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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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姑息な奴に対抗するにゃって素敵やん

 ちょっと話がシリアス方向に進みそうになり思わずみんなが無口になってしまったが、その分と言うのか何と言うのか運転に集中しできたので闘技場の駐車場には思っていたより早く到着できた。

 駐車場に着くとすでに警備班の女生徒が待ち構えておりヤスミーナさんに状況を説明する。

 

 「…各班対象をマークしておりますが指示通り確保はしていません」


 「それで良いです。さすがに何もしていない所を確保するわけにはいきませんから」


 ヤスミーナさんがきっぱりと答える。現在闘技場は親善試合前日ではあるが文化祭開催中という事で近所の人限定で一般開放されているようだ。大きなイベントこそないものの屋台が幾らか出ておりお客さんの数も多くはない物の散見されている。

 

 「ご指示通り飲食関係各所は警備を厚くしています。今のところ対象が近付く様子は見受けられません」


 「各対象の行動を教えて下さい」


 「こちらをどうぞ」


 警備班の生徒は一枚の紙をヤスミーナさんに渡す。


 「…どう思いますか?」


 一読したヤスミーナさんは紙を俺とフーカさんに手渡した。

 そこには対象者三人の行動が記載されていた。

 

 「特に怪しい動きは見られませんね」


 フーカさんが言う。

 奴らはほとんど客席におり食事もとっていないようだった。

 たまに移動する所と言えばトイレくらいか…。

 

 「ちょっと、わからないけど一応念のため彼らが入ったトイレを封鎖できる?」


 俺はヤスミーナさんに尋ねる。


 「できますか?」


 「はい」


 「ではすぐにお願いします」


 「わかりました」


 ヤスミーナさんの指示を受け女生徒が走って行く。


 「フーカさん、毒物を感知する道具とか持ってる?」


 「ええ、持ってます」


 「それじゃヤスミーナさん、早速案内してくれる?」


 「わかりました」


 ヤスミーナさんは短く答えて小走りで移動を始める。俺とフーカさんもそれに続く。


 「ここのトイレってボンパドゥの製品入ってる?」


 「ええ、導入して貰ってます」


 「そうか」


 俺は嫌な予感に襲われる。


 「ご苦労様です」


 清掃中の看板を出し男子トイレを封鎖している女生徒に声をかけるヤスミーナさん。


 「は!どうぞ」


 女生徒は敬礼をして中に通してくれる。


 「クルースさん」


 ヤスミーナさんが俺を見る。

 俺は頷いて個室のドアを開ける。


 「フーカさん、ここを測定して貰える?」


 「そこですか?」


 俺が指さした先を見てフーカさんが質問する。


 「便座とノズル二か所お願い」


 俺はフーカさんにお願いする。俺が怪しんだ場所、それは便座とシャワートイレのノズルだった。シャワートイレはボンパドゥで確保した物品に含まれており、俺が説明した事で商品化にこぎつけた最新商品だ。

 まだまだ普及率は高くないが大きな施設などではボチボチ見られ始め話題になりつつあった。

 

 「二か所ともに反応ありです」


 ポーチから虫メガネのような物を出しそれで便座とノズルを覗き込んだフーカさんが言う。


 「植物性毒でかぶれを誘発する成分が含まれていますね。これ以上の事はもっと専門的な魔道具を使わないとわかりませんが」


 「ありがとうございます。こちらのトイレを使用した人に注意喚起をお願いします。医務室に行って植物性かぶれ毒の解毒剤を用意して貰って下さい。それから、ここを使用した例の人物の確保をお願いします」


 ヤスミーナさんがトイレ内にいた警備の女生徒に指示を出す。


 「では次に行きましょう」


 そうやってヤスミーナさんの案内で次々にトイレを確かめては毒物検知をし、発見されれば警護班に注意喚起をするを繰り返す。結局は報告のあったトイレ全てから毒物が発見され、マークされていた偽ヘダシェスは全員確保されたのだった。

