おっかながりって素敵やん
「前にこうやって地下に落とされた時はさ、なんとか地下墓地に出れたから良かったけどもさ」
地下を歩きながら俺は何とはなしに口にする。
「地下墓地っすか?良かったってなんでっす?気味悪くないっすか?」
ムジーカが食いついて来る。
「人が作ったもんがあれば出入口も必ずあるって事じゃん」
「そっすかねえ?必ずとは言えないと思いますけど」
ぐぬぬ、この野郎。生意気に食い下がりやがって。でも、正論なだけになにも言えん。
「もう、勢いで聞いてくれよその辺は」
「ちょっと良くわかんないっす」
「ありゃりゃ」
俺はズッコケて見せるがムジーカはキョトンとしている。どうもこいつはツッコミってもんを知らんらしい。
一瞬俺はツッコミ文化を流行らせたろうかなと思ったがすぐに思い直す。
前世で昔、素人が流行りのお笑い芸人の下手な真似をして乱暴で雑なツッコミをするってのが蔓延していた時期があった。人のシャツを破いたり、車道に突き飛ばしたり、ビンタをしたり、持ち物を投げ捨てたり、とにかく雑でただひたすら迷惑な行為を面白いと勘違いしている人が多く出没して往生した記憶があるのだ。
あの頃、俺は強く思ったのだ。
お笑い芸人さんがやってる事ってのはプロレスラーの試合と同じで、普段から鍛えているその道のプロが身に着けた知識と技術を駆使して仕事として人
に見せているのであって、知識も技術も鍛錬も覚悟も無い素人が不用意に真似をするのは危険であると。
てなわけで不用意に広めるのは怪我の元なので、お笑いをビジネスにするのなら良く考えてやらないとなと思い直したのだった。
「うん?なんだ?ここを掘るのか?」
のそのそと歩いていたアースドラゴンのビビちゃんは、突然ストップし地下の壁をその大きな爪でゴリゴリと引っ掻き出した。それを見たシエンちゃんが優しい声をかける。
「ふぐっんぐっ」
「そうかそうか、だったら我も手伝うぞ」
ビビちゃんの唸り声にそう返事をし猛然と壁を掻きだすシエンちゃん。
「まるでモグラっすね」
「ビビちゃんと対等に話してるのも凄いよね」
俺とムジーカは感心することしきりだった。
ビビちゃんとシエンちゃんはモリモリと壁を掘り進む。
アルスちゃんは掘って出た土石を魔法で圧縮しトンネル外壁の補強をする。
俺たちはひとりと一匹が掘った馬車も通れそうな地下通路を歩く。
地下通路は上り坂になっており緩いカーブを描いていた。
ビビちゃんには厚い地層の先にある物が感じ取れているんだろう。さすがアースドラゴンと呼ばれるだけの事はあるな。
そうして凄まじい勢いのトンネル掘削工事部隊に続いて歩いているとビビちゃんの掘り進む速度が急に落ちた。
「お?もうすぐなのか?もうすぐなのだな?」
「ぐっぐっぐ」
「どうやら地上まであと少しのようだ。上に出てすぐ何かに襲われないように慎重になっておるようだから、我がまず出て安全を確保しよう」
「俺も行くよ」
俺はシエンちゃんに言う。
「うむ、では気配を消して慎重にな」
「了解」
俺は呼吸を整え、できうる限り気配を薄めてシエンちゃんに続く。
シエンちゃんは抜き手で前方の壁をサクサク掘るとボロリと崩れ外の光が中に入って来た。
俺とシエンちゃんは抜き足差し足でそっと外へ出る。
外はまばらに生えた木々の中にポッカリと開いた空き地であった。
周囲の気配を探るが大型魔物の気配や殺気は感じないし、木々の密集度は低いので目視でもある程度は見通せるので目視でも危険な生き物は見えない。
「いいぞ」
シエンちゃんが地下に向かって声をかけると、ビビちゃんが大穴を開けて外に出てきてその後にシャスカとムジーカ、そして最後にアルスちゃんが出て来た。
