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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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会議は食べるされど進むよって素敵やん

 学園の食堂にて。

 昼時を外れて人気(ひとけ)がなくなっていたのは俺たちにとっては好都合だった。

 ソロたちのケアを終えたアルスちゃんも合流し俺たちはシャスカの話を聞く事となった。

 と、その前にアルスちゃんからソロたちの事について報告があった。


 「ソロニックさんの状態は落ち着いていますので心配はありません。むしろ問題は他の女生徒達です。今回の件はどうやら普段から素行不良である所に付け入られていますね。女生徒三人は党と名乗ってゆすりたかりや窃盗などを繰り返す問題児童でした」


 コブラ党って凄いセンスだな、そもそも党ってのがなんとも香ばしい。そして、見た目幼女のアルスちゃんがティーンエージャー捕まえて児童と称するのも何とも言えない。アルスちゃんの見た目と中身のギャップに慣れている俺でも、この違和感には少し反応してしまう。

 だが、シャスカもムジーカもなんの反応も示さない。どころかアルスちゃんが食堂に現れた時、ふたり共恐ろしいものでも見つけたかのように一瞬慄きの表情を見せた。どうやら、このふたりにはアルスちゃんの本当の力が感じられるようだ。

 

 「彼女たちがかけられた術は人の心の弱さに入り込みその人の行動をコントロールする類のもののようですね」


 アルスちゃんはシャスカを見て微笑んだ。


 「その通りです」


 シャスカは素直に認める。


 「特に彼女たちのように悪い事だと知りながら、それを止められないと言うのはそもそも自分のコントロールがおぼつかないという事です。そこへもって外部干渉によるコントロールですからね、彼女達の現在の状況はアウトオブコントロール状態となっています」


 「アウトオブコントロール?」


 俺はアルスちゃんに尋ねる。


 「制御不能状態です。具体的に言うと彼女たちは今、校内の清掃活動をしていますよ」


 「はい?」


 俺は素っ頓狂な声を出してしまう。


 「ふふっ、つまり彼女たちは自分で自分を制御できない状態なんです。本来の彼女達が望む事、つまり人に迷惑をかけ自分だけが得をする事の真反対の行動をしてしまう。周囲にとっては良い事なのですが彼女たちにとっては大きな問題と言えるでしょうね」


 アルスちゃんは少しだけ笑って言った。


 「申し訳ありません。ですがこれは時間をかけたものではなく、急ごしらえの術ですのでかけ続けなければ急速に効果は薄れすぐに元の状態に戻ります」


 シャスカが頭を下げ謝罪する。


 「ありがとうございます、安心しましたよ」


 「俺としちゃ元の状態に戻らない方が助かるけどね」

 

 アルスちゃんに続いて俺は毒づいた。

 まったく皮肉な話だよ。前世で好きだった大陸の古い話しを思い出すよ。その話は三大奇書のひとつと言われた物語なのだが、冒頭、百八の魔王の魂の封印が解かれる所から話が始まるのだ。そして飛び出た魔王の魂は人の心に入り世の中を混乱させると宣言するのだが、時の王朝は腐敗が極まり世の中は混迷の只中に合ったため魔王の魂を宿した人達は世の圧政を正すために立ち上がる事となると言う話しなのだ。

 これは面白い話しだった。なにしろ世の中を混沌の渦に巻き込んでやるはずが、すでに世の中は混沌の渦中にあったため、逆に正義を求める事になるという皮肉な結果になってしまうんだからね。

 彼女達もそれと似たような状況ってな訳だ。

 

 「まあそいつらの事は置いておいて、ぬしらの事よ」


 「はい」


 シエンちゃんに言われたシャスカは健気とも言えるような顔で返事する。


 「そもそもの話しは我々、テンポラの所に彼が来た事から始まります」


 「ちょっと、ごめんなさい」


 真面目な顔で話し始めたシャスカっだったが、俺はどうしても聞きたい事があって話の腰を折ってしまった。


 「はい、なんでしょう?」


 「テンポラってなんですか?」


 「テンポラと言うのは経済的理由などで祖国を離れた魔族がいずれは祖国に帰る事を前提にして築き上げたネットワークです。現在では永住する事を前提とする人も増えており意味合いは違ってしまっていますが、異国の地で生きる魔族同士力を合わせましょうという互助会的組織として機能しております」


