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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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1199/1222

無知は至福って素敵やん

 コラスとクランケルという強力な助っ人ができた俺は文化祭当日を迎える事となった。


 「おはよーさん、ふたりとも」


 朝起きた俺は食堂で談笑するクランケルとコラスを見つけ挨拶をした。


 「おはよーん」

 「おはようございます」


 軽い口調で挨拶をするコラスといつも通り丁寧なクランケル。


 「クランケルは大丈夫だったんか?」


 「ええ、キーケ先生からは了承頂きました。試合当日は直接警護もして頂けるという事です」


 「そりゃ助かるよ」


 「んでクルポン、今日はどんな予定?」


 「今日は朝イチで列車移動、ボルグスクの円形闘技場までね。着いたら向こうの状況に寄るけど、セッティングが整ってれば軽く練習、出来て無ければセッティングの手伝い。そんな感じかな」


 「なに~?部員がセッティングの手伝いまでやるの~?」


 コラスが俺に尋ねる。


 「まあ、弱小チームだからね。今日までこっちで練習する時間をとって貰えただけでありがたし、ってとこだよ」


 俺は答える。


 「出発までまだ時間はありますか?」


 クランケルが真面目な顔をして俺に尋ねる。


 「なによ?やり残した事でもあるんか?だったらまだ少し時間あると思うから今のうちに済ましときな」


 「そうですか、ではコラスさん」


 俺の言葉を聞いてクランケルはニィっと笑ってコラスを見た。あちゃー、こっちの方だったかー。


 「えー?今からー?」


 「ええ、ダメですか?少しでいいですから」


 「えー、どうしよっかなー」


 クランケルがなまめかしい表情で聞きコラスが焦らすように考え込む。

 なんか別のもんを想像しちゃうからやめとくれ!


 「おいおい、これからどんな刺客が襲ってくるかわかんないのに余計な体力消耗するような事すなって」


 「コラスさんほどの手練れが襲ってくる可能性はありますか?」


 「うっ」


 クランケルに真面目な顔で言われて俺は言葉に詰まってしまう。

 コラスクラスの刺客かあ、そんなもんが来たらこっちもただじゃあ済まねえってーの。それはお前クラスでも同じだし。そんな奴がそうそう現れるとも思えないがそんな事を言えば、またコラスと立ち会うと言って聞かないだろうし、むむむ。


 「おはようございます。本日はドギューズの警護をして下さるそうでまことにありがとうございます。やかましい部員たちですが、仲間思いの誠実な連中です。どうか、よろしくお願い致します」


 俺が悩んでいると良いタイミングでケイト登場。


 「いえいえいえいえ、こちらこそよろしくお願いしまーす!ケイトさんは僕が守る!」


 コラスは軽い調子で答えグッと拳を握る。調子の良いやっちゃでー。


 「お任せ下さい。ケイトさんは監督業に専念されて下さい」


 クランケルは折り目正しい返事をする。どうやらケイトの出現で毒気を抜かれたようだ。さすがはケイト、現れただけでその場の空気を支配する独特の存在感があるよ。


 「いよいよみたいな?」

 「だるぅー」

 「たるんでるぞ!今日は決戦の日だぞ!」

 「マーキャプテン、決戦は明日っす」

 「入れ込み過ぎ。それじゃあ勝てるレースも勝てない」


 部員たちがわちゃつきながらやって来る。

 レースってシーボー、マーは競走馬か?


 「おはよー、ってなに~?ジミっち、いい男ふたり連れてー応援団?気がきいてるじゃーん」

 

 ギャル娘のベーヤンが目ざとくクランケルとコラスを見つけ俺に言う。


 「わわわ、クランケル氏とコラス氏だ。この組み合わせ、マジ、尊い」


 「うそうそうそ!ヤバっ!マジヤバっ!」


 いつもジト目のシーボーとやる気無し娘みっちょんが珍しく興奮気味にそんな事を言う。なに?クランケルとコラスって一部の人間に刺さる組み合わせなの?


