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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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応援の力って素敵やん

 「軽く練習できっかな?」

 「いや~無理くない?」

 「そーそー、まだ準備中っしょ」

 「じゃじゃじゃあ、手伝わないと」

 「練習したほうがみんなのため」

 「どうだろね?聞いてみよっか?」

 「メイが頼めば一発じゃない?」


 部員たちは列車が爆破される寸前だったとはつゆとも知らず、いつもの如く騒がしくボルグスク駅に降り立った。

 ケイトが部員たちを先導し、俺、コラス、クランケルはそれぞれ分散し周囲を警戒する。

 駅には人があふれているが、半分以上はファルブリングとフルードポアリエの学生だ。

 なんか、フルポアの女子とうちの男子が妙に仲良くやってるような気がするが。

しかし、良く考えてみれば共学校と女子高で合同文化祭なんておかしな話だよな。

スプレーンが俺を陥れるために強引に企画したのだとすれば、ご苦労様としか言いようがないね。

しかも、モミバトス教右派なんて面倒くさい連中まで参戦させてからに収拾つくんだろうな?

キワモノ同士で喰いあっててくれよ。


 「うわー、めっちゃ並んでるんですけどー」


 みっちょんがダルそげな声を上げる。

 

 「うわっ、マジですげーな。これ全部ボルグスク行きかよ?」


 馬車乗り場の行列を見て俺も思わず声が出ちゃう。


 「ほとんど学生ですね。どうします?歩いていきますか?」


 ケイトが皆に言う。


 「練習がてら軽く流して行く?」


 「行っちゃう?」


 メイが言いベーヤンが答え他のメンツも賛成と頷いた。結構な荷物を持ってるのに大したものだよ。


 「よーし!行くぞ!」


 「「「「「「おう!」」」」」」


 マーが声を上げ部員が答える。


 「ファブカレー!ファイ!」


 「「「「「「おうっ!」」」」」」


 キャプテンのマーが先頭に立ち大荷物を持ったままジョギングを始める部員達。


 「気合が入ってるじゃ~ん」


 「感心しとる場合ちゃうぞ、警護せんと。ほれ、見れ」


 ほわーんとして言うコラスに俺は、一緒に走りだすケイトとクランケルを指差して指摘する。


 「飛んでっちゃえばいいんじゃない?」


 「それじゃ目立つだろ、ほれっ、行くぞ」


 俺はコラスの背中をポンと叩き走って後を追う。

 軽く流すとか言ってたけど、なかなかどうして結構しっかり走っとるじゃないのよ。


 「ホントに走ってるの?もう、クルポン真面目だなあ」


 後ろから声がして振り返るとコラスは地面からちょっとだけ浮いて地面の上をスイーーっと滑るようにしてついて来た。


 「お前、それじゃあ目立つだろーが」


 「えー?そー?じゃあ、これでどう?おいちに、おいちに」


 コラスは気の抜けるような掛け声と共に走っている様に手足を振りだした。


 「そこまでして走りたくないのか」


 「うん」


 にっこり笑って答えたコラスはギクシャクと手足を動かしながらスイーーっと移動し、前を走る部員たちの真横についた。

 お前は昔のスポーツバラエティー番組に出てた伝説の陸上選手を模したランナー人形か!

 コラスが入って来た事でクランケルは列の先頭へ付いたので俺はしんがりを務める事にする。

 ケイトの先導で、馬車がひっきりなしに通る大通りを避け裏路地に入る一同。

 どうやらケイトがボルグスク円形闘技場までの道を心得ているようだ。

 人通りの多い場所を避けたのはケイトらしいナイスチョイスだが、さすがに列車内であれだけやっといてすぐにはないだろう。

 と思ったが良く考えてみたら列車内で部員の飲み物に毒を入れた奴ら、あいつら列車が爆発したら巻き込まれる危険性が高いのにそれでもだめ押しに来たんだもんなあ。

 それを考えると油断はできんな。

 

 『カキン』

 

 軽い金属質な音がする。先頭を走っているクランケルが蹴りを終えて着地する姿が目に入り、ほぼ同時に建物の壁に当たった何かが地面に転がった。

 俺の足元にそいつが転がって来る。

 それは棒手裏剣のような先のとがった金属棒だった。

 

 『ブ~ン』


 硬質な羽音と共にハエが黒雲のように固まって飛び俺らの頭上を覆う。


 『ボス』

 『ポトン』


 鈍い音がして黒雲のようなハエの塊から棒手裏剣が落ちてくる。どうやらコラスの呼び寄せた虫の塊が頭上から来た棒手裏剣を受け止めているようだ。


 「どんな虫だよ」


 俺は呟きながらゲイルで路地を構成している建物の屋根に飛ぶ。

 屋上から逃げて行く複数の人間の影。

 下手に追わぬほうがいいか。

 俺はすぐに列のしんがりに戻る。


 「ど~だった~?」


 コラスが奇妙な動きで俺のところに来て呑気な口調で尋ねる。


 「逃げてったよ」


 「ふ~ん、じゃあ、また来るねえ」


 コラスはそう言ってまた元の位置に戻って行った。え?また来るってコラスが?それとも敵が?微妙なイントネーションだったからどっちとも取れるんですけど?