 「なるほど、ありがとうございます」


 俺はペコリとお辞儀をする。


 「では改めまして我らテンポラのところにやって来たのは出入国管理局組合理事ジェニファー・スプレーン氏の使いの方の…」


 「ごふっごっふっ!ごほごほっ!」


 俺は驚いて飲んでいたお茶が気管に入ってしまった。


 「うるせえなあお前は!なんだてんだよっ!シャスカの話を邪魔したいのかよ!」


 ムジーカがキレた。


 「いや、ごめんごめん。ちょっとびっくりする名前を聞いちゃったもんだから、マジ、ゴメン。続けて下さい」


 「おい!そんな話をされちゃこっちだって話し辛いだろーが!どういう事か先に聞かせろってーの!」


 「わかったわかった、んじゃざっくりと…」


 俺は鼻から出ちゃった茶を拭きながら、ジェニファー・スプレーンとの経緯を軽く話して聞かせた。

 古代遺物を巡ってトラブった漆黒の猟犬、バッグゼッドに来た時からきな臭い話しの影には必ずチラつく怪しい政治結社である大バッグゼッド中央覇道連合研究会こと覇連研、そして極めつけは自称世界征服を狙う秘密結社ハンドラー、そのどれもに名を連ねる人物こそジェニファー・スプレーンその人なのだ。

 怪しさ満点、疑惑の総合商社、いかがわしさが服を着て歩いているよう等々、彼女を形容するのにはいくら言葉を尽くしても足りない。

 

 「…てな人物だもんでね、名前を聞いて思わず俺もお茶が鼻に入っちゃったって訳ですよ。で、そのジェニファー・スプレーンの使者とやらがあなた方テンポラの所にどんな用事で来たって言うんです?」


 「……ふぅ、もう、この時点で私としてはただただ謝罪をして、許して貰えるならばすぐに帰りたい所ですけども……」


 シャスカはそう言って少しだけ俯くと意を決したように顔を上げた。


 「まずは全てを話すのが誠意とも思いますので包み隠さずお話しします…」


 シャスカの話しはこうだった。

 ファルブリングテンポラ総会理事会に現れたのは出入国管理局理事ジェニファー・スプレーンの使者を名乗った。

 勿論、テンポラ総会理事会関係者は違法行為などは働いていないのでなんらやましい事はないのだが、異国の地で生きる者としてはやはり出入国管理局の名前には一定の緊張を感じてしまうものだ。

 要するに相手のペースにハマってしまったという訳だ。

 使者の名前はザルツ・レイズフェルド。レイズフェルドは最初こそ低姿勢であったが、テンポラ総会理事会のメンバーが及び腰である事を見てとると途中から随分と横柄な態度を取るようになったのだと言う。

 なめた態度をとるレイズフェルドにシャスカは業を煮やしたが、書記役であり理事を差し置いての発言権などないためジッと耐えたのだと言う。

 レイズフェルドが来た目的は、ずばり金の事であった。

 バッグゼッド帝国は異国から働き手として済む外国人を歓迎しており、そうした観点からテンポラ総会理事会にも助成金がおりていた。

 レイズフェルドによればその助成金が近々おりなくなると言うのだった。

 これはテンポラ総会理事会には非常に大きな問題であった。

 大いに慌てた理事たちは、なんとか受給し続ける方法はないか探るためにシャスカにレイズフェルドの接待を命じた。

 さすがに術をかけ操る訳にはいかないが、キレイ処にもてなされれば口も軽くなるだろう。理事たちはそう考えたのだった。

 それで、接待をしたところ飲みの席でレイズフェルドはこう言ったのだ。

 助成金のうち切りが決まったのは大手商会ケイトモの会長であるトモ・クルースの一言によってだ、と。

 レイズフェルドによれば帝国の権力者にも顔が利くクルースは大の魔族嫌いなのだと。さらにクルースは安い人件費で移民や難民の子供を労働力にし搾取しているので、同じく外国から入って来たテンポラ総会理事会にその事を指摘される事を恐れ圧力をかけたのだと言う。

 

 「……その事を理事会に話すと理事会はレイズフェルドと会談を持ち、助成金打ち切り撤廃について具体的な対応を協議したのです。そこでレイズフェルドから提案されたのはクルースさんの失脚でした」


 「失脚?」


 色々とツッコみたい事はあるが、とりあえず失脚させよとは具体的に何を指すのか、そこから聞こうか。


 「ええ、クルースさんはファルブリングカレッジで品行方正を演じているのでそこから突き崩せば打ち切り案撤廃の声も上げやすくなる、彼の横暴を許せないと感じている者は少なくないのだと、そうレイズフェルドは言うのです。そしてクルースさんは影響力を増すために弱小ベリンボールチームに目を付け、嫌がる生徒を無理やり従わせ卑怯な手段で試合を勝ち進んでいるので、これを止めさせれば自然と評判は下がる。特に合同文化祭での親善試合を土壇場で不参加させる事ができれば苦しむ部員は救われテンポラも救われる、その言葉に理事はすがってしまったのです」


