表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
PR
1207/1221

ぞくぞく集まるいかがわしい奴らって素敵やん

 「あ!これこれ!この人!この人っぽいよ~!もっとヒゲ薄かった感じもするし眼鏡ももちょっと小さい感じがするけど、間違いないですよ~!」


 キモファンがリストの中からひとりの男を指差して言った。

 ヒゲが薄いだの眼鏡が小さいだの言っとるが、元々はお前の見立てでこっちはやっとんじゃい!違ってんならお前の記憶が違っとんじゃい!

 とキレそうになるがぐっとこらえる。


 「確かですか?」


 「確かですよー!間違いないですって!だってだってだって、この人が警備に見つからないでロッカールームに入る方法教えてくれたんだもーん」


 だもんじゃねーっつーの!良くキレないなあと隣りを見るとヤスミーナさんも額がピクついているよ。ったく、このキモ野郎は人をイラつかせる天才だな。

 どれどれ、リストの男はどんな奴なのかな?

 と、改めてキモファンの指差した奴の記述を見る。

 名前はミドルト・ヘダシェス。

 最後の日到来祈願の待ち人聖教会(以後待ち人教会)の機関紙印刷商会である地下室の守り人商会(以後守り人商会)の大番頭。待ち人教会はモミバトス教系の新宗教で当初チョーズン派に属していると見られていたがモミバトス教右派に属した。チョーズン派の情報を持ちこむ事で右派に受け入れられたとの情報もあり、チョーズン派からマークされている。ヘダシェスは情報持ち込みの企画立案を行った事で現在の地位についたと言われており、待ち人教会内でもチョーズン派から最もマークされている人物である。機関紙にてチョーズン派に属する団体へのネガティブキャンペーンを張っており、ネードリバー事件やストロイ通り事件の直接的な原因となった人物である。


 「これはまた面倒な人物が出てきましたね。恐らくもう変装は変えているでしょうがこの画像は警備係に配布しておきます」


 「ちょっと待って、他の写真に別の変装例を載せて配った方がいいかも。長髪バージョンとかスキンヘッドバージョンとか」


 「なるほど、採用させて頂きます」


 「ちょちょちょ、協力したんですからー。僕、協力したんですよー?もしもーし?聞いてますかー?」


 「ネードリバー事件ストロイ通り事件ってどんな事件なんです?」


 キモファンの言葉を無視し俺はヤスミーナさんに尋ねる。


 「別室で話しましょうか」


 ヤスミーナさんもキモファンの言葉を無視して部屋を出ようとする。


 「えーー?うっそーーん?なんでーー?僕、協力したのにーー」


 キモファンの叫びを後ろに聞きながら俺とヤスミーナさんは部屋を出る。


 「必要な情報は聞きました。後は衛兵へ引き渡して下さい」


 ヤスミーナさんは部屋の前で立ち番をしていた女生徒に声をかけた。

 警備係の女生徒は子気味良い返事をするとビシッと敬礼する。


 「さてと、先にこれの始末をつけてよろしいですか?」


 ヤスミーナさんはリストを掲げて言うので俺は頷く。


 「ありがとうございます」


 ヤスミーナさんはそう言うと早足で通路を進み通路奥の部屋にノックもしないで入った。


 「皆さん、こちら至急お願いします。数パターンの変装画像を併記し配布お願いします」


 ヤスミーナさんはリストの余白に髪ヒゲの長さと種類、眼鏡帽子の種類、と書き部屋にいた女生徒に渡した。


 「了解です」


 「イエスマム!」


 リストを受け取った女生徒は敬礼をするとリストを持って更に奥の部屋に向かった。

 

 「ありがとうございます、では改めて別室に」


 「ええ、お願いします」


 ヤスミーナさんは頷き部屋を出る。

 

 「詳しい話しは別室にてさせて頂きますが、端的に言わせて頂くと先ほど記述のあった事件はふたつとも宗教的対立に起因する重大アクシデントです」


 「アクシデント、ですか?」


 「ええ、インシデントではなくアクシデントです」


 ヤスミーナさんは言う。確か、重大インシデントってのは事故には至らなかったが大きな損失ダメージを受ける可能性があった出来事を指す言葉だ。つーことは、何らかの損害を伴ったという事だろう。

