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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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悪党がやりがちな事を潰せって素敵やん

 チョーズン派にしても右派にしてもああした良からぬ団体の問題点を話し合っている間に、ドギューズのメンバーはすっかり疲れをとりチルモードに入っていた。


 「いやー、すっかり身体もほぐれて疲れもバッチリ消えちゃったなー」


 肩と首を回しながら言うマー。お前はオッサンか。


 「ぷぷぷっマーたんマジ受けるっ、おっさんかっつーの」


 みっちょんが笑って言う。ほらな、言われた。

 

 「失礼します」


 新装備を身に着けた女生徒が部屋に入って来てヤスミーナさんに耳打ちをする。


 「グラウンド全面整備完了しまして、ワイルドフェニックスは全体練習を終了したそうです。ドギューズさんは如何なさいますか?」


 ヤスミーナさんはドギューズのみんなに尋ねる。


 「ワイルドフェニックスってフルポアさんとこのチーム名?」


 俺は小声で隣りにいたクランケルに尋ねた。


 「知らなかったんですか?それはいくらなんでも…」


 クランケルが絶句した。


 「え?そんな?俺?」


 「一応名目はマネージャーだもんね~、相手チームの名前を知らないってのはどうかな~」


 今度はコラスがニヤニヤしながらそんな事を言う。

 うっ、なんか俺、無責任男みたいに言われてるんですけど。


 「いや、それにしても凄いチーム名だよね。野生の不死鳥って、野生じゃないやついるの?みたいな」


 俺は笑いながら軽い冗談を言う。


 「スポーツチームには良く使われますよ」


 「いいのいいのクラちゃん、クルポン恥ずかしいの誤魔化してるだけだから」


 「ムムムムム…」


 図星を突かれて唸るしかない俺。


 「なに石でも食べたみたいな顔してんの!グラウンド行くわよ」


 「おっ、おう」


 メイに背中をバシンと叩かれ俺はムニャムニャと返事をした。


 「ほら、鼻の下伸ばしてないでしゃきっとする!」


 ジンジャーが俺の肩を叩く。


 「フルポアの生徒に見惚れていつも以上に顔がぼんやりしてるなー」

 

 みっちょんが言い皆が笑う。

 ちぇっ、すっかりドギューズのいじられ役になっちまたな。

 俺はテヘヘと頭を掻いてグラウンドに向かった。

 ちなみにヤスミーナさんとフーカさんは別件で用があると席を外したのだった。

 あのふたりも忙しいねえ。


 「おっし!声出してけーー!」


 マーの檄がグラウンド内に響き渡る。

 クランケルは左側客席、コラスは右側客席を警戒中だ。

 俺はと言えばバックネット裏って言うのかね、捕手の後ろに張られたネットの後ろ側で警備体制に入っている。

 メンバーの近くにはケイトがいる、まあ盤石の構えだろう。

 あちこちに警備係の女子生徒もいるしな。

 俺はバックネット裏側観客席を見回る。

 

 「恐れ入ります、ドギューズスペシャルセキュリティー部長のトモ・クルースさんですね?」


 フーカさん特製新装備に身を包んだ女生徒が俺に話しかけてくる。


 「スペシャルかどうかはわかりませんが、クルースは確かに俺ですが」


 「ヤスミーナ部長から伝言です、手配の男を発見、至急闘技場正面中央ゲートまでお越し下さい」


 女生徒はそれだけ言うと一礼して去って行く。

 え?いきなり言われても困るんだが、手配の男ってまさかミドルト・ヘダシェスか?」


 「クルポンクルポン、ヘダシェスが見つかったって?」


 コラスがこちらに駆け寄りながら声をかけてくる。


 「ああ、それらしい事を今、聞いたトコなんだけど」


 「僕もクランケルンも聞いたよ。で、クランケルンとも相談したんだけどさ。ここはうちらが見とくからクルポン行って来なよ・やっぱあの手の連中の事はクルポンのが詳しいっしょ?遠慮せずに行って来なよ」


 「悪いな。んじゃお言葉に甘えて言って来るわ」


 「ん、気を付けてね」


 「そっちもな」


 俺はコラスに手を上げ正面中央ゲートに走った。

 ゲートにつくとそこにはフーカさんが待っていた。


 「遅いですよ、もう。コラスさんとクランケルさんは?」


 「あのふたりはこっちの警備をするからって俺が任されてきた」


 「わかりました。それじゃあ行きますよ!」


 フーカさんは言うが早いか走り出す。


 「行くってどこへ?」


 俺は後に続きながらフーカさんに尋ねる。


 「ヤスミーナさんの応援にですよ」


 「どこに居るの?」

 

 「それをこれから追跡するんですよ」


 フーカさんが走って向かった先は例の魔導ピックアップトラックの所だった。


 「さ、乗って下さい」


 「俺が運転するの?」


 「じゃないと誰が術式具を弄るんです?」


  フーカさんに言われて俺は運転席に座った。

  操作の仕方は前世の車とさほど変わらない。因みにミッションはオートマだった。


 「んで、どこへ行けばいいの」


 「フロントガラスに道順が出ますのでそれに従って下さい」


 フーカさんは助手席のダッシュボードから何か板状のものを引き出すと、それを盛んにいじくりながらそう言った。

 フロントガラスに矢印が映る。


「おーー!フロントガラス投影型のナビかよ!スゲーな!」


「ふふふ、新開発の試作品ですよ。視線を移動させずに見れるので安全性能が高まっています」


「こりゃスゲーや」


前世でもこんなの珍しかったよ。

 俺はフロントガラスに映される矢印に従って魔導車を走らせる。


 「んで、どうなってんのか事情を聞かせてくれない?」


 「あの後、ふたりで試作品の中間アンケートの件で話し合ってたのですが…」


 話し合いをしていたふたりの元に警護係から一報が入る。それは例の変装予想図入りのヘダシェス手配書に合致する人物の目撃情報であった。目撃場所は闘技場前馬車ターミナル。