 「自分、ドギューズでキャプテンやってますティア・マーシャルです。よろしくお願いします」


 「よろしくお願いします、ってマーキャプテン、何をお願いしてるんですか?」


 こちらも珍しくきりっとした態度で言うマーにツッコミを入れるソロ。


 「あら?ジミ君こちらのおふたりはどちら様?随分いい男じゃない?」


 「ホントねえ、私ももう少し若かったらモーションかけてたかも」


 メイとジンジャーが俺に言う。


 「え~?ふたりとも年下かと思ったけど?てか年下でしょ?ねえ?」


 「そうですか?普通の生徒よりも大人のエレガントさを感じますけど」


 コラスとクランケルが言う。おおー!コラスの奴はいつも通りだけど、クランケルの奴、上手い事言うじゃねーか!いつの間にそんな技を身に着けた?


 「やだー!もう!からかわないでよー」

 「もう、ふたり共口が上手いんだからー」

 「ちょ、お姉たちばっかり、ずるいっしょ」

 「そーそー、うちらにもわけて」

 「待てみんな、ここはキャプテンの私が順番を決める」

 「そんなとこでリーダーシップ発揮されても」

 「そうそう、こういうのは早い者勝ちと言う事で」


 「はい、皆さんおはようございます」


 「「「「「「「おはよーございまーす」」」」」」」


 ケイトの凛とした声に応えワチャワチャしていた部員たちは揃って挨拶をする。おおー!ケイト監督やりますなー。


 「文化祭開催中は多くの人が来場し混雑が予想されます。雑踏による事故やスリ置き引きの発生など会場近辺では思わぬトラブルが起こるものです。そうした事を見越した学園の計らいで、本日は特別にドギューズの警護をお願い出来る事になりました。警護担当のおふたりです。よろしくお願いします」


 「「「「「「「よろしくお願いします!」」」」」」」

 

 ケイトの説明に部員一同声を揃えて挨拶をした。


 「歴史研からコラスでーす。皆さんの事はきっちりお守りしまーす」

 「クランケルです。皆さまの安心と安全をお守りします」


 いつものように調子良いコラスと警備会社の宣伝みたいな事を言うクランケル。信頼と実績、みたいな。

 ケイトには事の次第をすべて話してある。部員達にどう説明するかはケイトに一任したのだが、余計な心配をかけぬようにアントワル・マルギシャスの事は言わなかったようだ。

 まあ、試合も控えているしそれが良いだろうな。

 てなわけで俺達ドギューズとその警護班御一行様は一路ボルグスクの円形闘技場へと向かう事になったのだった。

 

 「ねえねえ、クラっちコラっちって呼んで良い?」

 「あ、それずっこい」

 「まあまあ、みんなでそう呼べば良いという事で」

 「クラっち甘いもの好き?」

 「コラっちは?え?ミルク?やだー、かわいいんですけどー」

 「じゃ、ミルク飲み行こ」

 「クラっちってクール系?」

 

 列車内では女子達が色男ふたり相手にワチャワチャやって楽しそうだ。

 さすがにケイトはふたり共良く知ってるからデレデレしないけどもな。

 

 「そんなに羨ましそうな顔しないで下さいジミーさん。ああして懐いてくれれば警護する側も楽でしょう?」


 「別に羨ましくなんか思ってないやい!」


 ケイトに図星を突かれて精一杯強がる俺。

 まあ、ケイトの言う通り、警護対象が警備する立場の者に懐いてくれるのはやりやすいな。

 

