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寝不足の集いって素敵やん

 「もう、なんだよ?」


 俺は眠い目を擦り渋々起きた。


 「あーやっと起きてくれた。あんただろ?元冒険者の新人ってのは?」


 目の下にくっきりとした隈をつくった痩せた男が俺に縋りつくようにしてそう言った。


 「そうだけど、あんた凄い隈だな?あんたも昼寝すれば?今日は絶好の昼寝日和だぞ?」


 俺はそう言ってもう一度寝ようとする。


 「ちょちょちょ、待ってくれよ」


 隈男が俺を激しく揺する。


 「もう!なんだよ!こっちは眠たいんだよ!」


 俺は半ギレになる。


 「頼むよ!助けてくれよ!このままじゃ殺されっちまうよ!」


 俺の剣幕などものともせずに言う隈男。

 

 「なんだよ、殺されちまうたぁ穏やかじゃないな」


 俺は眠い目を擦りながら隈男を見た。

 随分と怯えた様子だ。

 殺されるってのも大袈裟じゃあないのかも知れない。


 「頼む!お願いだ!助けてくれよ!」


 「わかったわかった。聞いてやるからとりあえず落ち着け」


 俺は身体を起こし地面に座った。


 「あ、ああ。頼むよ、本当に…」


 隈男も地面に座ると事情を話しだした。

 隈男、名前をクレム・ステッケンと言う。

 この男、ここラウフェンネッツ刑務所において三人の王、すなわちワッツファミリー、ブルータルハンマー、アーマーユニオンカルテル、そのどこにも属していないフリーの犯罪者なのだと言う。

 フリーの犯罪者ってなあ。

 それでもこの刑務所内で細々と金貸しをやり、三つのグループの顧客には上手い事便宜を図ったりして自分の立場を作って生きて来た。

 ところが今日になって顧客の多くが貸した金を返せないと言って来た。

 なんでも鉄板の賭けで大番狂わせが起きたのだとか。

 だが、今までもそうした事はないでもなかったのでステッケンは今まで通り、特別措置として一定期間の金利の停止を提案した。

 ところがワッツファミリーの組員とアーマーユニオンカルテルの組員がステッケンにおかしな提案をして来たのだ。

 いや、提案と言うよりも恫喝か。

 彼らは互いに、相手側の金利は停止するな、期限も厳守させろ、と恫喝してきたのだった。

 

 「…ちょっと前にランドリーの権利を巡って小競り合いがあったんだ。その時の連中が互いを陥れようと俺にプレッシャーをかけて来たんだ。どっちについても反対勢力に殺されちまう。あんたなら、あんたならなんとかできるはずだ!頼む!頼むよ!」


 ステッケンは地面に頭をこすりつけてそう言った。

 かなりの必死さが見える。


 「まあ頭を上げてくんな」


 俺はステッケンの肩をポンと叩く。


 「じゃ、やってくれるのか!」


 目を輝かせて俺を見るステッケン。

 

 「やるってったって、俺に何ができるんだ?具体的にどうして欲しいんだ?」


 「ああ、あんたはあのパワフルマンに認めら彼のトレーニングルームに入る事を許されたと聞いた。あの人に合わせて貰えないか?頼む!お願いだ!」


 ステッケンが祈るように言う。

 そんなに凄い人なのか、あの人は。

 確かにちょっと只者ではない感じはあったけども。

 

 「そのくらいならできると思うが」


 「頼む!頼む!」


 ステッケンの必死さに押された俺はパワフルマン専用のトレーニングルームに赴いた。

 出入口のトビラに立っているマッチョにパワフルマンに会いたい旨を伝える。

 

 「おおっ!よく来てくれた!嬉しいよ!」


 トビラの向こうに引っ込んだ門番のマッチョに代わって出迎えてくれたのはパワフルマンだった。


 「いやあ、昨日の今日で失礼します」


 「何を水臭い、私と君の仲ではないか」


 そう言って俺の肩をバシバシと叩くパワフルマン。

 陽のエネルギーが身体から溢れているようだ。

 

 「隣の方はご友人かね?」


 「実は込み入った事情がありまして」


 「では中でゆっくり聞こうか」


 パワフルマンは俺とステッケンを中に招き入れてくれる。

 

 「さあ、まずは座ってくれたまえ。何か飲むかね?」


 「いえ、結構です」


 イスに座りながら俺は答える。


 「ふむ、どうやら切迫した事態のようだね。どうしたのかな?」


 座りながら言うパワフルマン。

 確かにステッケンは切迫した事体ではあるが、半分は特別ドリンクを遠慮したいからなのだが。

 まあ、それはいい。


 「彼の口からご説明させて頂いても?」


 俺はステッケンをちらっと見てからパワフルマンに尋ねる。


 「ああ、勿論構わないさ」


 気持ち良く答えるパワフルマン。

 俺は礼を言ってからステッケンに促す。

 

 「失礼します、自分、ケチな金貸しでございます……」


 ステッケンは緊張した面持ちで事情を話しだす。


 「……という訳であなたの元に話を持って来たのです。パワフルマン!どうか、どうかお助け下さい!」


 「…なるほど。それはよろしくないな。私は秩序を重んじる、彼らはそれを乱そうとしている…」


 腕を組み顎の下を触って考え込むパワフルマン。


 「……ふむ、わかった。クルース君、ここはひとつ君にお願いしよう」


 太陽のようなスマイルで俺を見るパワフルマン。

 

 「はい?」


 唐突に話を振られ俺は素っ頓狂な返事しかできなかった。

 なんでそうなるの?


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