 ヤスミーナさんは資料室とプレートが掲げられた部屋に入った。


 「どうぞそこにお座りください」


 ヤスミーナさんに促されるままに俺はイスに座る。

 部屋の中はぎっしりと書物の詰まった棚に囲まれている。


 「闘技場に資料室とは。一体何の資料なんです?」


 「我々が持ち込んだ資料です。元々なんにでも使える多目的部屋なんですよ、さて、これをご覧ください」


 ヤスミーナさんは答えながら机の上に大きな本を置いて開いた。

 大きな本には新聞記事が張られており、どうやらスクラップブックのようだった。


 「これはリストに載っている人物に関わる新聞記事を切りぬいたものです。先ほどのミドルト・ヘダシェスに関連した記事、つまり例の事件について書かれた記事です」


 俺は開かれたページを凝視する。

 ネードリバー事件とは、ネードリバーの河川改修を巡り反対住民と賛成住民の衝突が発生し、死者二名、重軽傷者十三名を出した事件とある。幾つかの記事を読み進めて行くと河川改修工事について賛成派と反対派で当初は話し合いの姿勢を見せていたのだが、反対派に待ち人教会の信者がいた事から守り人商会が協力し、機関誌を用いて賛成派への大々的なネガティブキャンペーンを張りだした事で対立が激化。賛成派の中核を担っていた地元の有力商会主が守り人商会の機関誌にて愛人スキャンダルを暴露され地元有力商会主は激怒し、懇意にしていた地元暴力団体に反対派と守り人商会への嫌がらせを依頼。

 守り人商会は地元衛兵隊に被害届を出していたが衛兵隊は有力な証拠を見つける事ができず打つ手なし。

 業を煮やした反対住民たちはネードリバー河川敷にて決起集会を行うが、そこに賛成派がなだれ込み大きな騒ぎになり事件へと発展したとの事。

 更にその下にはゴシップ紙の切抜きで、ネードリバー事件激化の影に浮かぶ謎の大番頭とは?という見出しの記事が張ってあった。

 それをざっと見ると、急速に勢力を拡大する待ち人教会だがその背後にあるのは機関誌を用いた攻撃的な戦略であり、その立役者はミドルト・ヘダシェスであるとある。

 ミドルト・ヘダシェスは常に組織の敵を作り続ける事で信者の結束を高めて来た。

 彼はまるでいつも敵を探している血に飢えた獣のようであると書かれてある。

 

「なんとも厄介な人ですね」


「ええ、次のページをご覧ください」


俺はスクラップブックをめくる。

 ストロイ通り事件、シュトロン領領都エストロイの目抜き通りストロイ通りにて起きた大規模暴動事件。一連の暴動。略奪によって死者十二名、重軽傷者七十三名、逮捕者百十三名を出した。また二百十三件の火災が発生し九十八件の建物が略奪や破壊された。

 こりゃ、結構な規模の事件だぞ?こんなのにも関わっていたって言うのか?

 直接のきっかけはストロイ通りを通行中の旅商人が衛兵に職質されたが反抗的な態度を取った事により衛兵三人により制圧された事に端を発する。それを見ていた住人が衛兵の横暴だやり過ぎだと騒ぎ立て、衛兵三人と集まった住人たちは一触即発の事態になった。

 その場は応援に駆けつけた衛兵隊により騒ぎは大きくならずに済んだが、結局連行された旅商人について住人たちの中で憶測が憶測を呼び、常日頃からのうっぷんもあり衛兵詰め所前に住人たちが結集し旅商人を解放せよと詰め寄る事態になった。

 その中で集まった若者たちが衛兵詰め所に石を投げ始め、衛兵詰め所に食事を運んでいた近くの食堂を襲撃するに至り事件は一気に混乱し始める。

 当初一部の住人たちによる運動であったのが混乱の火はみるみるうちに広がり、略奪や破壊目的の者達が暴れまわり大規模暴動へと発展する事になった。

 事態を重く見た領主は近衛兵団を送り込み事態は収束するが、衛兵隊の一部に日常的に見られた強い余所者排斥の姿勢や弱い立場の者への横暴さが露呈し、住民間に永らく権力不信を抱かせる要因となったとある。

 これもまたその下にゴシップ記事が張られている。

 見出しはストロイ通り事件はネードリバー事件の再来か?だ。

 連行された旅商人は実際には詰め所内で何もされてはいなかったのだが、拷問を受けているという風説が急速な勢いで流された。この情報操作の背後には守り人商会の機関誌が大きな役割を果たしていた。

 また、一部信者が若者たちを集め、無軌道な行いをする事を正当化するような過激な説法をしているのを何人もの住人が目撃している。

 更に今回の暴動により守り人商会の事務所は被害を受ける事なく、そればかりか暴れまわる若者たちに飲食物を無料で提供していた疑惑もある。

 これらの事はすべて混乱のさなかに住人たちが目撃した事であり、それ以上の証拠はないのだがこの事件以後エストロイにおける待ち人教会の勢力は急速に拡大した。

 またこの時に連行された旅商人はエストロイ港にて水死体で見つかっている。

 

 「これ、かなりマズイ団体じゃない?」


 「そうですね、まあ、記事のすべてを鵜呑みにはできませんがミドルト・ヘダシェスと言う人物が要注意人物である事は間違いないでしょうね」


 まったくなんだってこう怪しい連中ばかりが集まって来るかなあ?

 もっと、面白おかしい連中に好かれたいもんだよ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