魔の森のガーディアンって素敵やん
いつになく警戒モードのキーケちゃん。
俺も言われたように警戒度を上げる。
いつも以上にゆっくりと魔力を体内に取り入れ練り上げる。
そして練り上げた魔力を尾骨に降ろし丹田、みぞおち、胸の中央、喉、眉間、頭頂部へとゆっくり遠し、逆の手順で尾骨まで降ろす。
「ぐうっ、何と言う魔力だ。こちらまで痺れそうだ」
ザクフォードはそう言うとスーツの襟もとに手をやった。
するとシャカシャカと音をたてスーツが変形をし、ザクフォードの身体を鎧のように包み込んだ。
「おおー、かっこいいじゃないのー」
「頼むぞ、ホントに」
褒めたのになぜか呆れられた。
キーケちゃんは軽く首を左右に振り、その場で二度三度と跳ねると自然体で歩き始めた。
俺もキーケちゃんに並んで歩く。
むう、進むにつれ前方から禍々しい気配を感じ俺は心の中で唸る。
ちょっと半端な気配じゃねーぞ?
近付くにつれ増すプレッシャーは、まるで初めてキーケちゃんやサーヴィングのおとっつぁんに出会った時みたいだ。
すぐそばにキーケちゃんがいるからいいけど、そうじゃなければ引き返している所だよ。
君子危うきに近寄らずってなホントだよ。
さすがのザクフォードも口数が減る。
まるで空気がねっとりと身体にまとわりつくようだ。
しばらく進むと木々の切れ目に出くわす。
どうやらここが森の出口のようだ。
「むうっ」
キーケちゃんが唸り声を上げる。
森の出口にどっかりと座っていたのは全身をメタリックな板に覆われた龍であった。
「あ、あれはまさか、伝説のファヴニル」
ザクフォードがかすれた声を出す。
「なにそれ?」
俺は小声で尋ねる。
「人工的に作られた龍よ。失われた技術と聞いておったが、シエンの奴がおらんでよかったな。おったら真っ先に食ってかかったろう」
キーケちゃんはそう答えてニィっと笑う。
「人工龍か。注意点は?」
「体内に神々の財宝を守っているためその身体は神の剣も通さぬ堅牢さであると言う話だが、如何せんすべては伝説だからな。なんとも言えんよ」
ザクフォードが答える。
「初っ端から全力でいくぞ。いいか?」
キーケちゃんが言い俺とザクフォードは頷く。
「では、参る!」
キーケちゃんはそう言って大砲の弾のように飛ぶ。
俺もゲイルダッシュでファブニルに近付き光魔法のフォーカスソードで切りつける。
『ビン』
「うっそ!」
ファブニルに当たったフォーカスソードがくぐもった音をたてて消滅した。
「光魔法は通じぬようだな」
「土魔法もだぞ」
キーケちゃんに次いでザクフォードが叫ぶ。
『ドゴン!ドゴン!』
キーケちゃんのパンチがファブニルにヒットするたびに大砲のような音がする。
ザクフォードは肩に乗った砲台から炎の球を発射している。
ファブニルはさほど効いているようなそぶりは見せず、尻尾を振り噛みつきを繰り出す。
「うぬおうっ!!」
ザクフォードが尻尾を避けて転がる。
キーケちゃんは噛みつきに来た頭に向かって強烈な蹴りを放つ。
『ガッキィィィン』
もの凄い音はしているがファブニルの外観や動きに変化は見られない。
光魔法も土魔法も効果なし、物理と火は効果薄い。
「ならば!」
俺は水魔法で氷の槍を奴に放つ。
「うおっ!!」
俺の放った氷の槍は音もなく反射され俺の方に向かってきた。俺は驚いて転がり避ける。
「気を付けよ!風も反射するぞ!」
「了解!」
キーケちゃんが叫ぶ。
風魔法はすでに試みたか。
しかし、嘘だろ?光と土は無効化、水と風は反射、物理と火は耐性持ちってもうほとんどボスキャラじゃねーか!そんな奴初めてだぜ。
地道に物理と火で削るしかないのか?
ザクフォードも放っている火球は周囲に飛び散り危ない事この上ない。
「トモ!延焼を防げ!」
キーケちゃんが叫ぶ。
やっぱり飛び散った火球が木に燃え移ったか。
ザクフォードは攻撃と回避に必死で見えてないようだ。
俺は燃え移った火に水の塊をぶつける。
消火の際の得意技、自家製インパルス消火システムだ。
水魔法で作った水の塊を風魔法の圧縮空気の勢いを利用して火元に激しくぶつける。
高圧空気によって発射された霧状の水の塊は燃焼物にぶつかり気化熱により熱を奪い燃焼サイクルを停止し消火する。
こいつの利点は少量の水で効率よく消化できる事だ。
つまり魔力消費量が少ないのだ。
しっかしザクフォードの野郎、派手にやりやがって。
ほっといたら森林火災になっちまうぞ!
まあ、マルギシャスの森だから丸焼けになっても構わないけど、森には森の生態系もあるだろうからな。
森の生物に罪はない。
「チェェェェェイ!!」
気合一閃、キーケちゃんの蹴りがファブニルの背中についているプレートを破壊し弾き飛ばした。
「やった!!」
ザクフォードが喜びの声を上げる。
「キョウィィィィィィィィィ!!!」
ファブニルが甲高い不快音を出しザクフォードが顔をしかめて耳を塞ぐ。ファブニルはザクフォードにのしかかる。
「危ない!」
キーケちゃんがザクフォードとファブニルの間に割って入る。
のしかかるファブニルの胸元が観音開きのトビラのようにパカッと開く。
『バッフォ!!』
周囲が土煙に包まれる。
「キーケちゃん!!」
俺は叫び風魔法で土煙を飛ばす。
むっくりと立ち上がったファブニルの胸元は元に戻っている。
「キーケちゃん!ザクフォード!」
まさか嘘だろ?ふたりとも、ヤツに飲み込まれたのか?
「この野郎!ふたりを返せ!!」
俺はゲイルダッシュでつっ込み蹴りを入れる。
『ゴイィィィィィィィィィィィィン』
デカイ鐘を突いたような音が周囲に響き渡る。
ファブニルはノーモーションで躊躇なく飛び立ち去って行く。
「マジかよ」
俺は呆然とファブニルが去った方を見る。
そこにはデカイ屋敷が見える。
マルギシャスの屋敷か。
クソが。