「どうやらここは城の敷地の外らしいな」
浮き上がったシエンちゃんが上空から俺たちに声をかける。
「ほんじゃあアルス、そこの穴を塞いどいてくれるか?地下の魔物が外に出てきたら大変だからな」
浮いていたシエンちゃんが降りて来て言う。
「どうでしょう、いっそ地下の魔物をアロンゾ伯爵へ差し向けては?」
「どういう事よアルスちゃん?」
にっこりとして物騒な事を言うアルスちゃんにその真意を尋ねる。
「つまりですね、ビビちゃんのお力を借りてお城の大広間まで通路を作って貰うんです。それから地下の魔物を誘導して城内で大暴れして貰うと言うのは如何かと」
「そりゃ面白いな。いっちょやるか?」
「ぐっぐっぐっぐ」
「ビビもやる気になっとるぞ」
シエンちゃんがビビちゃんを見て言う。
「よし、それじゃあ早速取り掛かるか」
シエンちゃんはそう言うとビビちゃんと共に今一度地下に戻って行く。
俺たちも後に続く。
ビビちゃんはある程度元来た通路を戻ると突然立ち止まり、舌を盛んに出し土壁に鼻先をこすりつけた。
「あらあら、固めてしまったからわかり辛くなってしまったみたいですね。ごめんなさいね」
アルスちゃんはそう言って優しく土壁を撫でた。
ビビちゃんはクンカクンカと土壁に鼻先をこすりつけると猛然と引っ掻き出した。
シエンちゃんも加わり掘り出しアルスちゃんも土の処理に参加しトンネル掘削部隊が再結成される。
ワシワシと掘り進むことしばし。
「ほうほう、ここの上が広い場所になっとると。良し、ご苦労だったなあ」
立ち止まって土壁をフガフガするビビちゃんにシエンちゃんが優しく言う。
「では、ビビちゃんは先に逃がしてから魔物を誘導しますか」
アルスちゃんが言う。
「いや、どうやらこいつも伯爵に喰らわしたいようだぞ」
「フッフッフッフ」
鼻息荒いビビちゃんを撫でながらシエンちゃんはニヤリと笑う。
それから俺たちは地下洞窟まで戻った。
「どうやらビビが魔物を煽ってくれるようだから、我らは障壁魔法で防御しながらついて歩こう」
「ビビちゃんは大丈夫なの?」
俺はシエンちゃんに尋ねる。
「この地下にビビを傷つける事ができる魔物はおらんよ。仮にもドラゴンの名を冠する魔物だからな」
シエンちゃんはふふんと胸を張り言う。
「じゃあ、頼んだぞビビ」
シエンちゃんが言いビビちゃんの腹を軽く叩く。
「シュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥパッパッパッパッパッパパパパパ」
ビビちゃんはすくっと立ち上がると両手を動かしながら威嚇時とはまた違った唸り声を上げる。
大きな鉤爪のついた両手を回転させるように動かすとヒューヒューと風を切る音が聞える。
どうやら、この風切り音と唸り声で他の魔物を刺激するようだ。
「皆、障壁魔法は使えるか?」
「申し訳ないですが、長時間は」
「自分もっす」
「俺も長い時間はちょっと自信ないカモ」
シャスカ、ムジーカに続いて俺も手を挙げる。
「トモトモはトレーニングだと思って頑張って下さいね。無理そうならすぐにわたしのところに来て下さい。でも、まあ、トモトモならトビガゼ以外は問題ないと思いますけど」
「いやあ、下手に争って数を減らしちゃうのはもったいないからねえ。持続でき無さそうだったらアルスちゃんに甘えさせて貰うよ」
「うふふ、なるべく頑張って見て下さいね」
「早速、お出ましだぞ」
笑顔で言うアルスちゃんに被せるようにシエンちゃんが言う。
ムジーカとシャスカはアルスちゃんの元に寄り、俺は呼吸を整え魔力を練って障壁魔法を発動させる。
俺が使える障壁魔法は風魔法の応用でつくるエアカーテンタイプと光と雷の応用でエネルギーシールドを作るタイプの二種類だけだ。