 「まあ、さすがに列車内は大丈夫だろ。逃げ場もないし」


 「……どうなってるんだ!なんで停まらないんだ!」

 「ふっざけんな!さっきの駅に戻ってくれ!大事な商談があるんだよ!」

 「どうなってんだ!私が誰だかわかってるのかね!」

 「何があったんだ!説明を求むぞ!」


 まるで俺に呑気な事を言ってる場合じゃないぞと言わんばかりに、前方車両の方から騒がしい声が聞えてくる。


 「ちょっと行ってくるよ」


 「私も行きます」


 てなわけで俺とケイトは部員達をクランケルとコラスに任せて騒ぎの原因を確かめに行く事にした。


 「何があったんです?」


 俺は騒いでいる人達を遠巻きに眺めている女性に尋ねる。


 「それがさっぱりわかんないのよ。なんだかさっき停まるべき駅に停まらなかったみたいで。乗務員さんもさっきからモゴモゴ言うばかりで要領を得ないし」


 女性は首をひねった。


 「これは何かあるね」


 「ええ」


 ケイトはそう答えると騒いでいる人達を通り過ぎ先頭車両までツカツカと歩いて行った。

 どうするつもりなんだ?ひとまずここはケイトに任せてみるか。


 『コツコツコツ』

 

 「失礼、ファルブリングカレッジでホフス先生の元で働いているケイトと申します。お力になれるかも知れません」


 ケイトは先頭車両にある車掌室と書かれた部屋をノックしそう言った。

 そんなんで聞いてくれっかね?


 「お入りください」


 トビラが開いて車掌のネームプレートを付けた女性が俺たちを招き入れてくれた。


 「おふたりはあのホフス様のお弟子さんですか?でしたら失せもの探しの術もできるのですか?」


 「先生程ではありませんが心得はあります」


 ケイトが答えた。失せもの探し?何が起きてるんだ?んでもってケイトはそんなもん使えるのか?


 「助かりました。時間がありません、おふたりには探して頂きたいものがあります、それは爆発術式具」


 「爆発術式具?」


 俺は思わず聞き返す。

 

 「声が大きいです。先ほど、中央指令センターから連絡が入りまして、この列車に爆発術式を仕掛けた、速度を落とすと爆発する仕組みになっている、と脅迫があったそうです。しかもその犯人は嘘ではない証拠に、今朝動いていた路線安全確認用の無人車両にも同様の術式具を仕掛けたと言うのです。そして、先ほどその無人車両は速度を緩めた所」


 「爆発した、と」


 俺はトーンを落として尋ねる。


 「その通りです」


 「犯人の要求は何なのです?」


 ケイトが尋ねる。


 「それがおかしな事に何も。こちらから聞いてもいずれ話すとはぐらかされると言うのです。この路線はボルグスク止まりですので、もう幾らも時間がありません。どうかお願いします、術式具を探して下さい」


 女性車掌が頭を下げた。


 「わかりました、すぐに取り掛かります」


 言うが早いかケイトは車掌室を出るのだった。


 「おい、ケイト、お前、失せもの探しの術なんて使えるのかよ?」


 「ええ、鱗粉術と精霊術の融合術で多少は。ジミーさんは?」


 「俺は使えないよー。魔力探知や気配探知はできるけども」


 「それではすぐにコラスさんに事情を話して最後尾から探索をお願いして下さい。私は先頭車両から始めます」


 「発見したらどうする?」


 「大丈夫そうな場所に投げて爆発させて下さい」


 「了解!」


 俺はケイトに返事をするとすぐさまコラスの元に向かった。

 コラスは部員達と一緒に食堂車におりミルクを飲んでいた。


 「おいクランケルとコラス、ちょっといいか?」


 俺はふたりを部員達からちょっと離して事情を伝える。


 「マジ?先方さんも仕事が早いねえ」


 「感心してる場合じゃねえぞコラス。お前、探し物は得意だろ?頼むぜ」


 「りょーかーい、んじゃみんなの警護お願いね」


 コラスは軽い調子でそう言って最後尾に向かった。


 『ドンッ』


上の方から花火のような鈍い爆発音が聞える。どうやらケイトがひとつ見つけたようだ。


 「コラスさんではありませんが、先方さんも本気のようですね」


 「粘着質な顔してたもんなあ、あの人」


 俺はマルギシャスの顔を思い出して言う。くせっけにぱっちりした目に大きな鼻、一見すると愛嬌がある色男のようにも見えるのだが、感情的になった時に見える卑しい表情。そしてすぐに感情的になるくせに、普段はクールを気取っているのでうさん臭さがにじみ出ちゃっているのもねえ。自意識過剰なのに自己顕示欲が強い人あるあるで俺としてはうんざりするのよ。