 ふたりが急行すると変装図に合致した男はカブリオレを探し乗り込むところであった。

 カブリオレってのは御者が客用の座席の後ろに乗るタイプの軽量二輪馬車の事で、一般の旅客馬車に比べて乗員数が少なく、特定の停車場に行くのではなく乗客の任意の目的地へ向かってくれる馬車である。

 ま、前世で言う所のタクシーみたいなもんだ。

 ヤスミーナさんはカブリオレに乗り奴を尾行すると言うのでフーカさんはすぐさま位置情報発信魔道具を手渡したのだった。

 そして現在に至ると、そういう事のようだ。


 「…ヤスミーナさんの信号が止まりました。どうやら浄水場のようです」


 「浄水場?」


 俺は嫌な予感がした。自分の主義主張を通すために暴力を用いる奴、つまりはテロリストが浄水場に向かっている。こんなん、碌な事じゃ無いに決まってる。俺はアクセルを踏み速度を上げた。


 「あまり土煙を上げないよう気を付けて下さい。それと、前方からカブリオレが戻ってくる可能性がありますので注意して下さい」


 「了解」


 しばらく走るとフーカさんの言った通りカブリオレとすれ違う。

 一台とすれ違いしばらくするともう一台とすれ違う。

 

 「ヤスミーナさんが帰すのはわかるけど、ヘダシェスも帰したって事はどう見ます?」


 「誰かと待ち合わせていると考えるのが自然でしょうね」


 「相手は複数いると」


 「そう考えた方が良いでしょうね」


 「悪い奴ほど群れたがるよね」


 「うふふ、そろそろ目的地ですね」


 ナビ通りに進むと浄水場を一望できる高台に出る。

 

 「ヤスミーナさんが居ます」


 高台の崖っぷちに腹ばいになっているヤスミーナさんを発見。俺たちは浄水場から死角になる位置にピックアップトラックを停め身体を低くしてヤスミーナさんに近付いた。


 「どうです?」


 「奴は仲間と合流したようです」


 フーカさんに尋ねられヤスミーナさんが答えた。


 「早いとこ行った方が良いかもよ?浄水場でしょ?水に変な物混ぜる気かもよ?」


 「ええ、恐らくそのつもりでしょうね。しかし、迂闊に突っ込めないんですよね、あれを見て下さい」


 ヤスミーナさんはそう言うと俺に小型の望遠鏡を寄こした。

 俺は受け取ったそれを覗き込み出入り口付近を見る。


 「もちょっと右……その上を見て下さい」


 ヤスミーナさんに言われて視点を移動すると奇妙な生き物の群れが目に入った。

 なんだか大きな鶏みたいだけど爬虫類みたいなシッポとコウモリみたいな翼が生えている。


 「なによあれ?」


 「コカトリスですよ。あれは火を吐き見たものを石にする力があるんですよ」


 「また石?ったくそういう魔物好きだなあいつ」


 「でも、一番厄介なのはヤツの血が猛毒って事なんですよ。浄水場に飛び散ったら大変です」


 ヤスミーナさんが渋い顔をして言った。

 

 「あいつら、まさかコカトリスの血を流す気なのですか?そんな事をすればどんな事になるか」


 フーカさんが言う。


 「大惨事ですね。特にイベントで闘技場に人が集まっている中やられたらとんでもない事になりますよ」


 ヤスミーナさんが答える。

 冗談じゃないそんな事させてたまるか。


 「コカトリスは俺がなんとかするよ。血を流さないように戦闘不能にすればいいんだよね?」


 「そうですね、クルースさんにそこを任せられるのなら、こちらは内部に潜入し中に居る連中を制圧します」


 ヤスミーナさんが俺に応えて腰から術式具を取り出した。

 

 「ちょっとお待ちを」


俺たちの話を聞いたフーカさんは素早く動きピックアップトラックの荷台から何かを持ち戻って来る。


 「皆さん、これをどうぞ」


 フーカさんが持ってきたのはサングラスだった。それも顔の横までレンズで覆われたタイプの奴だ。

 ううむ、これは前世の映画で見た、未来からやって来たムキムキマッチョサイボーグがかけてたやつみたい。

 

 「これは魔導車のフロントスクリーン投射術式と同じ術式が施してあります。このグラス越しの風景はグラス前方にある映像取り入れレンズからのものですので直接見える物ではありません。よって、直接見る事で影響を受ける術へのガードとしては完璧なものとなっています。しかも、最新の攻撃魔法防御術式コートが施してありますので魔法への耐性もバッチリ!その上、ハイプロテクトビートルの甲殻を加工した素材を使用していますので物理攻撃に対する耐性もバッチリですよ。更に更に!暗視術式、熱図化術式機能も搭載!機能切り替えは右側のボタンを押すだけの簡単仕様!その上、このグラス同士で通信可能となっているんですよ!まあ、通信範囲は限られてますけど、浄水場近辺くらいなら問題なしです!さあ!どうぞ!」


 段々説明に熱が入るフーカさん。

 まあ、これだけの便利機能がついてれば熱も入るってなもんだよな。だってこれもう、ほぼ前世のスパイ映画に出てくる便利アイテムレベルだもん。

 こいつをかけてパーティーにでも出れば気分は秘密諜報員だぜ!

 受け取る俺もちょっとテンションが上がるのだった。


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