飛行中は飛行魔法が風魔法な事もありエアカーテンタイプを使っていたが、それだけじゃあいざという時に心もとないと言うのでアルスちゃんから新たに教わったのが光と雷を混ぜたエネルギーシールドタイプだった。
今回みたいな時は後者で行く。
うちのメンツやサーヴィングのおとっつぁんみたいな手練れクラスになると、戦闘中にピンポイントでこの手の
障壁を発生させてダメージ軽減を図ったり逆に敵にダメージを与えたりしてくるのでおっそろしい。
しかも、俺にはできない別の障壁の張り方もあるってんだからなあ。
アルスちゃんなんかはどうやら重力を操ったり、理論的な事はさっぱりわからなかったけど磁場とかプラズマ的なものを駆使して障壁を作れるみたいでもうそうなると俺にはさっぱりである。
とにかく俺はエネルギーシールドを張る。
『ガサガサガサガサ』
『キシャンキシャンキシャンキシャン』
『ズルズルズルズル』
なんとも背筋が寒くなるような音を立てて暗闇から禍々しい魔物達が姿を現した。
例のアナンタやトビガゼは勿論、地下ではお馴染みデカゴキそれにデカネズミも行列でやって来た。うわっ、トビガゼと合わされば寄生虫伝染病ダニの厄介三点セットの出来上がりだ。
他にもニシキヘビサイズのムカデやヤスデだの大型犬サイズのザトウムシうやカマドウマだの、気色悪い虫系魔物大集合でとってもエグイ光景だ。
しかも、そんな奴らが俺の障壁をカリカリやってまとわりついてくる。
「うひー、こんなん障壁破れたらえらいこっちゃでーー」
「うふふ、頑張って下さいね」
アルスちゃんはにこやかにそう言った。ふひぃ~、こうなったら気合入れて継続させるっきゃねえ!
俺はとにかく呼吸をしっかり深く意識し、魔力を丁寧に体内で回して行く。
すると俺の障壁をに群がっていた虫系魔物がとたんに数を減らした。
「お?随分魔力を練ったなあトモちゃん。そんなに外に漏らしてると虫けらなんぞは近づけないが、大きい奴を刺激するぞ?」
シエンちゃんが言う。
「マジで?」
『ガッキィィィィン!』
問い直す俺の言葉に被せるように障壁に何か固くて質量のあるものがぶち当たり凄い音をたてた。
何事かと見ると真っ赤な目をした巨大な猿のような魔物がこちらに向かってパンチを繰り出していた。
「ななな、なんすか?やめてくり~」
俺は慌てて巨大猿に懇願する。
「なはははは!そいつはイタクァ、風と冷気を操る魔物よ。面白いのが懐いたなあ」
「懐いてないでしょ!絶対怒ってるっしょ!」
俺はシエンちゃんに抗議をする。
「うふふ、トモトモから漏れ出ている魔力に熱を感じ興奮しているんですよ。もう少し絞られるとよろしいと思いますよ」
アルスちゃんに言われて体内循環させている魔力の量をセーブする。本当は沢山循環させながら外に漏らさない練習をした方が良いんだけど、こいつのパンチもんのスゲーんだもんよ。おっかねーから簡単なやり方で勘弁して貰おう。
「ふしゅぅぅぅうっぅぅぅ」
イタクァは口から白い息を吐くと地面を滑るように移動して行った。よく見りゃ足が少し浮いてますやん。
空中移動してるし通った地面には霜が降りてるしとんでもねえ魔物だなこいつ。
「こりゃ派手なパーティーになりそうだな」
シエンちゃんが笑う。
「大丈夫ですかね?伯爵を殺してしまう事になるのでは?」
シャスカが心配そうに聞く。
「やり口から見て臆病で神経質な奴みたいだからねえ。色々と備えてんじゃないの?」
「そうでしょうねえ、でも、きっとビックリすると思いますよー。楽しみですねえ」
アルスちゃんは何かサプライズパーティーでも企画しているかのように微笑んだ。
