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虹の瞳のセルランティア~殺した者と殺された者の魂は過去に飛び、互いの体に入って悲劇の芽を摘む~  作者: 咲来青
第4章 理解者と協力者

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☀第18話 古代魔導装置

「ヴィソル様! その噂は本当に()()()が流した噂なのですか? わたくしを危機に陥れようとしている者が、実際にいるとお考えなのですか?」


 ティアは胸の前で両手を組み、真剣な顔でヴィソルに訊ねた。

 彼は小さくうなずいて、再びテーブルの上で両手を組み合わせる。


「噂を故意に流している者は確実にいます。何故なら、セルランティアは重い病になどかかってはいらっしゃらないからです。そのことは、あなたが一番よくご存知のはずですね?」


「え、ええ。もちろんですわ。カティが徹底して管理してくれていますから、病と言えるような病には、生まれてから一度もかかったことはございません」


〈えっ、一度も!?〉


 脳内にリオの声が響いた。よほど驚いたのか、声が裏返っている。

 そこまで驚くことだろうかと思いつつ、ティアはリオにうなずいて見せてから、ヴィソルに次の質問をした。


「ヴィソル様は、その者の正体をご存知でいらっしゃいますの?」


「いいえ。残念ながらそこまでは……。しかし、噂を薬師に吹き込んでいる者になら、私の従者が遭遇したことがあります。すぐに後を追ったようなのですが、逃げられてしまったとのことで……」


「まあ。……そうなのですか」


 何か手がかりでもあればと期待していたティアは、ため息をついてうつむいた。

 だが、思ったよりヴィソルは楽観しているようだ。明るい声でこう続けた。


「ご安心ください、セルランティア。従者のガレウスはその者の顔はしっかりと覚えているそうですので、次に街中で遭遇した時は必ずや確保してみせると豪語していましたよ。多少時間はかかるかもしれませんが、手がかりが全くないわけではないのですから。気落ちせず、できることから進めてまいりましょう」


「ヴィソル様……。ええ、そうですわね。希望が(つい)えたわけではないのですもの。悲観する必要はございませんわね」


「そのとおりです。ひとまず、噂を流した者のことは横に置いておきましょう」


 微笑み合う二人だったが、リオはとうとう我慢できなくなったらしい。ティアの頭の中で大声を上げた。


〈おいっ、ノンキに話してる暇あんのか!? あんたが知ってる王女さんの『秘密』と『魔導装置』とやらの正体を、さっさと話しやがれーーーッ!!〉


「きゃあっ!」


「い、いかがなさいました、セルランティア!?」


 リオの突然の大声に驚き、とっさに頭を抱えてしまったティアは、心配そうに椅子から立ち上がったヴィソルに慌てて笑ってみせた。


「問題ございませんわ。ほんの少しだけ頭痛がしただけです。それより、あの……先ほどおっしゃっていたわたくしの『秘密』とは、いったいどのようなことなのでしょう?」


 ティアに何事もなかったとわかり、ヴィソルはホッとした様子で座り直した。

 再び深刻な顔つきになると、地下道の〝王の秘密の部屋〟で見知ったことを静かに語り出す。


「先ほどもお話しましたが、私は幼き頃、エルイグニス陛下の嘆くお姿を盗み見てしまいました。その嘆きの中にあった『虹の瞳』と『虹色の髪』。あなたに直接お会いしたので、その二つはあなたの瞳と髪のことを差すのだと気づきはしましたが……。それがどうしてあのような嘆きに繋がるのか、あの頃の私には想像することすらできませんでした」


「……ええ。確かに、わたくしの瞳は『虹の瞳』と呼ばれております。ですが……『虹色の髪』とは何のことでしょう? わたくしの髪色は薄紅金ですわ。虹色などではございません」


「ええ、もちろん存じています。私もそれが引っかかり、様々な書物を調べてみてわかったことなのですが……。あなたの国では、薄紅金のことを『虹色』と呼んでいた時代があったのだそうです」


「えっ! そうなのですか?」


「はい、どうやらそのようです。かなり古い書物でしたが、そう記してある箇所がありました」


「まあ……そうでしたの。それは存じませんでしたわ」


 ではやはり、父が嘆いていた虹の瞳と虹色の髪は、自分のことを差しているのだ。ティアは暗い気持ちになった。

 自分の中にある色が、父を苦しめる原因になっているのかと思うとたまらなかった。


 ティアの顔色が悪くなったことに気づいてか、ヴィソルは立ち上がって彼女の傍まで移動した。そしてそっと手を取り、励ますようにギュッと握る。


〈ゲゲェッ!! こ、こいついきなり何しやがるッ!〉


「ヴィソル様……?」


 怒りに満ちたリオの声は当然聞こえていたが、ティアはヴィソルの行動の真意がわからず、戸惑っていた。

 彼はまっすぐティアを見つめ、熱のこもった声で語りかけた。


「セルランティア。あなたはもしや、その瞳と髪色のせいでエルイグニス陛下に疎まれている――もしくは避けられているのだと、誤解していらっしゃるのではありませんか?」


「え……? あ……はい。確かに、そのように思っていたこともございました」


 その頃の気持ちを思い出し、ティアは深くうつむいた。

 ヴィソルは握る手に力を込め、大きく首を横に振る。


「それは違います、セルランティア。陛下は――あなたのお父上は、あなたの瞳と髪を疎んでいるわけでも、そのせいで避けているわけでもないのです。ひとえにあなたが愛しいから……! 誰よりも大切だと思っていらっしゃるから、どうしても城に近づかせるわけにはいかなかったのです。城から離れた塔に住まわせるしか、あなたを守るすべがないとお考えになってのことだったのです!」


「わたくしを……守るため? それはいったい……」


「ウィンガント城の中にある銀脈の大回廊。あなたが私との婚姻式の日に何者かに刺されたという場所。あの地下には、鉄の心臓(フェルム・カロン)と呼ばれる古代魔導装置が隠されているのです。この装置のことはお父上しかご存知ありません。この装置を起動させることのできる唯一の鍵。それがあなたの虹の瞳と虹色の髪なのです!」


「えっ!?」

〈はあッ!?〉


 ティアとリオは同時に声を上げた。


 古代魔導装置〝鉄の心臓〟?

 この瞳と髪が、その起動装置である鍵?


 告げられた内容があまりにも壮大過ぎて、ティアもリオもすぐには把握できなかった。

 しかし、自分たちが巻き込まれた今のこの状況は、そのくらい大げさな何かが関わってでもいなければ、説明できない気もしていた。

いつもお読みいただきありがとうございます!

次回からはいよいよ第5章に突入します。


作者としては、読者の皆様がどんな場面を楽しんでくださっているのか、なかなかわからないため、「この話が良かった!」「ここは笑った」「泣いた」など、少しでも印象に残った場面がございましたら、感想やいいね等で教えていただけますと嬉しいです。


今後のお話作りの参考にさせていただきたいと思っています。ほんの一言でも大歓迎です。

よろしくお願いいたします!

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