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マッチョ歓迎会って素敵やん

 トレーニングをするマッチョたちを見て気後れする俺。

 しかも、ただのマッチョじゃない、どいつもこいつもヤバそうな雰囲気を漂わせた奴らばかりだ。

 

 「おいおい、カワイイ子猫ちゃんが入りこんじまったみたいだぞ?」

 「迷子になったんじゃないか?」

 「ママを探してるんならここにはいねーぜ?」

 「ミルク坊やはお家に帰りな」

 「ぎゃはははははは!!ちげーねー!!」

 「おいおい、びびってションベンもらしてるんじゃないか?」


 男達が口々に言い笑う。

 うわっ、前世で見た映画の一シーンみたい!

 ビリヤードやってる奴と乱闘になりそうだな。

 こういう目に遭うと自分が日本人だって事を再確認しちまう。

 なんでかと言うと、おっかねえってよりも芝居がかったバタ臭いセリフにおかしみを感じてしまうからだ。


 「ちょいーっす」


 俺は軽く手を上げてトレーニング機器の間を歩く。

 さすがに前世のジムみたいな機器はないものの、ダンベル、バーベル系は充実しており、右を向いても左を向いても筋肉に磨きをかけるマッチョ達が視界に入った。

 まさにここはマッチョパラダイス。

 問題はどのマッチョもイカツイ系だという事だ。

 空いてるトレーニング機器を探して歩き回るがなかなか見つからない。

 やっと見つけて近付くとすぐに別のマッチョがやって来て使用してしまう。

 そんな事が五回続きさすがに鈍い俺でも新人苛めだと気づいた。

 俺って人の悪意に鈍いとこがあるんだよな。

 前世でも後になって誰かから、さっき○○がやったあれは悪意のある故意だよと聞かされて初めて気づくなんて事が割とあった。

 そんな事から人の悪意に関してはアンテナ張ってるつもりなんだけど、根っこで人ってそんなに悪くないと思ってるんだろうな。

 こんな自分も気に入っちゃってる所があるから質が悪いんだけども。

  

 「くっくっくっく」

 「ひっひっひっひ」


 周りのマッチョ達から含み笑いが聞えてくる。

 トレーニングできない俺を見て笑ってるんだろう。

 ここですごすご帰っちまったらそう言う評判がたって今以上に舐められる事になっちまう。

 そんな事になれば、ここでの生活が更にうっとおしい事になる。

 うち、負けへん!!

 心の中で自分を鼓舞した俺は空きスペースを探す。

 

 「あったあった」


 空きスペースを見つけた俺はそこでまずラジオ体操の動きをして身体をほぐす。


 「くっくっく。あいつ諦めやがった」

 「なさけねえ奴だ」

 「隅っこで踊ってるのがお似合いだぜ」

 

 嘲笑が聞えてくるが気にしない。

 ラジオ体操をバカにするなかれ!

 一説によると約三分の運動で、全身の筋肉の約三百カ所と骨の約二百カ所を動かす事ができるのだと言う。

 あれはかなり理にかなった全身運動なのだ!

 しっかりと動きを意識して行うと身体がポカポカとしてくるのを実感できる。

 エンジンが回って来た。

 

 「うし」


 ラジオ体操を終えた俺はキーケちゃんに教わった修行法を始める。

 

 「なんだあいつ?」

 「老人かよ!」


 周囲のマッチョ達が俺の修行法を見て笑う。

 知らない人が見たらそんな感想を抱くのも仕方がない。

 俺がやってる修行法ってのはとにかくゆっくりした動作で型を行うというものだ。

 よく太極拳の練習でおこなわれているあれをイメージすればわかりやすい。

 ただ、俺の場合はキーケちゃんから教わった武術の型なのだが。

 前世でもゆっくりと動く練習法は太極拳だけではなかった。

 拳法によっては太極拳の動きでもまだ早いという所もあるくらいだ。

 ゆっくりと動く練習には意味があるのだ。

 キーケちゃんが言っていたのは早い動きの練習ばかりしていると身体が楽をしてしまうという事だった。

 つまり早い動きでは鍛えきれない所を遅い動きで鍛えろというのだ。

 更にキーケちゃんが言うのは武術にとってはこの遅い動きで鍛える個所こそが大事なのだと言う。

 特に、キーケちゃんやサーヴィングのおとっつぁんが戦いで良く用いる属性を乗せない魔力、すなわち気の使用にはゆっくりとした動きのトレーニングが欠かせないのだとも言っていた。

 それは俺の戦闘スタイルでもあるので、この練習は俺にとっても欠かせない大切な練習なのだ。

 そしてなによりこの練習は身体に効くのだ。

 かなりの汗をかき、足元に汗だまりができる。


 「おい、あれ見ろよ」

 「スゲー汗だ」

 「実はきついんじゃねーのか?」

 「あれがか?そんな事はないだろ」

 「いや、見てみろ。あの体勢を維持すんのはキツイだろ」

 「そういや、野郎は元冒険者だって話だ」

 「戦うための実践的なトレーニングってわけか」

 「ちょっと、俺もやってみるか」


 マッチョ達がざわつきだし、ひとりふたりと近づいて来て真似をし始めた。

 

 「うお!これ、難しいぞ!」

 「いやいや、無理じゃね?」

 「おーー!結構キツイじゃねーか」

 

 集まったマッチョ達がバランスを崩してはケラケラ笑い出した。

 

 「ようようよう!兄ちゃん!これ、なんかやり方とかあんのかよ?なあ?」


 人懐こい笑みを浮かべマッチョが声をかけてくる。


 「ああ。俺は武術の型をやってるけど、そうじゃなくても幾つかの事に気を付けて動けば効き目はアップするよ」


 「おお!何に気をつければいいんだよ?」


 「まず、一定のスピードで動く事。後は関節を伸ばしきらない事、呼吸を停めない事を意識すると効くよ」


 俺はマッチョに教えてやる。


 「おお~!こりゃいいや!」

 「お前!反動つけてやってんだろ!」

 「やってねーよ!」

 「バッカ!それじゃあ効き目ねーって」

 「息止めんなってよ!」

 「まだ早えだろ」

 「んな事ねーって!」


 マッチョ達がキャッキャッと楽しそうに騒ぎ出す。

 なんか怖そうな人達だと思ったけど、こうやって見るとかわいいなおい。


 「おいテメー。新入りがデカイ顔してんじゃねーぞ。あん?」


 毛深いマッチョが後ろに三人の仲間を従えてやって来て俺に凄んだ。

 後ろにいる三人の仲間は指をポキポキ鳴らして威嚇している。

 あらら、どこにいってもこんなのいるんだよなあ。

 まいったねどうも。


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