 「なるほどね、それでいじめっ子たちを操ってソロに退部を迫らせ部の切り崩しを図った、そういう訳ですか」


 「その通りです」


 俺の問にシャスカは項垂れた。


 「もうお気づきの事と思いますが、まず私はバッグゼッド帝国の法案に口出しできるような力はありません。そして魔族の方への偏見などもまったくありませんし、実際、懇意にさせて貰ってる魔族の知人も多くいます」


 「ええ、シエンさんに抱かれた今となってはレイズフェルドの言っている事が皆デタラメである事が確信できます」


 抱かれたって、ちょっとその言い方には語弊があると思うけども。まあ、わかっていただけたのならば、嬉しいですよ。


 「さてと、あらかた事情は理解できたという事で次に話を進めましょうか」


 このままこの話を続けるとシャスカがいたたまれない。


 「ああん?てめえシャスカがせっかく話してくれたのになんだその態度は!」


 俺の気持ちに気付かないのか、シャスカの事が好きすぎて空回りしちゃってるのかムジーカが絡んでくる。


 「おい!トモちゃんの言う事に文句があるってのか?だったら我が聞いてやるぞ?ん?」


 おっと、シエンちゃんは気付いてくれたかな。シエンちゃんはゆっくりとそう言ってムジーカをねめつける。


 「いや、俺…自分はシエンさんには何も文句ないですし、ただ、シャスカが」


 「シャスカがなんだ?お前、なぜトモちゃんがあっさり話を次に進めたのかわかっているのか?ん?」


 口を尖らせてうつむき加減で言うムジーカにシエンちゃんは強い口調でそう言って視線をシャスカに移す。

 シャスカは眉の根を上げやり切れない表情を浮かべている。

 おいおいムジーカちゃんよう、好きな女にこんな顔させんなって。


 「ぐっ、クルース。すまなかった、続けてくれ」


 察したのかムジーカは俺の方を向きなおりサッと頭を下げた。うんうん、こいつも悪い奴じゃあないみたいね。

 

 「いやいいんですよ、ムジーカさんが誠実な人だってわかって良かったですし。どれだけシャスカさんの事を大切に思ってるかもわかりましたからね」


 「勘弁してくれ、あまりいじめんでくれ」


 ムジーカは顔を赤くして俯いた。


 「では改めて今後の事を話し合いましょう。まず、助成金打ち切りの件ですがこれはレイズフェルドのハッタリだという可能性はありませんか?」


 「それはありません。こちらからも出入国管理局に問い合わせましたが、打ち切りの件は事実でした。ただ、その理由については、自分には説明責任がないの一点張りで教えてくれませんでした」


 ふ~む、いかにもお役所仕事って感じですな~。

 

