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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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テストモニターって素敵やん

 「……ふむふむ、なるほどなるほど。そう言う事でしたらお力になれるかも知れません、ちょうど民間向けのカジュアルな防具の試作を作ってましてねえ。最近何かと物騒ですよねえ?物々しくなくそれでいてしっかりと安全も確保でき、更に社交の場で身に着けていてもおかしくない、そんな防具を作れないかとランラート男爵より依頼がありましてね。以前にジミーさんが説明してくれた繊維ありましたよね?あれの特徴を解析し、代替素材で近い性能の物を作る事に成功しましてね」


 俺の説明を聞いたフーカさんがニンマリと笑って言う。フーカさんが言っている繊維ってのはボンパドゥ商会連合で保管しているこの世の理を外れた品物のひとつにあった防弾防刃ベストの繊維の事である。

 俺もそこまで詳しくはないが、こちらに来る前に防弾防刃ベストに使われていた素材と言えばケブラー繊維と超高分子量ポリエチレンだった。

 どちらも化学的に合成された素材であり、その作り方は良く知らないのだが素材的な特徴は良く知っている。

 ケブラー繊維は鉄の五倍の引っ張り強度と高い耐熱性を持った繊維である。そして高分子量ポリエチレンは普通のポリエチレン、つまりプラスチックの数百倍の密度を持つポリエチレンで、金属をしのぐ耐摩耗性、優れた衝撃吸収力、高い自己潤滑性を持つことで知られる素材なのだ。

 そんな話をした事はあったが、この世界の素材でそれを再現しちまうってのはさすがフーカさんだぜ。


 「丁度、試作品を魔導車に積んでありますからテストを兼ねて着てもらいましょうか。それではクランケルさんはフルポアの責任者さん、ヤスミーナさんでいいんですよね?彼女に話を通しておいてもらえますか?ジミーさんは荷物持ちをお願いします」


 「僕は~?」


 「コラスさんはドギューズの警護があるんですよね?今も中にテイムした何かを放ってますよね?」


 「うわ~、フーカちゃん凄すぎぃ~」


 ズバリ言い当てたフーカさんも怖いけどまったく驚いていないコラスの方が怖いな。フーカさんも若干表情が硬くなっているような気がしなくもないが、そこはそれ名高い商会の研究主任だ表にゃ出さないよ。

 俺は颯爽と歩くフーカさんの後に続く。

 ドギューズの警護が少しばかり気にかかるがコラスならまあ大丈夫だろう。

 ちらりとコラスの方を振り向くとやっこさんはニコニコしながら頭上で両手をくっつけて丸を作った。そんなのどこで覚えてくるんだよ。

 フーカさんは迷いなく闘技場を出る。

 

 「うおっ!こいつは」


 フーカさんが停めていた魔導車はなんとピックアップトラックタイプの車だったのだ。

 

 「どうです?ジミーさんに伺った後方が屋根の無い荷室になっているタイプです。カッコイイでしょ?」


 フーカさんは自慢げな顔で言うが、以前に俺が話したのは軽トラの事だったんだけどね。

 

 「マジ、カッコイイよ。波乗りの板を持って歩くに丁度良いからカティス波乗り組合に話持って行けば面白いかもよ?」


 「実は共同開発でして。ロング板でも載せられるように運転席の上にキャリアを設置してるのも、荷台の材質を防水性が高く錆びにくい物にしているのも波乗り組合さんの意見を取り入れてなんですよ。他にも、砂まみれのまま座っても汚れにくい材質の座席、砂地に強い足回りなどなど波乗りを強く意識した仕様になっています」


 「おおう」


 カーディーラーの営業さんみたいな事を言うフーカさんに俺は拍手をする。

 ふふんと胸を張るフーカさんだったが、ここに来た目的をすぐに思い出したか荷台のあおりを開いた。

 荷台には沢山の蓋つきコンテナが置いてある。


 「これとこれとこれ、持てますか?」


 荷台に乗ったフーカさんは大きなコンテナ三つをパズルゲームのように入れ替えて後方に持って来た。

 コンテナひとつが人ひとりすっぽり入れるサイズで、こりゃ身体強化を使えない人間じゃ三ついっぺんに運ぶのは骨が折れそうだ。


 「いけるっちゃいけるよ」


 俺は深く呼吸し体内に魔力を循環させて答えた。


 「冗談ですよ、これを使って下さい」


 フーカさんは笑いながら台車をとりだして俺に寄こした。


 「もう、勘弁してよ~気合入れちゃったよ」


 台車を受け取り広げながら俺は返す。台車はしっかりしているのに軽い材質でこりゃあ一般に売り出しても売れるぞと俺は思う。


 「今、商売人の顔になりましたね?その台車だったらすでにランラート男爵経由でケイトモさんで販売してますけど?」


 「うっそまっじ?知らんかった」


 俺は台車にコンテナを積みながら返す。


 「たまにジミーさんが言う、直接の経営は任せっぱなしって謙遜でもなんでもないんですねえ」


 「そりゃそうよ、そのまんま言ってるんだから。しっかしこの台車、いいねえ。丈夫なのに軽いし、タイヤの回りもいいし」


 「なに言ってるんですか。うちの所蔵品の中からジミーさんに教わったテクノロジーも入ってるんですからね」


 「そうだっけ?」


 「まったく、普通だったら自分の手柄は忘れず、して貰った事は忘れるのが人なのにジミーさんは逆なんですよ」


 「そうかねえ」


 俺は荷物満載の台車を押しながら答える。そんな風に考えた事が無かったから良くわかんないけど、もしそうなならこっちに来たおかげだな。

 こっちに来てから多くの人から色んなことをして貰ったからなあ。

 なぜなんだろうな、前世と何が違うんだろうなってたまに思うよ。

 魔法が使える事なんて結局些細な事なんじゃないかって、たまに思うんだよな。

 前世でも、今の世界みたいに多くの人と知り合って助け合い理解し合おうと歩み寄り、大好きな仲間達とやりがいのある事をして生きるような道があったんじゃないのか。自分の考え方や行動ひとつでそうする事ができたのかも知れないって、そんな事を思う事もあるんだよな最近は。