 「クルース君」


 小さな声でクランケル呟く。最近誰も彼もがジミーって呼ぶからちょっと反応が遅れちまったが、クランケルが注意を促したのは人ごみの中をこちらにやってくるふたりの男性だった。

 まったく地味な顔に地味な服装だが、他の乗客を避ける時の身のこなしがちょっと普通じゃない。

 俺とクランケルは部員達を守れるように自然に位置取りをする。


 「ケイトちんとコラっちどこ行ったん?」

 「まさかあのふたりできてるみたいな?」

 「うっそ、ありえんくない?」

 「いや、ふたりとも留学生だし、共通点は多いっしょ」

 「う~ん、ケイトちゃんならありかな」

 「わかる~、しっかりものとちょっと頼りない可愛い系男子、ありだよね~」

 「ううっ、自分はしっかり者男子がいいっす」


 部員たちはしょーも無い話しに花を咲かせている。ったく、なにかっちゅーと恋バナに結び付けるよなー。

 ふたり組の男はこちらに接近する。

 

 『ドンッ』


 割合近くで音がして乗客の視線が窓に集中する。

 男ふたりは懐から出した物をソロとマーの飲み物の入ったグラスに素早く入れ自然に遠ざかった。

 それ以上の事はしそうに無かったため俺とクランケルは男二人を見過ごす。

 クランケルは男二人の後をつけて行ったので、俺はふたりに近付きよろめいたふりをしてグラスをひっくり返す。


 「おっと、スマンスマン」


 俺は謝罪するが倒れたグラスからこぼれた液体からはもうもうと煙が上がった。


 「うおっ!なにやってんだってなんじゃこりゃ?」


 「う~、もうカッコつけてアイスコーヒーなんて頼まないっす」


 顔をしかめるマーと驚いてとんちんかんな事を言うソロ。

 

 「ありゃー、ごめんなさいねえ」


 俺はカウンターの向こう側にいる店員さんからタオルを借りるとテーブル上で湯気を上げてる液体をキレイに拭きとった。


 「店員さんちょっと」


 俺は店員さんに、さっき通り過ぎた客がいたずらか何かで変なものをグラスに入れたみたいだ、危ないものだといけないから密閉できる袋に入れて処分しといて、とお願いした。

 店員さんは複数回頷くと、テーブル下から半透明の袋を出しタオルを入れるとしっかりと袋の端を結んだ。


 「どうだった?」


 俺は涼しい顔して帰ってきたクランケルに尋ねる。


 「窓の外に捨てました」


 クランケルは表情一つ変えずそう答えた。


 「マジか」


 「見てたよクラっち~窓からゴミ捨てちゃダメだよ~」


 驚く俺に続いて軽い声で言いながら食堂車に入って来たのはコラスだった。


 「お疲れ様です」


 クランケルが言う。


 「いや~疲れるような事はしてないけどね~。おっと、また見つけちゃたみたい」


 コラスはそう言って食堂車のカウンターの向こう側に入って行く。

 

 「ここ開く?」


 「え、ええ」


 コラスに聞かれて店員さんが頷く。


 「開けて貰って良い?」


 「でも、この下は地面ですけど」


 「うん、それでいいのよ~」


 コラスはのほほんとした調子で答える。


 『ドン』


 鈍い爆発音が響く。


 「ほら、早くしないと」


 「はっ、はい」


 爆発音の後に促された店員さんは慌てて床を開いた。

 

 『ゴトンゴトンゴトンゴトン』


 列車の外の音が直接入って来る。


 「ちょっとゴメンねえ」


 コラスは車両の下に首を突っ込む。車両の下に何か黒光りしたものが蠢いたのが一瞬見えた。コラスの操る虫か何かだろうがあまりしっかりと見ると食欲が失せそうだから見ないようにする。