 偽ヘダシェス達の所持品からはかぶれ成分の毒物が入った小瓶が発見され、衛兵に引き渡される事となった。

 警備班の働きかけでトイレ使用者への注意喚起が行われたが、かぶれ症状をうったえる人は結局出る事はなかった。試合の無い日であった事や一般開放が地元のみに限定されていた事、フルポアという超お嬢様学園の学園祭と言う事で男性の足が遠のいたのか男性の来場が少なかった事などが幸いしたのかも知れないと言うのはヤスミーナさんの見解だった。

 フーカさんは小さな声で、症状が出ても恥ずかしくて申し出る事ができなかったのかも知れませんね、と警備班の女生徒達を見ながら俺に耳打ちをしたが案外それが正解なのかも知れないな。

 警備班の女子生徒達は懸命に、肛門付近にかぶれ症状のある方は申し出て下さい、無料で医務室にて処置させて頂きます、と告知していたが、確かに俺でも言い出し辛いかな。

 

 「まったく初日からてんてこ舞いですね」


 ドギューズの警護をしていたコラス達と合流した俺たちにヤスミーナさんは額の汗をぬぐいながらそう言った。


 「ホントに誰のせいだろーねえ」


 「俺か?俺なのか?だとしたらスマンとしか言いようがないのだが」


 ニヤニヤしながら俺を見るコラス。

 俺は冷や汗をかく。


 「いえいえいえいえ、クルースさんのせいじゃあないですよー。うちの理事が大きく関与してる可能性が高いんですからー」


 ヤスミーナさんが手を振って言う。


 「うふふふふふ、冗談冗談。誰のせいでもないよ。強いて言うなら変なことする人達のせいだもんね」


 「お前、冗談キツイよ。俺、冷汗かいたってーの。もう、冗談なんかで冗談言うなー!」


 俺は左手の甲をゆっくりと大きく動かしコラスにツッコんだ。ホントのところは俺に原因があるのに、そう言って笑いにしてくれるのはコラスならではの優しさよな。

 

 「本日はご来場いただきまして、誠にありがとうございます。ご来場の皆さまにご案内申し上げます。当施設は間もなく閉場致します。またのご来場を心よりお待ちしております。本日は…」


 物悲しい音楽と共に閉場のアナウンスが流れて来た。


 「ふぅ~、なんとか無事に初日が終わりましたね」


 「さて、どうかな~」


 ホッとした様子のヤスミーナさんにコラスがまたいたずら小僧のような笑みを浮かべて言う。


 「もう!勘弁して下さいよ!私、閉場の手伝いをして来ますね!」


 跳ねるように言って去って行くヤスミーナさん。くぅ~、おっさん心を刺激するキュートさ!

 ううむ、この子、飲食店の売り子だったら間違いなく看板娘になれる逸材だぜ。ヤスミーナさん、恐ろしい子!

 

 「そっちはどうだった?」


 俺はケイトに尋ねる。


 「フルポアさんにしっかり警備して貰いましたので特に異常はなかったですが、今日の件、どう考えます?」


 「どうって、何がよ?」


 真面目な顔で言うケイトに俺は尋ねる。


 「うちに直接の働きかけはありましたけどフルポアさんのところにはなかったようです。これをどう考えますか?」


 「ケイトっちは心配性だよね~。うちにチョッカイかけて警備が厳しくなったからじゃないの~?」


 コラスが言う。


 「その可能性もありますけど、もし、そうではなく何か別の目的があるとすればどうでしょうか?」


 ケイトが更に問う。


 「別の目的ですか。一度にふたりを相手に戦わなければいけない状況で、そのふたりは共闘関係にない。そんな状況で打てる手と言えば…」


 クランケルがアゴの下に手をやり首をひねる。


 「漁夫の利か」


 俺はつぶやく。


 「どういう意味です?」


 「うちの地元に伝わることわざなんだけどな。鳥が貝を取ろうとしたんだが貝も鳥のくちばしをガッチリ挟んで応戦したんだよ。鳥は貝に向かってこう言うんだ、このままではお前は干上がって死んでしまうぞ、と。貝も負けじとこう言い返すんだ、お前こそこのままじゃ飯も食えないで餓死するぞ、と。そこをたまたま通りかかった漁師が鳥も貝も両方持って帰りましたとさ、って話しなんだ」


