ホッと一息??って素敵やん
浮かれまくりのドギューズメンバーとは別に一般学生関係者向けに解放されたリーズナブルホテルに向かう事になった我々。
「ここですね」
ホテルコロシアムテルと書かれた建物の前でクランケルが言う。
建物は大きく立派、外観は白くキレイでなかなかどうしていいホテルじゃないのよ。
「なんだよ、十分じゃないのよ」
「だよね~、これより立派なホテルなんて逆に肩がこっちゃうでしょ」
俺の言葉にコラスが言う。ホント、そうだよな。
「ふたり共、庶民的ですねえ~。とても貴族とは思えないですよ」
「つーかフーカさんはいつまでこっちに居るのよ?」
「文化祭終了までですね。試作品のテストもありますから」
そっか、フーカさんは警備班の生徒達にボンパドゥ特製アーマーを貸し出してたっけな。
「それにあなた達と一緒にいれば新たな道具のテストもできそうですしね」
フーカさんはニヤリと笑ってポツリと言った。
新たな道具って、あんたどれだけ秘密道具持ち歩いとるんよ?
俺たちはホテルのロビーに居た実行委員の生徒の指示でルームキーを貰うと、それぞれの部屋へ向かった。
部屋に入った俺は荷物を置くととりあえずシャワーを浴びる。
さっぱりした後、俺は部屋に備え付けられた冷蔵魔道具の中を漁りヤグー茶ソーダーを取り飲む。
実行委員の説明ではホテル内では飲食も無料との事だった。
さすがお互いザ・セブンに数えられる名門校、まったく太っ腹なこった。
夕刻のパーティーまではまだ時間がある。
こういう時に独り歩きするとまたトラブルに巻き込まれたりするんだよな。
今日は時間まで部屋でゆっくりしとこう。
俺はそう考えてベッドに横になりボーっとする。
『コンコンコン』
部屋のトビラをノックする音。
「はいはーい」
俺は返事をしてトビラを開ける
「ご機嫌如何かしら?」
そう言いながらズカズカと部屋に入って来たのはなんとジェニファー・スプレーンだった。
「ちょっ、なんすかなんすか!勝手に入って来ないで下さいよ」
相手の勢いに押されてつい敬語混じりになってしまう。
「しけた部屋ねえ~」
スプレーンはそう言いながら勝手にカウンターバーを漁りカクテルを造り出した。
「ちょっちょっちょ!勝手に何してんのよ!」
「どうせ学園持ちでしょ?細かい事、言わないの」
カクテルグラスを持ちどっかりとソファーに座るスプレーン。なんと図々しい奴だ。
俺は少しイラっとする。
「何?あなたお酒じゃないの?それじゃあイライラする訳だ。私が何か作ってあげましょうか?滅多にないわよ私の作ったカクテル飲める事なんて」
スプレーンはグラスをサイドテーブルに置きカウンターバーへ向かおうとする。
「いいからいいから!つーか、何しに来たんだって!」
俺はなんとかスプレーンにツッコむ。
「あら、ご挨拶ね。こんな美女に部屋を尋ねられてその態度?あなた、ちょっとおかしいんじゃないの?」
「ぐうっ、くつろいでるトコいきなり乱入して来た奴になんでそこまで言われなきゃなんねーんだよ!用がないなら帰ってくれよ、マジで」
俺は泣きそうになりながら言い返した。マジで勘弁してくれよ、もう。
「まあまあ、そんなに興奮しないで、ね?自分の部屋なんだしくつろいだらどう?」
「言われなくてもそうするよ」
クソっ、終始向こうのペースじゃねーか。これ、格闘だったらボッコボコにされてる所だよ。クランケルが見たらスプレーンにその呼吸を教えてくれと詰め寄る所だ。
「そんなにつんけんしないの。あなたにとっても悪い話しじゃないんだから」
スプレーンの雰囲気が変わる。
ん?なんだ?悪い話しじゃないだと?何かの交渉に来たのか?
「また悪巧みか?だったらよそに行ってやってくれよ。ザクフォードのところとかマルギシャスのところとかさ」
「それよ、それそれ。あなた、ザクフォードと一緒にマルギシャスの屋敷に行ったでしょ?私の所ならもっと良い条件を出せるわよ?あなたの商会、ジャーグル王国に進出する気はない?うちなら強力に後押しできるわよ?」
スプレーンが怪しい笑みを浮かべる。
「ふ~ん、あんたんとこって具体的にどこなのよ?覇連研?ハンドラー?チョーズン派?ジャーグル王国?あんたっていったいどこに所属してるの?」
俺の問にスプレーンは妖艶な笑みを浮かべ舌なめずりして見せた。
この野郎、舐めきってやがんな。
「そのどれでもあるし、そのどれでもない。それが私」
「なんだそりゃ?神様にでもなったつもりか?それともただ単に節操のない日和見主義者か?」
「どうとって貰っても良いけどね。とにかく覚えておいてもらいたいのは、私はそうした団体の力を好きに使う事ができるという事」
スプレーンはどこか勝ち誇ったような表情で言う。
自分は色々な団体の美味しい所だけを食べられる賢い人間だと、そう、その表情が語っていた。
まったく、勘違いも甚だしいね。
こいつのやってる事はイソップ童話のコウモリと同じだ。
最終的にはどの団体からも信用されなくなり居場所をなくす事になるのだ。
だが、そんな事を言ったってこいつは自分は上手くやれると信じきっているから聞く耳持たないだろう。
そんな奴に事実を納得して貰うなんて無駄な労力は使いたくないし、そんな義理も無い。
だから、そこは放置しとく。
「さすがですね、知らなかったです、素敵ですね、センスいいですね、そうなんですね」
「なにそれ?もしかしてバカにしてる?」
「とんでもない」
俺はそう答えながらベッドサイドに置いたヤグー茶ソーダーを飲み干す。
「それじゃあ、なんなの?」
「ごめんなさいね、もう行かないといけないんで。今日はどうもありがとうございました。では、失礼します」
俺はそう言って部屋を出る。
貴重品は身に着けてるし、部屋に置いてあるのは着替えの入ったカバンだけだ。
パーティーまでは時間があるけどスプレーンを置いて、もうこのまま出かけちまおう。
「ちょっと待ってよ!それはないんじゃない?もっと真面目に考えてよ」
廊下に出た俺の腕をつかんでそうまくしたてるスプレーン。
「ちょっと、やめて下さいよ。自分、出かけますんで、またの機会にお願いします」
俺はスプレーンの腕を振り払って歩き出す。
「ちょっと話くらい聞いてよね!このままさよならはないんじゃないの?」
スプレーンが殊更に大きな声で言う。
「やだ、あの子、年上の人泣かせてるみたい」
「知ってる、あれってジゴロって言うのよ」
「つばめってやつ?」
「ひもじゃないの?」
廊下にいた生徒達がこっちを見てひそひそ話をしている。
つーか、この騒ぎで部屋から出て来た生徒もいるみたいだ。
スプレーンの野郎、わざわざこうなるように仕向けたな。
「ちっ、とりあえず来い」
「あら、やっとその気になってくれた?」
俺に腕を引っ張られたスプレーンはまんざらでもない顔をしてそう言った。
廊下にいる生徒達の視線が痛い。
畜生!すっかりヤツのペースじゃねーか。
スプレーンの腕を引っ張りながら俺は顔をしかめるのだった。