 「もう少し上の方とお話しされては如何でしょうか?」


 アルスちゃんが提案する。


 「私もそう提案したのですが、理事が反対いたしまして。ああした所は頭を越えてやられるのを嫌いますので」


 「かぁ~!わかるわかる!」


 俺は激しく頷く。わかりすぎの頷きすぎだよ。もう、前世で散々見て来たよそういうの。


 「おまえホントにわかるのかよ?」


 ムジーカが目を細めて俺を見る。


 「あっちこっちでよく見た光景ですからね。仕事の処理能力が低いのにある程度の権力を持たされているような人は頭越しにやられるのを極端に嫌う傾向がありますね」


 「なんでなんだよ?自分で処理しきれなかったら上に頼るのが普通だろ?」


 ムジーカが首をひねる。この人はやっぱり真っ正直で真っ直ぐな人なんだな好感が持てるよ。


 「そうあるべきなんですけどね、人ってなそんなに強くないんですよ」


 「だから頼るんだろ?」


 「それができないのも弱さなんですよ。自分がどう見られるのかばかり気にしてしまったり、他に楽をして得をする方法を選んでしまったりしてね」


 「わかんねーな。具体的にそりゃどういう事なんだよ?」


 ムジーカはイラつきを隠せず吐き出すように言う。


 「つまり、そういう人ってのは上に隠れて自分勝手な采配をしていたり、賄賂を受け取ったり横領を働いたりなど権力を利用して不正を働いている可能性が高いという事ですよ」


 俺はニヤリと笑って言ってやる。


 「つまり頭越しに話を進めれば彼に不利な状況になりかねない、と?」


 シャスカが俺に聞く。


 「おそらく、そうだと思いますよ。ですから、直接上に問い合わせてもテンポラ総会理事会に何か被害が及ぶことはないでしょう。心配ならば私の方から連絡してもいいですよ」


 「……お願いできますか?」


 少し考えてからシャスカは頭を下げた。


 「では、ちょっと連絡して見ましょう」


 「トモトモ、それは私に任せて貰えますか?出入国管理局には知り合いもいますから」


 アルスちゃんにはケイトモ絡みで国の機関との調整役をお願いしちゃう事も多かったのだ。いつも俺が思い付きで行動しちゃうからアルスちゃんには迷惑かけっぱなしだよ。申し訳ないアルスちゃん。


 「ごめんねアルスちゃん。任せちゃっていい?今度何かご馳走するから」


 「うふふ、マキシンゴスのランチでお願いします」


 マキシンゴスってのは若い子に人気の大衆的な価格の飲食店だ。まったく、アルスちゃんらしいよ。


 「わかった、任せといて」


 俺が笑顔で言うとアルスちゃんもそれに答えてにっこりと笑い食堂を後にする。

 

 「さて、それじゃアルスちゃんの報告を待つまで軽く対策でも練りますか」


 「対策てったって、おめえ、何ができるってんだよ?」


 「それをこれから話し合うんでしょ?シャスカちゃんラブなのはよーくわかったから、ここからは協力していきまっしょい!まずはお近づきの印に何かご馳走しましょ。なんでもどうぞ」


 「あん?えっ?はあ?」


 ムジーカは目を怒らせたがすぐにあっけにとられ目を丸くした。


 「はあ?じゃなくて、何食べる?シャスカさんもどうぞ、甘いものも色々ありますよ?」


 「我はフライドチキンがいい!あとフライドポテトも!飲み物はヤグーソーダ!このセットがここ最近のイチオシセットじゃ!お前らもそれにせい!絶対美味いから!」


 シエンちゃんが力説する。このセットはディアナのやってる売店で出してる短時間で出せる簡単料理、いわゆるファストフードである。ちなみに、肉や魚のフライを野菜と共にパンにはさんだメニューも用意しており忙しい学生に人気の品となっている。

 シエンちゃんはパンがまどろっこしいみたいで、フライドチキンの方がお気に入りなんだよな。

 シャスカとムジーカは面食らったような顔をしてから、うんうんと頷いた。


 「よし!んじゃトモちゃん、こいつらとアルスとだから十人前頼む!」


 またもやシャスカとムジーカは目を丸くするが、まあシエンちゃんにしてみればこれでも少なめに言ったほうだよ。


 「あいよ」


 俺は軽く返事をして売店に行く。


 「いらっしゃいませー!あっ!クルースさん、お疲れ様でーす」


 元気良く迎えてくれたのは店番の女の子でジルベルトさんだった。この子もやはりヤグー街でストリートチルドレンをやってた子だが、他の子達より少し年上でストリート時代も女の子ながら他の子を守る様にして生きていた、逞しさとリーダーシップを持った子なのだった。


 「お疲れ様です。今日はディアナは?」


 「ケイトモの会議でレイオの店に行ってます。何かお言付けでもございますか?」


 丁寧な言葉でそう言うジルベルト。


 「いや、別に用があったわけじゃないんだ。注文いいかい?」


 「ええ、どうぞ」


 にっこりと笑って言うジルベルト。


 「それじゃあね、フライドチキンとフライドポテトとヤグーソーダのセットを十人前、ここで食べてく仕様で。ちょっと多いけど大丈夫?」

 

 「大丈夫です。毎度ありがとうございます。ではこちらの券をお持ちになってお待ちください」


 「ありがとー」


 俺は2と書かれた券を持ち店の前の席に座ってしばし待つ。


 「二番でお待ちの方、お待ち同様でしたー」


 ジルベルトが出来上がりを告げてくれる。近くに俺しかいないのにあえて名前で呼ばず番号札で呼ぶとこなどは、さすがプロの売り子と言った所か。


 「お席までお運びしましょうか?」


 「いやいや、大丈夫。近いから二度に分けて運ぶよ。ありがとね」


 俺はジルベルトに券を渡し、二往復して食べ物を運んだ。

 運ばれてきた量にシャスカとムジーカは目を丸くしたがシエンちゃんは構う事なく仕分けをした。

 皆には一人前ずつ、自分の所に六人前をボンと置いた。

 勿論、飲み物も六人前だ。


 「ヤグーソーダ以外の奴も混ぜといた方が良かったんじゃない?」


 「いや、揚げ物にはヤグーソーダが一番だ。さあみんなまずは食べようではないか、それじゃあスプレーンの悪事を暴こうぜ!という事でカンパーイ!」


 シエンちゃんは威勢よくそう言って紙カップに入ったヤグーソーダを掲げた。

 