俺たちはアースドラゴンのビビちゃんを先頭に地下魔物軍団を引き連れて先ほどの新しく作った地下通路のドン付きへ向かった。
「さてと、パーティー会場へ向かうとするか」
シエンちゃんが悪そうな顔をしてニンマリと笑うとビビちゃんが坂の上の天井を突き破った。
「さあアロンゾ!パーティーの始まりだぞ!」
天井を突き破り地上に出たシエンちゃんが大きな声で怒鳴るや否や、ビビちゃんに引き連れられた地下魔物軍団が地上へと躍り出た。
「こりゃ、礼拝堂か?」
俺は出た先の光景を見て言う。並んだイスに説教壇、ステンドグラスの装飾窓は礼拝堂のようだが凝らしてある意匠が禍々しい。飾ってある人型の像は皆逆さの上に血の涙を流し身体中に矢が突き刺さっているし、ステンドグラスの絵も戦場なのか疫病なのか多くの人が倒れ嘆き悲しんでいる光景だ。部屋の中の色彩も極彩色で、例えるならば地獄の曼陀羅とでも言った雰囲気。まるで前世で好きだったホラー漫画の重鎮が描く血膿に塗れた怪奇絵巻のようだよ。暴れまくる地下の魔物達とマッチし腐臭が顔を叩きつけるようなインパクトがある。
「普通の礼拝堂じゃあないですね、これは邪神崇拝者のものですよ」
シャスカが顔をしかめて言う。
邪神崇拝かあ、まったくスプレーンの周辺はこんなんばっかだな。まあ、俺としてはいかにも禍々しくておどろおどろしいこっちの方が、清廉潔白清い民ですなんて自称してインチキ臭い事や子供を苦しめる事ばかりしてるとこよりよっぽど好感持てるけどね。
『ガシュガシュガシュガシュ』
『キシキシキシキシ』
背筋の寒くなるような音を立てて地下の魔物達が思い思いの場所へと散らばって行く。
「お?伯爵はこっちか?」
ビビちゃんが尻尾で壁を破壊し部屋の外にのしのしと出て行くのでシエンちゃんが声をかけた。
機嫌よさげに尻尾を振るビビちゃん。心なしか足取りも軽いように見えるね。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「助けてくれぇぇぇぇぇぇ」
城のあちこちから聞こえるのは阿鼻叫喚の叫び声だ。
ううむ、邪神を崇拝のであればこれぐらいの事で悲鳴を上げてちゃダメだろうに。
まったく覚悟が足らんよ覚悟が。
邪なものを崇拝するならそれに類するものに襲われても本望だろうが。
今更になってきゃあきゃあ言う根性が気に入らんよ私は。
「今更おたつくな!」
俺は悲鳴を上げて走って来た青白い顔をした男にはっぱをかける。
男は悲鳴を上げながら走り去って行く。
よく見たら男のお尻から長い尻尾のような物が生えうねっている。
どうやら、何かの魔物が無理矢理入りこもうとしているようだ。
「そりゃ悲鳴ぐらいあげるか」
俺はぞっとしながらつぶやいた。だがこれも邪神崇拝者の運命ってやつだ、頑張れよ。
アースドラゴンのビビちゃんは廊下を破壊しながらのしのしと進む。天井ばかりはやたらと高いのでビビちゃんの通行により破壊される事はないけども、時折吊るされたシャンデリアがビビちゃんの背中で削り取られるのはご愛敬と言った所かな。
「これじゃあこの城、幾らもしないうちに廃墟になっちまうんじゃないかね?」
ムジーカが呆れたような声を上げる。
「いんじゃない?元から薄気味悪い城だったし、このぐらい賑やかな方が」
「賑やかってクルースの兄い……」
ムジーカが石でも噛んだような何とも言えない表情になる。
『ガッゴォォォォン!!』
ビビちゃんが一際立派なトビラを破壊し部屋の中に踊りこむ。
「ようこそ薄汚いゴミムシどもよ……ようこそ…ようこそ…わざわざ死ににくるとはご苦労な事です」
部屋の奥にある玉座に座っているアロンゾ伯爵が冷たい良く通る声でそう言った。
お前は馬をも殺す伝説の白イタチか!