 いずれにしても警戒はしなきゃだぜ。

 俺は周囲の気配に気を配り続ける。

 広範囲に気を配り続けるのはとてもしんどい作業だが、今回はコラスとクランケルがいるので俺がカバーすべき範囲は限られている。

 縦に伸びる部員たちの列、上空のあちらこちらにいるハエはまるでアメーバーのように蠢き上空からの攻撃を遮っている。

 俺はと言えばコラス、クランケルががっちりガードをしてくれているので後方からの攻撃だけに集中すれば良いので楽なものだ。

 

 「ホイ、ホイホイホイっと」


 路地を構成している建物の二階や三階の窓から急に投げつけられる棒手裏剣や火魔法、氷魔法を俺は空気弾で粉砕していく。

 

 「ファイ!」


 「「「「「「オッ!!」」」」」」


 「ホイホイホイっと」


 「ちょっと~ジミっち~、気が抜けるような掛け声やめてもらえる~?」


 「しゅんましぇ~ん」


 俺はみっちょんに謝りながら火魔法を空気弾で破壊する。


 「ファイ!」


 「「「「「「おっ!!」」」」」」

 「おう!」


 俺はみんなの掛け声に合わせる。

 声を出さないと気合が入らないがみんなの掛け声に合わせてだと、どうにもタイミングがギクシャクしてしまうよ。敵がこっちの掛け声に合わせて攻撃してくれればいいのに。

 しかし、こうやって街中を敵の攻撃をいなしながら進んでいるとハティちゃんとオウンジさんの警護を思い出すよ。スーちゃん元気でやってるかな?こっちに来る前、随分あちこちで活躍してると風の噂で聞いたけども。

 なんて感傷にふけってる暇はない。

 たまにいい加減、腹に据えかねて攻撃して来た奴をゲイルで追っかけるも逃げ足が速い事速い事。

 下手に深追いしてる間に別の奴が攻撃して来たんじゃ敵わないから結局また元の場所に戻るしかない。

 こっちの攻撃を当ててやりたいけど、とにかく向こうは素早い一撃離脱作戦を崩さないのでどもこもならん。

 コラスを見れば鼻歌交じりでハエの群れを操ってるし、クランケルにしてもベーヤン達と雑談しながら敵の攻撃を迎え撃っている。カリカリしてるの俺だけか?

 う~む、まだまだ修行が足らんなあ。

 よく見りゃコラスの奴はハエの盾で威力を殺した物理武器を回収しクランケルに投げ与えていた。

 受け取ったクランケルはそれでもって敵の攻撃を迎撃しとる。

 器用な事してますねえ~。

 とても俺にゃあ真似できん。

 俺は俺、人は人。コツコツやろう。

 

 「お!ファルブリングの選手かい?頑張れよー!」

 「応援してっぞ!」

 「明日は見に行くからなー!」

 「頑張れよー!」


 ファイ!オー!と掛け声をかけながら走っているとボチボチ応援の声をかけられるようになってきた。

 声援の数に比例して攻撃の手が薄くなってくる。

 こりゃ、チャンスだな。


 「ありがとうございます!ありがとうございます!ファルブリングカレッジでえございます!ボルグスクの皆さまっ!お世話になっております!ファルブリングカレッジでえございます!あっ!お父さんご声援ありがとうございます!そちらのお母さんもご声援ありがとうございます!ファルブリングカレッジでえございます!」


 俺は声援を送ってくれる街の人に笑顔で声をかけ手を振る。


 「お?なんだなんだ?」

 「明日の闘技場のやつみたいよ」

 「お!ベリンボール娘か!頑張れよ!」

 「応援するからなー!」

 「「「頑張ってーー!」」


 オジサンおばさん子供達、老若男女問わず多くの人がこの騒ぎに集まりドギューズのメンバーへ熱い声援を送ってくれる。

 けっけっけ、どうよこの人集め作戦。

 これだけ人目があったらそう簡単に攻撃できまい。


 「やるねえ~クルポン。あいつら顔出さなくなったよ~」


 「後ろ暗い奴が顔出しするにゃあ、この通りは明るすぎるって事さ」


 俺は通りに集まり声援を送ってくれる人達を見てコラスにそう言った。


 「渋っ!クルポン渋すぎる!惚れちゃうかも~」


 コラスがニコニコして言う。


 「よせやい、照れるぜ」


 俺の中のオヤジがそう答えた。


 「にゃはははは~クルポンはおもろいなあ~」


 コラスは気の抜けた笑い声を上げて俺にそう言った。


 「おっと!ファンにサービスしないと!ほらっ!コラスも笑顔で手を振って!クランケルも!早く」


 「ふわ~い。皆さん、ヨロピクね~~」


 コラスは乗りよく答えてくれる。


 「え?私もですか?」


 「あったりまえじゃな~い。ほら、女の子達が手を振ってるよ~返してあげなきゃ~」


 コラスがクランケルに言う。


 「あ、はい。なにとぞドギューズをよろしくお願いします。皆さまのお力でドギューズを勝たせてやってください。皆さまの声援が我々の力になります、なにとぞ、なにとぞドギューズを男にしてやってください」


 「ぷぷぷぷぷぷっ!なにそれ~?クランケルちゃん?ドギューズは女の子のチームだよ~?どこでそんなの覚えて来たの~?」


 「え?以前港町にいた時に荷降ろしの利権争いで商会主が言っていたので真似したのですが…間違ってましたか?」


 笑って問うコラスに大真面目な顔でクランケルが答える。港湾利権ってそういうのなの?まるで選挙じゃん。


 「あっはっはっはっは、それは違うねえ~。でもみんな受けてるみたいだしいいんじゃない?」


 コラスが建物から顔を出してコロコロと笑う若い女の子達を見てそう言った。

 ま、喜んでもらえればそれが正解だ。


 「ありがとうございます!明日、円形闘技場で皆様のお越しをお待ちしております!円形闘技場で君と握手!」


 敵襲もすっかり止んだようだし、俺は目一杯愛想を振るまくのだった。


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