尻尾は切るのか巻くのものか?って素敵やん
「……なるほど、良くわかりました。一連の騒動の根本原因は彼ら二人であると、そして、年長のあなたが主犯格であるとそう言う事ですね?」
俺とコラスの説明を聞いた衛兵さんはそう言うと怖い顔をしてバリバを見る。
「ふんっ、下っ端の君に話す事など何もないね。私と口がききたかったら最後の日到来祈願の待ち人聖教会本部にコンタクトをとり給え。そしてアルエル・バリバとは何者なのか聞くと良い。そうすれば、何が正しくて何が間違っているのかが良くわかるだろうよ、ふっふっふっふ、あーっはっはっはっはっは!」
バリバはそう言って大笑いした。
「最後の日到来祈願待ち人聖教会のアルエル・バリバさんね。一応、連絡つけてみますので申し訳ないのですが、皆さんは少々お待ちいただいてもよろしいですか?」
衛兵さんはメモを取りながら俺たちに尋ねるので了承をする。
「くっくっくっく、我が教団にはな名士が揃っているのだよ。ここで貴様らに聞かせるのもはばかられるような、な。ふっふっふ、衛兵に拘束されるのはどっちの方かな?あーー楽しみだ!」
「この人、さっき話す事は何もないとか言って結構話していたよね?変な事ばっかり言うよね」
「変なおじさんなんだろ」
大笑いするバリバを横に俺とコラスは肩をすくめるのだった。
しばらくして先ほどの衛兵さんが帰って来る。
「えーと、アルエル・バリバさんね。連絡して見たんですけどね教団さんはあなたを解任したと言ってるよ」
「はっ??そんな訳はない!ちゃんと話したのか!誰と話したんだ!」
衛兵さんの言葉にバリバが激昂する。
「参ったなあ、ちょっと待って下さいよ」
衛兵さんは頭を掻いてから懐を探りメモ帳を取り出した。
「えーと、広報会委員のジェゲイジ・ウィンズルさんからです。今朝付で解任されているので当会とはなんら関係の無い人物であり、彼の取った行動について当会では一切責任は負えない、と」
メモを読みながら衛兵さんが言う。
「そんなっ!バカな事があるか!私は七大特権者だぞ!そう簡単に解任なぞっ!だいたい理由はなんだ!どんな理由で解任なぞ!」
「えーと、度重なる平信徒への暴言とアルコールの乱用の罪だと言ってましたね。それから当会の会員一名を騙して連れ去った事については訴訟の準備ができている、と伝えて欲しいとの事です。そちらの方がそうなのかな?」
衛兵さんがメモから目を話してルデックを見る。
「…はい」
ルデックが力なく頷く。
バリバの顔が硬直し真っ赤だったのがみるみるうちに青白くなってきた。
「ぷぷぷぷ、自分がケジメつける事になっちゃったね」
コラスが笑いながら俺を見る。
「ああいうトコは切るとなったら早いからね~。容赦ないよ」
俺も言ってやる。
「あっはっはっはっはっはっは!こんな事がある訳がない!これは夢だ!夢に違いない!早く覚めろ!早く!」
突然爆笑したと思ったら自分の両頬をビンタし始めるバリバ。
「じゃ、そう言う訳でふたり共後は詰め所で事情を聞こうか。あ、そちらのおふたりは結構です、ヤスミーナ君から話は聞いておりますので」
衛兵さんはバリバとルデックに語りかけた後、俺とコラスの方を見てそう言った。
俺とコラスは衛兵さんに頭を下げる。
「闘技場周辺の警備は特に厚くしておくので今日はゆっくり休みなさい。明日、大事な試合が控えているんだよね?」
「「あざーーっす!」」
俺とコラスは衛兵さんに感謝するのだった。
「では帰りましょうか、衛兵さんもああ言って下さっている事ですし」
ヤスミーナさんの言葉に俺たちは歩き出す。
「ありがとねヤスミーナさん、それにコラスも結局寝れなかったな」
「僕は夜型だからいいけどさ、クラちゃんも忙しくやってたし」
「クランケルも結局寝れんかったかー」
「そりゃ、あの騒ぎじゃねえ」
コラスが肩をすくめる。
「闘技場の方は大丈夫なの?」
俺はヤスミーナさんに尋ねる。
「ええ、皆さんの対応が早かったおかげで人も物も被害は出ておりません」
「そりゃ良かったよー。俺は服がボロボロになっちゃったけど、他の人達は大丈夫だったの?」
「あ~?クルポ~ン、いやらしいこと考えてるでしょ~?嫌だな~不潔だな~」
コラスがニヤニヤして茶化す。
「普段から美女侍らせてるお前に言われたかねーっちゅーの」
「たはははは、言われちった」
コラスが頭を掻く。
「うふふ、大丈夫ですよ。フーカさんから支給して頂い防具が優秀だったので」
「へ~、マジか~。俺もフーカさんに一着作って貰おっかな」
「そうされたら如何です?うちは正式に導入する事に決まりましたよ」
ヤスミーナさんが嬉しそうに言う。
さすがヤスミーナ、そつがないね。
俺たちはヤスミーナさんが呼んでいた馬車に乗り闘技場に向かう事になった。
まったく、そつがない人だよ。
「恐らくこれでしばらくの間は待ち人教会も身動き取れないでしょう。バリバの除名もヘダシェスの件の後では些か遅きに失した感がありますからね。なんだかんだで、当局による内部調査は避けられないでしょうね」
「すーごい助かりますね」
俺はため息交じりに言う。
「右派全体に対しての牽制にもなると良いねえ」
「待ち人教会は右派の中でも過激派で知られる保守勢力筆頭ですからね。今日の件で右派のパワーバランスが穏健派や中道派優勢になる事は容易に想像できますからね。そういう意味では大きな牽制にはなったと思いますよ」
コラスの言葉にヤスミーナさんが答える。
「右派と言っても一枚岩じゃないんだねえ~」
「そりゃそうだろ、人が三人集まれば派閥ができるってなもんだよ」
俺はコラスに言う。
「だったら私はコラスさん派閥ですね」
ヤスミーナさんが馬車の窓を開け外の風を浴びながら言う。
「なんでよ~、俺はヤスミーナさん派閥になるのに~」
俺は冗談めかして言う。
「だってクルースさんて女性嫌いだって言うから」
「誰がそんな事言ってんの?」
「ドギューズの皆さんが。じゃないと美女揃いのドギューズメンバーに対してあんな素っ気ないわけがないと」
「あいつらそんな事、言ってんの?そりゃ、ひでーーな」
「クルポンの恋人は僕だもんね~」
コラスが俺の肩に頭を乗せて言う。
「それもちゃうっつーの」
俺はコラスの頭をどけて言う。
「クスクスクス、まあ冗談はこれ位にしましてね。そんな訳ですから今日は皆さん、夜の警備はされないでゆっくりお休みになられて下さい。何かあれば必ずお声掛け致しますから」
「ヤスミンは~?」
「私も帰ったらすぐに寝ますよ~」
「だったら僕も寝る~」
「そうして下さいね~」
ヤスミーナさんとコラスが仲良さげにそう言い合う。
なんだかちょっと妬けるじゃないのさあ。
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、その夜は起こされる事なくグッスリと眠れたのだった。