「借りを返しにきましたよ伯爵」
シャスカが言う。
「おうよ!百倍返しだぜ!」
ムジーカが言う。
「愚かなゴミムシめ!調子に乗るなよっ!!出でよ!ベルゼガッド!!」
急に激高した伯爵は立ち上がりそう叫んで玉座の近くに刺さっていた剣を抜いた。
化けの皮が剥がれたってやつだなこりゃ。
『ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ』
地鳴りのような音がして地面が揺れる。
地震か?
『ガラガラガラガラガラ』
重たい音がして玉座の後ろの壁が崩れる。
マジで地震か?
「うははは!うあははははははは!やれっ!やっちまえベルゼガッド!終わりだ!すべて終わりなんだぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「やべっ!あいつ、おかしくなったっぽいぞ」
「いえ、やばいのはこちらかもしれませんよ」
崩れ落ちる玉座の後ろの壁を見ながらシャスカが俺に言う。
吹き上がる土煙が収まるとそこに見えたのは巨大な石像の姿だった。それも剣を持った人型の。
石像は大きく剣を振りかぶり俺たちに向かって来た。
『ゴッパァァァァァァァン!!!』
「うひゃぁぁぁぁぁ!!」
巨石像が振り下ろした剣を避けるが、破壊した屋敷の床が周囲に飛び散り降りかかる。
「ぷっぷっぷ!んだこらっ!タコこらっ!」
俺は身体中に降りかかった粉じんを振り払い口に入ったゴミを吐きだしながら怒鳴った。
「ぎゃはははははは!真っ白!真っ白トモちゃんだ!」
シエンちゃんが爆笑する。
「ぶほっぶほ、わっ笑ってる場合じゃっ!」
命からがら逃げたムジーカが咳をしながら叫ぶ。
「何を言っとる、こんなもんなんでもないだろ」
シエンちゃんはそう言って石像が横なぎに振るった剣を軽く受け止めた。
「ほれ、な?」
シエンちゃんはそう言うとつかんでいた剣を放した。
「うわっ!なんでっ??」
シエンちゃんが手を放すと石像はまたもや剣を振りかぶる。それを見たムジーカがあわてて距離を取る。
「次!トモちゃん行ってみようっ!!」
「うっそ!」
シエンちゃんは石像の足を蹴飛ばして俺の方を向ける。
振りかぶったまま方向を転換した巨石像はなんの躊躇もなく俺に向かって剣を振り下ろす。
凄まじい勢いで振り下ろされる石像の剣。とてもじゃないがシエンちゃんみたいな真似は出来そうもないぞ!