 「あったあった。もう閉めていいよ~。ちょっと御免なさいよ~」


 コラスが手に円盤みたいなものを持ってカウンターから出てくる。


 「なになに?なにそれコラっち?」


 みっちょんがコラスに聞く。


 「えー?これー?これはねえ花火」


 そう言ってコラスは窓を開け円盤を空に向けてぶん投げた。

 円盤はすさまじい勢いで空に向かって飛んで行き、上空高くで一瞬光った。


 『ドン』


 鈍い音が聞えてくる。どんだけ高くぶん投げたんだよコラスは。


 「さっきから鳴ってたのこれかー」


 ベーヤンが納得した顔をする。


 「なんでコラっちは花火鳴らしてるの?」


 シーボーが可愛らしく小首をかしげて聞く。こいつ、俺にはそんな姿絶対見せんのに。


 「え~?なんかドギューズの応援に用意したらしいんだけど、あっちこっちに転がっちゃったんだってさ。そんじゃ続きがあるからまったねー」


 コラスはそう答えて次の車両に移った。上手い事言うじゃねーかコラスの奴。


 「ううむ、コラスさんはこう言う事態になれておられますね」


 「女の子の扱いにゃ慣れてるからねえやっこさんは」


 「学ぶべき所です」


 「あれはマネしなくていんじゃね?」


 俺は真面目な顔して言うクランケルにそう言っておいた。

 クランケルはそのままでいて欲しい。女性慣れしてなくてもいい、逞しく育ってくれ。

 それから自分達の席に戻り警戒を続けたが、ドンと音がするたびに部員たちが連続してなきゃ意味なくない?と爆笑するだけで敵の襲撃はなかったのだった。

 

 「さすがでしたね、こちらが先でしたのに」


 「いやいや、ケイトちんも早かったよ~。こっちにあんまりなかっただけでさ~」


 ケイトとコラスが戻って来た。


 「花火打ち上げごくろーさまー」

 「どーせなら連続で鳴らして欲しかったぁー」


 みっちょんとベーヤンが呑気な事を言う。


 「ごめんねー、やっぱ素人じゃ上手く行かなかったよ~」


 「まあまあ、サプライズって事で良かったんじゃない?」


 コラスの返答にメイが大人の発言をする。


 「で?どうだった?」


 俺はケイトに尋ねる。


 「ええ、全て発見し投げ捨ててやりました。車掌さんから指令センターにも連絡して貰いましたよ」


 「じゃあ、解決ね」


 俺は聞く。


 「ええ、通過した駅も二駅だけで済んだそうです。まあ、それでも降りられなかった乗客への対応は大変そうですけどね」


 「ああ、怒ってる人いたもんねえ」


 「次の駅に速馬車を用意しているみたいですよ」


 「速馬車とは奢ったねえ」


 速馬車ってのは客を乗せる荷台が狭く載せられる人の数が少ない代わりにスピードが出せる馬車だ。

 まあ、言ったらスポーツカーのタクシーって感じかな。

 前世じゃ映画かゲームにしか出てこないような奴だよな。やーやーやーやーやーっ!!


 「列車運営サイドとしては、この損害をどこに請求したもんか悩みどころでしょうね」


 「あちゃー犯人の仲間、外にほっぽっちゃったよ」


 俺は顔をしかめて小声で言う。


 「いいんじゃないんですか?どうせ繋がりを示すものは何も持っていないでしょうし、下手につつけば自害するか謎の死を遂げるか、とにかく外に投げたのは正解ですよ。後味悪い思いはしたくないですからね」


 「そう言って貰えると助かるよ」


 俺はケイトに言った。

 部員たちはコラスやクランケルとわちゃわちゃしていて何が起こったのか気づいてないみたいだ。

 呑気なもんだよと思わないでもないが知らぬが仏とも言うしな、これでいいのだ。

 次の駅で血相を変えた人達が凄い勢いで下車していった以外、特段変わった事もなく列車は目的地であるボルグスクへ到着したのだった。


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