 「かんぱーい!」


 俺もそれに続く。

 シャスカとムジーカもおずおずと紙カップを掲げる。

 

 「モグモグモグモグ、んぐんぐプッハー!アツアツのポテトをソーダで流し込む!これが最高!」


 シエンちゃんの食いっぷり飲みっぷりに圧倒されながらもマネする俺達。

 うん、やっぱ美味いねこの組み合わせは。


 「うまっ!なにこのフライ?普通の奴と違くね?」


 一口食べたムジーカが驚きの声を上げる。


 「ふっふっふ、そーだろそーだろ?そんじょそこらの奴とは違うのよこいつは」


 「本当に美味しいです」


 大威張りで言うシエンちゃんに答えるシャスカ。気に入って貰えたのなら何よりだ。


 「それでは食べながらでいいので話を聞いて下さいねえ。まずは助成金打ち切りが真っ赤な嘘だった場合。この場合、レイズフェルドに対して我々はどう動くべきだと思いますか?」


 「そんなもん、ぶっ飛ばしてやればいいに決まってるだろ!」


 ムジーカは即答する。


 「もう少し頭を使いなさいといつも言っているのに、あなたは一向に使おうとしない。私は悲しいですよ。今回もあなたは私を助けようとしてくれたはいいが、なんの策もなくただ突っ込んでくるだけでした。相手がシエンさんのような聡明な方でなかったら、あなたも私も死んでいましたよ。わかりますか?」


 「うっ、すまん」


 シャスカに言われてムジーカは素直に謝り項垂れた。なんか可哀想になってきちゃったよ。


 「ではシャスカさんはどう考えられますか?」


 俺は矛先を変えてやる。


 「正直な所、助成金打ち切りが嘘ならば我々にとってはそれで良し、これ以上深入りしなくて良い問題なのですが…」


 そこまで言ってシャスカさんは言葉を切った。


 「ですが?」


 俺は促す。


 「…私個人としては納得できかねます。これまでの話を聞く限り、私は悪の手先として動かされた事になります。それはとても…とても許容できる物ではありません。この話を持ち帰れば理事は安心してこれ以上この件に関わる事を良しとしないでしょう」


 そう言ってシャスカはムジーカを見る。

 ムジーカは目を逸らした。

 

 「だから、私としてはこの件は報告せずに独断で行動したいと思います」


 「行動と言いますと?」


 俺はまた促す。


 「レイズフェルドに術をかけその黒幕を吐かせます」


 「なんだよ!それじゃ俺の言ってる事と同じじゃねーかよ!」


 ムジーカが口を尖らせて抗議する。


 「同じじゃありません」


 「どう違うってんだよ」


 「あなたは知らずに穴に落ちる、私は覚悟して穴に降りる。全然違います」


 「ちぇっ」


 シャスカにぴしゃりと言われてまたもや口を尖らせるムジーカ。

 

 「黒幕を吐かせて何とする?」


 シエンちゃんが挑戦的な目をして言う。シャスカはほんのり頬を染める。おいおいムジーカちゃん、へこんでる場合ちゃうぞ?いいとこ見せねえとシャスカはシエンちゃんにぞっこんになっちゃうぞ?シエンちゃんは女の子にモテるからねえ、学園でもファンクラブがあるからね。


 「文句を言います」


 シャスカは言った。


 「むふ、むふふふ気に入ったぞ。こやつトモちゃんみたいな事をいいよるわ。面白い、なあトモちゃん」


 「うん。そういうやり方は俺も好きだよ。よし、じゃあ助成金打ち切りがハッタリだった場合は黒幕に文句を言いに行くって事で決りね。ではハッタリではなかった場合について話し合いましょうか」


 「その必要はありませんよ」


 俺の拙い議事進行の途中、助け舟を出してくれたのはアルスちゃんだった。

 いよいよ真打、アルスちゃん登場です。

 俺は心の中でめくりをまくるのだった。


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