マッチョ達の宴って素敵やん
「おい、調子乗ってんじゃねーぞ」
毛深いマッチョは怖い顔をして俺に凄んだ。
周囲にいたマッチョ達はそそくさとその場を後にする。
別に気を使わなくてもいいのに、と思ったが立ち去ったマッチョ達は俺たちを囲むようにして遠巻きにこちらを見ていた。
なんだギャラリーか。
別にそんな面白い事にはならないと思うけどな。
「誰がじゃ?」
俺は短く聞く。
「そりゃお前に決まってるだろ」
「どうしてじゃ?」
俺は更に尋ねる。
「だからお前が…」
「なんでじゃ?」
俺は相手の言葉に被せて言ってやる。
「この野郎!なめてんのか!!」
毛深いマッチョがブチ切れる。
「やっと気づいたのかよ。早く気づけよ、疲れるっちゅーの」
「この野郎」
毛深いマッチョが歯ぎしりをしながら言い後ろの三人がその横に並ぶ。
なんだ?やる気か?
俺は胸近くで両手を構え、肩幅程度に足を開き戦闘態勢に入る。
「ここは神聖なトレーニングルームだ、ケンカなら他所でやりな」
みんなの目が入り口の方へ集中する。
「奴が来た」
「マッチョゴッドだ」
「ミスターマッチョが来た」
「キングマッチョだ」
「マッチョマッスルのご登場だぜ」
「ザ・マッチョとは奴の事だ」
場内のマッチョ共がざわつく中、男がひとり悠々とこちらにやって来た。
日焼けし黒光りする身体、まるでマンタのような広がり方をした逆三角形の上半身、それに比してギュッとしまったウエスト、ウエストよりも太い太股、筋肉が作り上げた究極の美がそこにはあった。
俺は思わずその神々しいまでのマッスルに見惚れてしまったが、すぐに我に返った。
通り名が多すぎるだろ!
「面白いボーイがいると聞いてやって来たのだが、君がそうか」
毛深いマッチョ達をまったく無視してそう俺に尋ねるマッチョゴッド。
「そうかと言われても、どう面白いのか聞いてみない事には返事が出来かねますけどもねえ」
俺は無視された毛深いマッチョ達を見ながらそう答えた。
毛深いマッチョ達がどうでるか?このミスターマッチョに突っかかっていくのか?
それともすごすごと引き下がるか?
「お、おい、いくらあんたがマッチョ・ザ・マッスルと呼ばれた男でも、こんな扱いを受けちゃ黙っていられないぜ」
おーっと、突っかかっていったーー!
やるやんけ、毛マッチョ。
「何か言ったかね?」
両手を高々と上げ手首を内側に捻り巨大な上腕と分厚い胸を見せつけながら問うキングマッチョ。
だから通り名が多い!
「うっ、だから…」
「何か言ったかね?」
今度はやや膝を曲げた状態で上半身を横に向け両手を腰のあたりで組み言うマッチョマッスル。
胸の分厚さが強調され圧倒される。
まるで周囲に熱気を放っているかのようだ。
こりゃあ、ある意味で気みたいなもんだな。
「わかったよ、ここはあんたに預けるよ」
「そう、それが懸命だ」
頭の後ろで手を組みながらバキバキに割れた腹筋と丸太のような太股を見せつけるザ・マッチョ。
毛マッチョ達はすごすごと退散して行くのだった。
「君がクルース君か、会いたかったよ」
ごっつい手で握手を求めるマッチョ・ザ・マッスル。
「光栄ですよ、えーと?」
「私はドリアン・コールマン。皆は私をパワフルマンと呼ぶよ」
握手を返した俺の手をガチっと握って言うパワフルマン。
なんか急にコミカルな通り名になったけど、本人がそれを一番気にいっているのならそう呼ぶのが礼儀というものだろう。
「それじゃあパワフルマン、よろしく」
「こちらこそよろしく、リトルヒーローマン」
おかしな通り名で俺を呼ぶパワフルマン。
自分がおかしな通り名で呼ばれているからって俺までそこに引き込むのはやめて欲しい。
「まあ、とにかく、ここではなんだ。私専用のトレーニングルームがあるからそこで話をしようではないか。ついて来たまえ」
「おおー!あの新人!マッチョソルジャーから直々のご招待を受けたぞ!」
「伝説のトレーニングルームに正体とは羨ましすぎる!」
「プロフェッサーマッスルの部屋と言えば全マッチョ垂涎の場所!」
「マッチョマスターにあそこまで言われるとは!」
「マッスルマウンテンの部屋!一度は覗いてみたい!」
マッチョ達のざわめきが聞えてくる。
どうやらこのお方のトレーニングルームは彼らのあこがれのようだ。
だったら代わってもらいたい。
俺としてはこんな妙な人について行きたくない。
それに、通り名が多すぎるだろって!
もう何がなんだかわからないんですけど?




