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物騒な見世物って素敵やん

 「ちょっと待って下さい親分さん!わたくし目は頭脳労働担当でして、肉体労働担当ではありませんので、親分さんを楽しませるような技術は持ち合わせおりませんです」


 「大丈夫大丈夫!なんにしたって楽しい事になるに決まってるんだからなっ!さあ!さあ!出て来い出て来い!」


 必死に言うマードックに歓喜に打ち震えた様子で答えるロッタ。

 重い音を立ててスライドした壁の向こうから何か大きな物体がこちらに向かってくるのが見える。

 

 「おいおいおいおいおい!冗談じゃねーぞ!!おい!!」


 マードックが叫ぶ。

 向こうからやって来たのは毛深い身体に狂暴な顔、身の丈三メートルはあろうかと言う鬼のような魔物だった。


 「オーガ?とは違いそうだけど、ありゃ、なんだ?」


 「お前、それでも元冒険者かよっ!ありゃ、ホブゴブリンじゃねーーか!ゴブリンの上位個体だよ!」


 「へえ~?あれがホブゴブリンか~。初めて見たよ」


 獣のような唸り声を上げこちらを睨みつけるホブゴブリンを見て俺は言う。


 「君は元冒険者だそうだねえ。だとすると武器くらいなくっちゃ駄目だよなあ」


 高みからロッタが言う。


 「そうそう!その通りでございますよ!!さすがボス!冴えてらっしゃる!早く、武器をお願いします!!」


 マードックが懇願するように叫んだ。


 「よしよし、わかったわかった」


 ロッタが嬉しそうに言い手を叩くと、ホブゴブリンの出て来た場所から男二人がドデカイ斧を抱えてやって来て、地面に置くと素早く走り去って行った。

 

 「グルオオオオ!」


 ホブゴブリンはデカイ斧を見つけるとガシッと鷲掴みにし、嬉しそうに吠えた。


 「そっちじゃなぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」


 マードックが叫ぶ。


 「あーーはっはっはっはっはっは!!ええ?相手に武器をやれって事じゃなかったのかい?うわ~、間違っちゃった~アッハッハッハッハ」


 ロッタがケタケタと楽しそうに笑う。


 「クルース!頼むクルース!マジで悪かったから!儲けの半分をやるから!だから頼む!助けてくれクルース!」


 ガタガタ震えて言うマードック。


 「この期に及んで半分たぁ度胸があるんだかセコイんだか。まあ、やるだけやってみるから、端っこで見てな」


 「おう!頑張れ!」


 言うが早いか凄い勢いで走り去るマードック。

 それだけ足が早ければ俺が居なくても逃げきれんじゃね?

 

 「さてと、どうしたもんかね」


 俺はホブゴブリンを睨む。


 「ゴラァッァァッァアァガッガッ!!」


 ホブゴブリンは興奮した様子で吠えると斧を大きく振りかぶり俺に向かって来た。

 さすがに迫力あるな。

 俺は足に力を込めダッシュで飛び込みホブゴブリンの腹に頭突きをお見舞いする。

 いわゆるフライングヘッドバッドだ。

 さっきの空中殺法スタイルが尾を引いていたか咄嗟に出た技だった。


 「ガァァァァァァ」


 ホブゴブリンは身体をくの字にして吠える。

 俺はジャンプをし下がった奴の頭に両ひざを叩きつける。

 フライングニードロップだ。


 「ゴガッ!」


 ホブゴブリンは吠えると頭を勢いよく振り上げた。


 「ぬおっ!」


 吹っ飛ばされる俺。


 「おおおおおおおお!!」


 周囲を震わすような声を上げたホブゴブリンは吹っ飛ばされた俺に向かって斧を投げた。

 グルングルンと回転しながら俺に迫る巨大斧。


 「あらよっと!」


 一瞬ゲイルを発動しブレーキをかけた俺は向かって来た斧を蹴り飛ばす。

 

 「うおっ!」


斧は弾かれロッタが見ている席の近くにぶっ刺さる。

 ロッタは焦り声を上げた。

 地面に着地した俺はチラリとロッタを見る。

 お前んとこに飛ばそうと思えば出来たんだぞ。

 それをやらなかったって事を覚えとけよ。

 俺はそういう意味を込めてロッタを見る。


 「うわぁぁぁ!!クルース!クルース!」


 マードックの叫び声。

 ジリジリとマードックに迫るホブゴブリン。

 俺はゲイルダッシュでホブゴブリンの背後に近付き奴の膝裏に蹴りをぶち込む。


 「ガッ!」


 崩れ落ちるホブゴブリン。

 いわゆる膝カックンである。

 

 「おらっ!!!遊びは終わりだぞ!!」


 俺は叫びながら怒気を乗せた気をホブゴブリンに向けて放った。


 「ゲヒイィィィ!!」


 泣き声のような叫びを上げたホブゴブリンは、出て来た場所へと犬のような四足で走り去って行った。


 「ひっっひっひぃ~~、な、な、な、なんだよ今の~~」


 腰を抜かしたのか地面にへたり込んだマードックが情けない声を出す。


 「ああ、ちょいと怒ってやったんだよ」


 「なんかわかんねーけど、ホブゴブリンよりおっかなかったぞ。みろ、腰が抜けちまった」


 「悪かった悪かった」


 俺は謝りながらマードックが起きるのに手を貸した。

 

 「ボス!これで如何でしょうか!」


 気を取り直したマードックは大きな声を出してロッタを見た。

 

 「あのホブゴブリンが尻尾を巻いて逃げるか。面白い奴だな。わかった、ここで俺様はお前を認めた。楽しかったぞ」


 ロッタはそう言うと奥へ下がって見えなくなった。

 どうやら物騒な見世物は終ったらしいな。


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