腐りやすいよ権力はって素敵やん
「いや~見事なもんだね~。クルポンなら天候も操れるんじゃないの~」
「さすがにそりゃ無理だって」
コラスに答えながら前世のエンタメ作品で見た天候を操る能力者を思い起こす俺。嵐を纏いなが空を駆ける姿はかなりイカしてたよなあ。
「まんざらでもないって顔してるよ~」
「よせやい!」
俺は照れながらコラスの横で半裸で転がるふたり組に近づいた。
「さてと、こんな所で何をしてたのあんたら?」
「ぶ、ぶ、」
「ぶ?」
「無礼だぞ!私を誰だと思ってるんだ!」
半裸の男は唾を飛ばして言う。
「誰なのあんた?」
「私はな!七大特権を持っているのだ!包括監督であり、代理の領監督であり、特別開墾者であり、貴族院連絡会委員であり領建設会委員であり、アロジダ聖典学校教訓者の調整者であり、トンボーレのエルダーなのだぞ!」
「何言ってんだこいつ?」
尊大にそう語る男の言葉に俺は思わずコラスを見る。
「何ってそれこそクルポンの専門分野じゃないの~?」
「専門分野?」
「そ。昼間のやつの仲間でしょ?この人ら」
「なに?あんた方、待ち人教会の人?」
コラスの話を聞いて俺は尊大な男に尋ねる。
「最後の日到来祈願の待ち人聖教会だ」
「しかも七大特権持ちの?」
「その通りだ」
男は尊大な態度でそう答えた。半裸なのにな。
「で、その特権持ちさんがこんな所で何をしていたのかな?」
俺は男に尋ねる。
「……」
男が黙りこむ。
「それじゃ、こっちの人に聞きますか。ね?何してたのかな?良くない事をしてたんじゃないかな~?」
「わ、私達は…」
「黙れ!」
男が口を開きかけた時、尊大な態度の男が急に大きな声を出す。
「しかしこれは組織の指示と反するのでは…」
「トンボーレに逆らうのか!これはトンボーレの特別指示なんだぞ!君はトンボーレに逆らうのか!」
尊大な男が唾を飛ばす。
「しかし、これは道義的にも倫理的にも…」
「君はトンボーレの指示に逆らうのか!この取り決めに疑問を抱く事はトンボーレの決定に逆らう事だぞ!トンボーレに逆らうつもりか!」
「ちょっと黙っててねー」
コラスはそう言って尊大男の肩をポンと叩く。
「オギョッ!」
尊大男は身体を硬直させて黙り込んだ。
「なにしたん?」
「なーいっしょっ」
コラスは可愛らしく言う。怖いなもう。
「まあ、いいや。君、名前は?」
「ルデック」
「改めて聞くけどルデックさんは、ここで何をしてたんですか?」
「トンボーレの指示で……」
「指示で?どうしたのかな?」
俺が優しく先を促すとルデックは事の次第をポツポツと話し出した。
まずトンボーレとは何かと言うと待ち人教会の最高指導者集団だとの事。そしてトンボーレからの指示は何なのか?それはとある缶を旧下水道に流し込む事。
祠のように見えたのは古い下水道の入り口なのだそうだ。そして、その下水道が続く先にあるのは円形闘技場。
渡された缶の中身により円形闘技場に集まっている邪神の使いへ大きなダメージを与える事ができる。それは完璧なる神の裁きで邪神の使い以外に対してはなんの危険もないものだ。とそう指示を受けたのだった。
ところがどっこい、下水道に流し込んだのは何とも禍々しい物体でルデックに触手を伸ばして捕まえようとした。
ルデックは腰を抜かすほど驚いたがもうひとりの男(こいつはトンボーレのエルダーつまり最高指導者集団のひとりであり待ち人教会のエリートで名前をアルエル・バリバと言った)はあわてず懐から新たな缶を出し中身を触手に振りかけた。すると触手は引っ込んだのだった。
更にバリバが缶の中身を下水管の中に振りかけると粘液物体はそれを嫌がるように奥へ奥へと移動したのだった。
バリバはその缶をルデックに渡し、これは純真基薬と言い粘液物体が嫌がる薬なのだと言った。
そして、粘液物体がこちらにやって来そうになったらすぐに振りかけるようにと命じたのだ。
しばらくは何事も無かったのだが、つい先ほどゴボゴボと音を立てて粘液物体が帰って来たので慌てて純真基薬を振りかけていたのだが、すぐに薬も尽き粘液物体が暴走状態になった所に俺たちが現れたとそう言う訳だった。
「なるほどねえ、君達、下水管に流した物は何なのか知ってたのかい?」
「いえ、ただ流せとだけ…でも、なんだか狂暴なやつでしたので、私は……私は反対を…」
「何を言ってるのだ!これはとてもとても重要な役割なのだぞ!私の事はまだ良い、私の兄の望みをかなえずして何とする!」
俺の質問に答えたルデックにバリバが唾を飛ばして怒鳴る。
「誰だよお前の兄って?」
「言うまでもない!モミバトス様だ!」
俺の問にバリバが答えた。
「マジ?ヤバくないこの人?自分の事、神様の弟だって言ってるんですけど?これモミバトス教の偉いさんが知ったらヤバいんじゃないの?不敬罪とかなんとか言われて処刑されちゃうんじゃないの?」