 人の質だって実はそんなに変わらないんじゃないかな。

 ただ、俺が前世では人を見ようとしてなかっただけなのかなって。

 まあ、そんなのもすべては過ぎた事で今更考えても詮無い事なんだけど、それでも考えちゃうんだよな。


 「ちょっとちょっとジミーさん!どこ行くんですか!前にクランケルさん達がいますよ!」


 思考が勝手に走っちゃってたせいか前にいるクランケルとヤスミーナさん達の姿が目に入らなかったよ。

 

 「おっととっと夏だぜ」


 俺は満載の荷物をこぼさないよう気を付けながら台車の進行方向を急に変える。


 「もう、なに言ってんですか」

 

 フーカさんにツッコまれながら俺はクランケル達に近付いた。よく見りゃフーカさんも大きな袋をふたつ、両手に下げてるよ。こりゃあ、結構な大荷物だよ。


 「お待たせしましたー。皆さん、お揃いですかー?」


 「ええ、現在警備に入っている方を除いて関係者には皆、集まって頂いてます。それより、まずはフーカさんより説明をお願いします」


 「そうでしたそうでした、では早速ですが私はボンパドゥ商会連合の研究主任フウ・フーカと申します、皆さんにお集まりいただいたのは他でもない……」


 フーカさんは立て板に水に調子で今回の意図を説明し始めた。なぜ故に物騒なのかは昨今の情勢から上手い事つじつまを合わせたのはさすがフーカさんと言った所。とにかく、最近物騒なので念のため防御を固めましょう。そして、その防具はボンパドゥ商会連合が無料で提供しますよ、その代わりにモニターさせて頂くのと使用後アンケートを取らせて下さい、という事なのだった。

 

 

 「では助手さん、ボックスを開けて下さい」


 「ういっす」


 俺は言われた通りに台車から箱を降ろし蓋を開ける。


 「きゃっ!カワイイっ!」

 「なになに?これなに?」

 「これがいいっ!」

 「うっそ?これも防具なの?」


 フルポアの女子達が一斉に群がって来る。お嬢さん学園だと思ってたけど、こうしてみると普通の子と変わらんな。しっかし、お嬢さん達の言う通り箱に入っていたのはどう見ても防具には見えない服ばかりだ。

 白地に赤い糸で花柄の刺繍が入ったスモックブラウス、フリンジのついた幾何学模様のストール、さっぱりした生成りのバルーンスリープシャツ、ヤグートライバルが刺繍されたフリンジベスト等々、まるでエスニック雑貨屋さんに置いてある服飾品のようだった。


 「こちらが小物になります」



 そう言ってフーカさんは両手に持っていた大きな袋を広げ中身を出す。

袋の中身は波乗り板のマークが入ったサファリハット、麻っぽい素材に見えるカラフルなとんがり帽子、ターコイズっぽい飾りがついたワッチキャップ、房飾りのついたポシェット、ターコイズっぽい石のついたブレスレットや指輪、革っぽい見た目のバングル等々、こちらも服に負けず劣らずエスニック雑貨屋臭がプンプンする。

嫌いじゃないのよねえ、こういうの。

どうやらフルポアの女子生徒達にも好評らしく、まるでバーゲン品に群がるマダム達のようにワイワイキャッキャとボンパドゥ製新防具を手にしたのだった。


「それでは早速、身に着けさせて頂きますね」


自身も手にニュー防具を持ったヤスミーナさんはニッコリ笑顔でそう言うと、警備係の女子生徒を連れて一旦この場を離れるのだった。


「それでは私はコラスさんと合流しますね」


「コラス達はどこ行ったんだ?」


俺はクランケルに尋ねる。


「ドギューズのメンバーと一緒にロッカールームに行ってます。作戦会議をしているそうですよ」


「そっか、俺もすぐに合流するよ」


「ええ、では後ほど」


 クランケルはそう言うとクールに去って行った。


 「やっぱりちょくちょくジミーさんのところに顔出しておいた方が良さそうですね」


 「なんでよ?」


 俺の顔を覗き込むようにして言いうフーカさんに俺は尋ねる。


 「だって、いっつも何かしらに巻き込まれてるじゃないですか。最新の情報を手に入れるにしても試作品のテストをするにしても新製品のヒントをつかむにしても、なんにしてもジミーさんのところに居れば事足りるんですからね」


 「んなわきゃないって。フーカさんが来た時にたまたま偶然重なっただけっしょ。むしろフーカさんにそっち系の運があるんじゃないの?」


 「私ですか?えーーー??私がー?そりゃないと言いたいとこですけど、思い返せばボンパドゥに入ったきっかけも……」


 俺の戯言にフーカさんが本気で考えこみ始めた。ううむ、フーカさんがボンパドゥに入ったきっかけも気になるけど、それを尋ね始めたらきりが無さそうだから敢えて俺はツッコまないでおく事にしたのだった。


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