはさっきの子供を見た時から予想していたことについてシャルに質問する。

その質問を聞いたシャルは少し驚き、答える。


「はい、一応いるのです。とはいってもわたしのいたスラッド魔王国ではいなかったですが、他の国ではいるようなのです。昔はあったそうですがスラッド魔王国の住人は奴隷に任せるよりも自分でやった方が早いとかうまくできると言う理由や奴隷を使うのは自分の力に自信がない表れだとかいう者たちが多かったせいで奴隷制度が衰退し、いつの間にか消滅していたそうなのです。まあ一応国にも奴隷制度について書かれたものが存在していたのでなんとなくわかるのです。それと奴隷は基本的に他人の所有物という認識はどの国も変わらないのです。」


まず奴隷とはシャルの言った通り他人の所有物とされた人の総称とされている。

この世界の奴隷は奴隷になった経緯で主に分けられている。

一つ、犯罪奴隷。これは重犯罪を犯した者がなるもので基本的に一生奴隷でいることが多い。例外として国に貢献すれば恩赦として解放されることもあるが、その貢献の度合いがとてつもなく高い為大抵のものが一生奴隷なままである。ちなみに大抵の犯罪奴隷が鉱山行きのため貢献できる場面もないともいえる。

一つ、借金奴隷。これは誰かに借金をしてその返済のために奴隷として使われる者で、一般的に借金を全額返済できれば解放される。それでも余程の才能があるか、寿命が長い種族でなければその人生が終わる前に返済しきることは難しいとされている。

一つ、一般奴隷。これは生まれつき奴隷である者や軽犯罪を犯した者がなるものである。これも借金奴隷とほぼ同じようなものであるが条件が主人自ら解放の意志を示すことの為、いい主人に出会わなければ一生奴隷のままである。そもそも生まれつき奴隷のものは元々奴隷としての教育しか受けていない為、突然解放されてもいずれ奴隷に戻ることも十分考えられるものである。

一つ、戦争奴隷。これは戦争に敗れた国から搾取されるものであり、分け方によって借金奴隷とも一般奴隷ともされる者である。解放条件なども同じなため特に説明はない。

一般的にこの四つが奴隷の分別であるが例外もあるとだけ言われている。

基本奴隷の分別があっても犯罪奴隷以外は特に変わらない扱いなのは気にしてはいけない。

例えば、主人の命令はどんなことでも聞かなければならないとか、平民よりも生活レベルが低いとかはどの奴隷も一緒なのである。

他の特徴として奴隷は奴隷紋もしくは隷属の魔道具が体のどこかにあり、魔道具の場合、一般人と奴隷の区別は比較的しやすいことや、これらを付けられている者は主人には絶対服従となる、主人の許可なしには外せない、などというものがある。ちなみに命令に従わかったり、無理やり外そうとした場合、精神・肉体共にものすごい苦痛を受けるとのことである。


「大まかに説明すると大体こんなところなんですが、どうしていきなりそんなことを聞くのですか?」


「いや、岩陰に隠れている子に声を掛けたら酷く怯えられてね。身なりとか言葉をとっても奴隷の可能性があったから一応シャルに確認しておきたかったんだ。この世界やシャルの奴隷の認識とかで対応が変わるかもしれなかったからね。ボクとしてはこのまま放っておけないと思うんだけどシャルはどうかな?ちなみに種族は獣人で耳や尻尾から判断して犬系、背はボク達より少し小さいくらいで、声と雰囲気から女の子だと思う。武骨な首輪がついていて、貫頭衣を着てたね。とても町の外に出るような恰好ではなかったかな?」


「それは、たぶん馬車か何かで他の街に移動中にそこから抜け出してきたという可能性が高いのです。その場合逃亡奴隷と呼ばれ主人や、仮の主人に重い罰が与えられるそうなのです。だからカムイさんが声をかけた時に怯えたんだと思うのです。その子についてはわたしも放ってはおけないですが。その子が逃亡奴隷となると問題がいくつもあるのです。」


「ふぅん。シャル、その問題について教えてくれる?」


カムイがシャルの言っている問題を聞いてまとめたものが以下のものである。

一つ目、奴隷ということはその主人がいるはずで、それが正式な主人か一時的な主人(奴隷商人など)が探してる場合、その奴隷を連れている自分たちにいろいろと面倒な疑いをかけられることになる。例えば逃亡の手助けをしたとかそういう疑いをかけられ町にいられなくなったり、最悪窃盗犯として指名手配されるらしい。

もし、奴隷の主人に何かがあって死んでいる場合は一つ目は大丈夫だが、そこに二つ目の問題点が上がる。

二つ目、奴隷は単独では町に入ることはできないためこのまま連れて行ってもカムイとシャルの一般人と主人なしの奴隷という扱いになり町に入ることはできないという事。なら主人としての登録をすればいいのだが、それは一部の者のみが使える魔術が必要となる為どちらにしろ町に入らなければならないのである。


