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特殊な倒し方って素敵やん

 「砕けろ!」


 俺はゲイルダッシュでファブニルの懐に飛び込み手に持ったヤツの背骨で思いっきり腹をぶっ叩く。


 『ガッギィィィィイィィィィィイ』


 凄まじい音が周囲に響き渡る。


 「チッ!傷すらつかねーとは!」


 ファブニルはゆっくりと俺を見て口を開く。

 

 『ゴワァァァァァァ』


 ファブニルの口から氷の塊がモリモリ出てきて俺に向かって飛んで来る。

 放たれた氷塊は凄まじい勢いだがどういう訳かファブニルの動きが鈍いので躱すのは容易かった。


 『ゴス!ゴズ!ゴス!』


 ファブニルの腹から鈍い音が聞える。

 もしかしてキーケちゃんが中で暴れてんのか?

 その瞬間、俺の脳裏にある事が浮かぶ。

 それは前世で好きだった巨匠の長期連載漫画だった。

 その漫画は人の機微や人生訓について実に面白く、時に厳しく描いており俺も大きな影響を受けたものだった。そして漫画の登場人物に博学多才な隠居老人がいた。その老人が作中で話していたのが啐啄(そったく)同機(どうき)という言葉だった。ひなが卵から孵化する様子をあらわした禅の言葉である。

 ひなが卵から孵化する際に内側から殻をつつく。

 外側からは親鳥が殻をつつく。

 このタイミングがぴったり合う事でひなは殻を破れるという話だ。

 これは、相手が学ぼうとするそのタイミングで最適な援助や指導を与える事の重要性を説いているのだが、今、それが頭に浮かんだのは教育ではなくキーケちゃんの脱出サポートについてでだ。

 キーケちゃんが中から与えるダメージに上手くタイミングを合わせて外からもダメージを与える。

 そうする事で硬い殻も砕く事ができる。

 俺はファブニルの動きに注意しながらタイミングを計る。


 『ゴス』

 

 音がしたタイミングで俺はゲイルダッシュし、やつの懐に一撃を加える。


 『ゴスガァァァンゴスゴス』


 俺はやつの攻撃を避けタイミングを見定めこのタイミング合わせ攻撃を繰り返す。

 クソッ!全然だめだ!へこみひとつついてない!

 俺のパワーが足りないのか。

 俺の心がへこみそうになっていたその時、ファブニルが口から吹いた氷塊を避けるタイミングが遅れちまった。


 「こなくそっ!!」


 俺は目前に迫った氷塊を手に持ったファブニルの背骨で打った。


 『ギャン!』


 鋭い音がして氷塊が跳ね返りファブニルの手に当たる。


 『ボガッ!!』


 短い爆発音のような音をたてやつの手が砕ける。


 「なにっ??」


 俺は驚いて思わず声を上げてしまう。

 腕が弱点なのか!!

 俺は鉄鋼弾をやつの残った方の腕に向かって連射する。

 ファブニルが腕を軽く振ると鉄鋼弾は消滅する。

 なんでだ?どういう事だ?

 俺の攻撃は通らない?

 てことは。

 ファブニルが再び口を開け氷塊を放つ。


 「どうだっ!」


 俺は狙いをつけてテニスのボレーの要領で氷塊をヤツに向かって打ち返す。


 『ボグ!』


 鈍い音がしてやつの胸元に大きなへこみができる。

 

 「そう言う事かよ!」


 なるほどな。弱点の無い奴なんているわけないんだよ。

 こいつの弱点、それはやつ自身が発した魔法だったんだ。

そいつを反射してぶち当てることでダメージが通る。ったく、前世でロープレやってねーとすぐにこんな発想浮かばねーっての。

俺はファブニルにゆっくり近づく。


「来いよ」


俺は煽る。

やつに感情みたいなもんがあるのかわからないが、近づかれるのは嫌なようで即座に口を開く。

氷塊が飛んで来る。

俺は打ち返す。


『ゴスゴスボゴッゴス』


やつの腹から響く音に重なって反射した氷塊がぶち当たる。


 「おらおら!もっと来い!バッチ来い!」


 『キョイィィィィンキョイィィィィン』


 ファブニルは泣き声なのか警報なのか区別のつかない音を発しシッポを立てた。


 「お?何する気だ?」


 シッポで横払い攻撃か?そんなもんゲイルで避けるだけだぜ。

 俺は足を肩幅に広げ膝と股関節を軽く曲げ、どんな攻撃にもすぐに反応できる態勢をとる。

 

 『カッ!』


 シッポが全体的に光り無数の氷塊が発生する。


 「マジかよ」


 その無数の氷塊は尻尾のひと振りで一斉に飛んできた。


 「クソが!やったろうじゃねーか!」


 俺は気合を入れて飛んで来る無数の氷塊を打ち返す。


 「おらおら!こんなもんかよ!もっと来いや!」


 アドレナリンが出てテンションが高まる。

 俺の打ち返した氷塊はやつの身体のあちこちにぶち当たる。


 『ブィィィィイィィィィィイィン、ブィィィィィィィイィィィィイィィィィィン』


 ファブニルの動きが止まり奴の身体から妙な音が響く。


 『ボンッ!』


 何かが弾けるような音がしてやつの腹がパッカリと開く。


 「よし!良くやった!」


 ザクフォードを抱えてやつの腹から飛び出して来たキーケちゃんが叫ぶ。

 

 『ブイィィン……』


ファブニルは膝をつき天を仰ぎ動きを停めた。

どうやら決着はついたようだな。

マルギシャスの野郎、この貸しはきっちり利子をつけて返して貰うからな。


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