「おっがねぇぇぇぇぇ!」
俺は叫びながらなんとか気張って剣を見据える。
四の五の考えてる暇はない、俺は寸前で避けてヤツの剣が地面に接触する瞬間を狙いパンチを喰らわした。
『ガッギィィィィィン』
硬質な音がして剣が砕け散り、勢い余った巨石像が前につんのめる。
もののついでだ、俺はゲイルダッシュで奴のケツ側に回り込み思い切り飛び蹴りを入れてやる。
『ゴスッ!!』
鈍い音がして石像の野郎が床に頭をめり込ます。
「おおおおおっ!!スゲーーアニキ!」
ムジーカが叫ぶ。
「なんで避けるんだ!我の真似をせねばダメだろ!」
「すんません!ビビっちゃって」
シエンちゃん檄を飛ばされ俺は即座に謝る。
「マジっすか?あれで怒られちゃうんすか?」
「うふふ、トモトモはおっかながり屋さんですからねえ」
ギョッとして尋ねたムジーカだったがアルスちゃんの温厚ながら手厳しいコメントに余計青くなるのだった。
「次、ムジーカ!行ってみよー!」
地面に顔をめり込ませている巨石像の頭を蹴り無理矢理立たせたシエンちゃんが元気良く言う。
「無理無理無理無理無理無理!」
ムジーカは必死の形相で叫びながら逃げる。
石像が追う。
手を伸ばす石像。
逃げるムジーカは必死の形相。
「うぷっ!」
「んなに笑ってんすかーー!」
「うひっ!だって、あんまりにも必死だからっ」
思わず笑っちまった俺にムジーカが講義をする。抗議しながらも必死に逃げてる姿がなんとも哀れでおかしい。
いやいや笑っちゃいけねえな。
ムジーカだって必死なんだから。
「ひゅうぅうぅうっぅぅぅうっうっう」
「ダメだ、やっぱ笑っちゃう」
顔を歪めて猛ダッシュするムジーカに俺は笑いを耐えられなかった。
「クソー!伯爵めっ!なんて酷い事をするんだっ!」
「顔が笑ってるじゃないっすかーー!マジでっ!マジで助けてーー!」
やべっ、いつまでも笑ってる場合じゃないや。
俺はゲイルダッシュでムジーカの前に回り込み、後ろから猛烈な圧をかけてくる巨大石像野郎に思い切り飛び蹴りを喰らわせる。
「やれ!やってしまえ!すべてを終わらすのだベルゼガっうぶっ!」
あちゃあ!俺の蹴りを受けて後ろ向きにぶっ倒れた石像にアロンゾ伯爵が巻き込まれちまったみたいだ。
やべっ! スプレーンとの関係や、今回の件にどうかかわってるのか聞く前に口きけなくなったらどうしよ?
俺は急いで伯爵を探す。
「おごごごごご、おご、おご」
仰向けに倒れた石像の脇の下の空間で白目になって泡を吹いてる伯爵を発見。
「お――!ヤバかった――!」
俺はゲイルダッシュですっ飛んで行き伯爵を救い出す。
「もう、いいか?シャスカも遊んでくか?」
「いえ、大丈夫です」
倒れた石像の胸の上で言うシエンちゃんに、真面目な顔をして答えるシャスカ。
「そうか、じゃあ、もう始末をつけるぞ」
言うが早いかシエンちゃんは石像の胸に抜き手を差し込み手首の動きでお皿のような物を取り出した。
「それは何です?」
シャスカが聞く。それ、俺も聞きたかった。
「邪神の欠片だな」
シエンちゃんはシンプルに答えた。
「邪神の欠片って何?」
今度は俺が聞く。
「失われた古代カースの秘術ですね。私も実際に見るのは初めてです」
「アルスは初めてか?我は二度目だぞ」
「アルスちゃんが初めてでシエンちゃんでも二度目って……」
そりゃかなりレアなロストテクノロジーなんじゃないか?
「フーカにあげれば喜ぶんじゃないか?土産に持って帰るか」
「それが良いと思いますね。変に軍事利用されると良くないですからねえ」
シエンちゃんの意見にアルスちゃんが答える。
うえっ?邪神の欠片ってそんなに危険度高いものなの?
シエンちゃんが持つお皿が怪しい光を放っている様に見えてしまう。
俺っておっかながり屋さん。