 「ああ農夫の功ですね、こっちでは通りがかったのは農夫ですね、貝と鳥は一緒ですけど」


 「へえ、所変わっても似たような言葉はあるもんだなあ」


 クランケルの言葉に俺は感心する。どんな世界でも人ってのは似たような事を考えるもんだ。


 「つまり鳥と貝が我々とマルギシャスらモミバトス教右派、農夫がスプレーンらチョーズン派とそう言う事ですか」


 ケイトが言う。


 「今回は漁師もいるんじゃな~い?」


 「そうだなザクフォードもいやがった」


 俺はコラスに答える。


 「私達が各所に働きかけて右派やチョーズン派を牽制したように、スプレーンはスプレーンでなにかしらの働きかけをしてチョーズン派の攻撃が我々に向くように仕掛けた。今までの話を聞く限りスプレーンという人物は油断のならない人物のようですから十分にあり得る話ですね」


 「あり得るあり得る、まぁ~なにしろずる賢い奴だからな~スプレーンは。しかし、スプレーンのいいように動かされてると知ったらマルギシャスの奴、地団駄踏んで悔しがるだろうな。あいつホントにカッコばかりつける奴だったから」


 俺はマルギシャスを思い出して言う。ああいう自意識過剰なのに自己顕示欲と承認欲求ばかりが強い人間は自分が大好きなので自分の間抜けは認めたがらないし、少しでも人にそう言う所を見せたくないだろうからな。

 

 「だったら知らせてあげましょうか。ストーム君にお願いしてマルギシャスがスプレーンに一杯食わされ道化を演じているという噂を流してもらいましょう」


 ケイトが涼しい顔をして言う。


 「いいねえ~、それおもろいよ。本人はクールと思ってるけど実はみんなダサいと思ってるってのも流しといてよ」


 「そんな個人的な事は伝播に時間がかかります。広まりやすいのは多くの人が心の底で望んでいる事、そうあって欲しい、そうだったら面白いと思っている事ですからね。ただ事実なだけではダメなのです」


 「なんだケイトも随分詳しくなったなあ」


 「ストーム君に教わっていますからね。他にも悪評である、証拠が曖昧である、情報の重要度が高い、なども広まりやすい条件になります。この場合全てに当てはまりますからね、伝播は早いですよ。ちなみにジミーさんのは重要度が低いですから効果が薄いと言えます。では早速連絡して来ます」


 ケイトはそう言って魔導通信機へ向かって歩いて行く。

 

 「凄いですねケイトさんは」


 「勉強家だよねー」


 感心したように言うクランケルにコラスが言う。

 クランケルもあのコラスでさえケイトには一目置いているんだから面白いもんだ。

 今いる場所は闘技場内の飲食エリアで、広くとられたフロアには売店と共にイスとテーブルが沢山設置してある。

 一般客は退場し屋台も店じまいをしている。

 ドギューズのメンバーは各々で購入した物をテーブルに広げキャイキャイと楽しそうに話しをしている。

 俺とコラス、クランケルはちょっとだけ離れた所に座りその様子を見ていた。

 ほっとけば女子はいつまでも話ししてるな。

 その点、男は話すべき事が終わると普通に無言になっちゃうからな。特にクランケルみたいな男は無言がまったく苦じゃないからなあ。


 「ドギューズの皆さまでよろしかったですか?」


 フルポアの学生服を着た女性との集団がやってきてドギューズのメンバーに声をかけた。

 

 「そうだけど、何か?」


 マーがつまんでいたポテトを置いて言った。


 「何かとはご挨拶ですね、普通は後から来たあなた方のほうから挨拶に来るのが筋ではなくて?」


 相手方の女生徒がキツイ口調でそう言った。

 空気がピンと張り詰める。

 隣でクランケルがニイっと嬉しそうな笑みを浮かべる。

 揉め事好きめ!

 勘弁してくれよ、もう。


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