「他にも細かい問題はあるですがこの二つの問題が解決できればそれ以外も何とかなると思うのです。」


「うん、さっきボクが言ったようにシャルなりに考えてから意見を言ってくれてるみたいだね。早速だったけど今後もそんな感じでいてくれるといいな。」


「は、はいです。頑張るのです。」


「さて、それは良いとしてあの子の件だね。正直なところどちらの問題も解決策だけはあるんだ。」


「え!?もう見つけてしまったのですか?さすがカムイさんなのです。」


「まあね、とはいっても大賢者さんの魔道具頼りだよ。一つ目はボク達の持っている指輪のレプリカがあるんだけどこれを使えば姿を偽れるし、髪の色や瞳の色を変えるだけでもボク達みたいに雰囲気が変わるからそれで何とかなると思う。二つ目はもう隷属の魔道具を外しちゃおう。」


「え?魔道具を外す・・・ですか?たしか隷属の魔道具って外すのって主人しかできないのではないです?・・・・・あっ、大賢者様の作った魔道具なら・・・。」


「正解、大賢者さんの魔道具に呪いを解除するものがあるんだけど、この呪いの一つに隷属の魔術の解除があるんだ。これを使うことであの子を奴隷解放できると思う。ただかなりの量の魔石を使うらしいから、そうそう使えないみたいだけどね。まあ今は『収納庫アイテムボックス』にかなりの数あるから使えるよ。人造魔石も使えるみたいだから拠点を確保した時に量産すればいつでも使えると思うよ。」


「それじゃあ、問題は解決なのです。細かい問題の方も奴隷であることが条件なのがほとんどだったのです。」


「でもボクが思いついた問題があるんだよ。あの子がボク達を信用してくれるかどうかなんだけど。まあそれも少し時間をもらえれば解決できないこともないんだけどね。シャルが許可をくれるなら問題はないかな?どう、町につく時間が少し遅くなるかもしれないけどそれでもいい?」


「大丈夫なのです。町なら村とかと違って閉門時間もそれなりに遅いはずですし、宿も特に選ばなければ問題ないはずなのです。その辺りの知識については少し勉強したので任せてほしいのです。」


「うん、わかった。じゃあちょっと時間をもらうね。・・・・・さて、じゃあ早速説得タイムと行きましょうかね?シャルは引き続いて周囲の警戒をお願いね。」


カムイはシャルの許可をもらうと子供の元へと戻っていった。

そこに戻ると、そこには未だにうずくまり震えている子供の姿がある。

どうやらシャルとカムイが話している間も怯え続けていたようだった。

そんな子供にカムイはなるべく落ち着いた声で話しかける。


「ねえ、君。ボクと少しお話をしないかな?大丈夫、ボクは君に何もしないから。奴隷商でもないし君が奴隷とかでも気にしないよ?だから、ダメかな?」


そのカムイの声音は優しく響き心に染みわたるようなそんな予感さえした。

そんな声が聞こえてきたのか子供の犬耳がピクリと動く。


「まあ、話を聞いてくれるだけでもいいから少しの間、聞いていてくれないかな?ボクが勝手に話しているからさ。気になることがあったら質問してくれてもいいよ?」


子供がカムイの声を聞いていることを確認するとカムイは子供の近くの岩に寄りかかりながら目をつむり語りだす。

カムイが過去に経験してきたことの一つを。

カムイは今まで鍛錬の折に様々な経験をしてきていた。それこそ同年代の子供には経験できないことばかりであったし、大人でさえそんな経験はないと言いそうなものさえもある。

それは奇しくも絵物語のようにも思われるが全てカムイが経験してきたことである。物語では語ることのできない本人の思っていたことまで語られる。

そんな話がカムイの口から朗々と語られるのだ。人の心に染みわたるような声音で。

次第に子供はカムイの話に引き込まれていく。周囲を警戒していたシャルも小さいながらもはっきりと語られるカムイの経験談に引き寄せられ、いつの間にか子供からは見えない位置ながらカムイの近くでその話にで聞き耳を立てていた。

カムイは語る。自分の経験したことの一つを。

泣いていた子供はそれを忘れ、カムイの話に聞き耳を立てる。

シャルも子供と同じように聞き耳を立てる。昨日から一緒にいる、そしてこれからも一緒にいるであろうカムイの経験談を。

カムイの語りは障害物のほとんどない平原の一部に響き渡る。

獣の出る危険なはずの平原に穏やかな時間が流れる。

その時間は一時間ほど経ってカムイが話し終わるまで続くのであった。


誤字脱字などありましたらご指摘お願いします。


10話部分:青銅貨・・・微妙に言いにくいので小銅貨に変更しました。


どうしよう、ここにカムイの過去という閑話を入れようか、それともそれは後回しにして続きを書いていこうか迷っています。

まあ続きを入れるとしても最終的には閑話を入れることになるんでしょうけどね。

タイミングの問題ですかね?


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