コラスが笑いながら言う。
「まあ、大手さんはこんなの相手にしないんじゃない?ほら、あれだから」
「バッタもんだから?」
「いや、そうハッキリ言わなくても。ルデック君、この人、いつもこうなの?」
「え、ええ。ちょっと問題発言の多い人で…」
「何を言うか!」
「ちょっと黙っててね~」
激高するバリバに軽く触るコラス。
「うぎゃ!」
バリバは身体を硬直させて黙り込む。
「で?」
にこやかに言うコラスにルデックが顔を引きつらせる。
「え、ええ。接待が少なかった時、自分はいいけどアニキはどうかなってモミトス様の事をアニキ呼ばわりしたり、信者への演説で十九歳で小隊長になっていないのは、あ、小隊長と言うのはひとつの役職なんですけど、それになっていない男との結婚は進めないと言い放ったり、膝丈コートは同性愛者の着るコートで気持ち悪いと演説で言い放ったりと、教団内でもちょっと危ない人だとみなされていまして」
「え~?兄ってモミバトス様じゃなくてモミトス様の方の事言ってんの~?神様の事アニキってそりゃヤバすぎっしょ~、何様のつもりなのこの人~」
コラスが笑って言う。
「かなり偏見のキツイ人物のようだな。さすがの待ち人教会も持て余してるんだろうな、だから、こんな汚れ仕事をまかされたんでしょ」
「やっぱり、これって汚れ仕事ですか?」
俺の言葉にルデックがおずおずと言った感じで聞く。
「汚れ中の汚れだね。なんせ、こいつは新種のスライムで闘技場内は大パニックよ。君はテロ行為の片棒を担いだ事になるよ」
「えっ!」
ルデックが驚いて血の気が引いた顔をする。
「え、じゃないっしょ~。うすうす気づいてたんでしょ~、缶の中身がヤバいもんだって」
「いや、そんな…」
「ま、いっけどさ~。自分の頭で考える習慣つけた方が良いと思うよ~?今回は特に大きな被害出てないみたいだからさ、まだこれからやり直す事もできるっしょ、ね?」
「ううう…」
コラスの言葉にルデックはうつむいてしまった。ルデックは見た所、まだ若そうである。まあ、コラスの言う通り、まだまだ人生これからだからな、変な団体に人生全てを捧げる前にリセットできるならラッキーだったと思ってくれよな。
「コラスさ~ん!居ますか~!コラスさ~ん!」
「こっちこっち~!」
コラスが聞えて来た声に応えて手を振る。
「あ!クルースさんもいた!」
コラスの声に導かれるようにしてやって来たのはヤスミーナさんだった。
「おーーい!こっちこっちーー!!」
ヤスミーナさんが声を上げ手を振る。
「誰か一緒に来たのかい?」
俺は手を振るヤスミーナさんに尋ねる。
「勿論、衛兵さんです!」
手をグッとやって答えるヤスミーナさん。
「ピィーーーー!ピュィーーー!!」
笛の音が聞えてくる。どうやら衛兵隊がこちらの位置を把握したようだ。
ヤスミーナさんが嬉しそうに手を振っている。
ルデックは項垂れバリバはブツブツと何かを呟いている。
「……彼らは煙のように消えるんだ……何物も私をデリートできない…破門の取り決めは私が取り決めた……離脱の痕跡を消すのは私のはずだ……そうだ!そうなのだ!」
「わっ!急に大きな声を出すなよ!」
俺は驚いてバリバに言う。なんなんだこいつは。
「ふふふ、ふっふっふっふっふ、はっはっはっはっはっは!」
「何?この人?おかしくなっちゃった?」
コラスがバリバを見て言う。
「バカ者どもめ!私を見くびるなよ!衛兵が来たくらいで私をどうこうできると思うな!私は最後の日到来祈願の待ち人聖教会の七大特権者なのだ!神の代理人たるこの私を何人たりとも傷つける事は出来ないのだ!」
「神の代理人とか言っちゃってるんですけど」
「傷つける事は出来ない!とか言ってるけど、今の自分の姿を鏡で見てから言って欲しいよな」
バリバのセリフに呆れるコラスに俺は言ってやる。
「なんですそいつら?」
近づいて来たヤスミーナさんが怪訝そうな顔でバリバ達を見る。
「今回の悪役で~す」
コラスが笑顔で言う。
「待ち人教会の幹部とその部下さん。部下さんは割と協力的だよ」
俺は補足する。
「フハハハハハハ!愚かなルデックよ!真の神を信じきらなかった己の不明を恥じよ!貴様達もだ!このケジメはしっかりとつけさせてもらうからな!」
「現着しました、この中で事情に詳しい方はどなたですか?」
やって来た衛兵隊の人が周囲を見渡して言うので俺は手を上げ事情を説明する。
その傍らでバリバは終始笑っているが、果たしてこいつの言うように何かに守られているのか?これだけの事をして教団の力でもみ消したりできるのだろうか?
俺は一抹の不安を感じながら衛兵さんに事情を説明するのだった。




