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意外と大丈夫異世界生活  作者: 潮路留雄
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夜はこれからって素敵やん

 楽しく飲んでいた所に突然店員さんから声をかけられた俺は、店員さんの案内でバックヤードにやって来た。


 「突然お声をかけてしまって申し訳ありません、わたくしここの店長をしていますデイブ・ブロックハートと申します。よろしくお願いいたします」


 「ああ、トモ・クルースです。どうも」


 丁寧に挨拶をされ俺は思わずたじろいでしまう。この人、店長さんだったのか。という事はベルリッツさんが言ってた卒業生ってのはこの人か。


 「皆さん楽しんでおられたのに本当に申し訳ありません。他の皆さまは大丈夫ですか?」


 「ええ、むしろ女子だけの方が盛り上がるでしょう」


 俺は答える。実際、俺は彼女達のお喋りを肴にひとり酒を飲んでたような感じだもんな。


 「本当に申し訳ありません。ベルリッツさんには卒業しても本当に良くして貰っていまして。それでベルリッツさんからお話を伺ったものですから、失礼を承知でお声掛けをさせて頂きました」


 ブロックハートさんはそう言ってまたもや頭を下げる。

 う~む、この人も苦労人のようだな。

 こう言っちゃなんだがあの学園の卒業生って事はそれなりにやんちゃやってたんだろう。

 前世の職場に元暴走族の上司がいたが、その人が言ってたもんだ、若い頃は親でも先生でも警察でも絶対に頭なんか下げなかったが、今は頭下げっぱなしだよ、と。

 ブロックハートさんもその口なのかな。

 そう考えると力になってあげたい気持ちになるよ。


 「自分でお力になれるのでしたら。ところで早速ですがどういったご用件なのでしょうか?」


 「なんでもクルースさんは害虫の駆除がお得意なのだとか。それも、かなり特殊な害虫の駆除もその範疇に入っているのだとか」


 ブロックハートさんの表情に真剣なものが宿る。こりゃ、あれかな。


 「人のトラブルですか?お客さん関係ですか?」


 「お客さんではないですけど、みかじめ料の事でちょっと面倒な事になってまして…」


 「面倒な事と言いますと?」


 「ええ……」


 ブロックハートさんは眉間にしわを寄せ説明してくれる。

 この近辺の飲食店は皆ゲーロドーノと呼ばれるギャング組織にみかじめ料を払っていた。

 ゲーロドーノはこの辺りに古くからあるギャング組織だったが、最近になって別の大きな組織に吸収されたのだと言う。堅気衆にとってはみかじめ料はそれまで通り支払うし、トラブルがあれば面倒を見て貰うわけで今までとなんら変わる事はなかった。

 ところが、最近になって急にゲーロドーノの連中は何も言わずに消えてしまった。

 ある日を境にばったりとみかじめ料の徴収に来なくなったばかりでなく、レンタルしていた観葉植物や絵画などもそれっぱなしにして消えてしまったのだ。

 飲食店の人々は何かあっては事だと考え、レンタル物品を持ってゲーロドーノの事務所に向かったがもぬけの殻であった。

 

 「……我々はこれからどうするか相談しました。隣町の飲食店に相談するとそこでも同様の事が起こっているとの事でした。隣町ではみかじめ料を払わずに済むのはありがたいし、トラブルは自分達で解決するか衛兵に頼れば良いだろうと事態を楽観的に見ていました。我々もそう考えていました、ところが最近になって事態はややこしい事になったんです。あれは五日前の事です、人相の悪い若い男達が現れまして、ゲーロドーノの代わりに自分達がこのシマを仕切る事になった、ついてはみかじめ料を支払えと言うのです。近隣の飲食店と相談したのですが、やはり同じように言われ、断ると嫌がらせをすると言うので支払う事にしました。すると翌日、今度は別の若者達が現れて同じ事を言うのです」


 「ゲーロドーノの代わりにシマを仕切るからみかじめ料を払えってですか?」


 「そうなんですよ。それなら昨日来た人達に支払ったと言うと、そいつらにここらを仕切る力なんてないから意味がない、本当に仕切っているのはうちらだから、うちに支払えば安心して営業できる。昨日の奴らにはうちらから話を通しておくからとりあえずみかじめ料を払え、昨日の奴から取り返したぶんは返してやると言うんです」


 「それで、払っちゃったんですか?」


 「ええ。そうしないと店を壊すと言うもので」


 「はぁ~、そりゃあ難儀でしたねえ」


 そいつらと話をつけるってのが今回の仕事か。地元を仕切るデカイ団体が消えた余波はこんなところにも出てるのか。


 「難儀も難儀、大難儀ですよ。何しろあれから連日違う奴らが来てみかじめ料を払えって言ってくるんですから」


 「連日ですか!?」


 俺は驚いて素っ頓狂な声を出してしまう。


 「そうなんですよ、この調子で金を払ってたら店が潰れてしまいますよ」


 「毎回払ってたんですか?」


 「そうしないと店を潰すと言うものですから…」


 おいおい、幾らなんでもそりゃないだろう。結局どこも用心棒らしい事をしてくれないのかよ。それじゃ、やらずぶったくりじゃねーか。


 「それで、そいつらはどこをアジトにしてるとかどう連絡を付けたら良いのかとかそういった事は教えてくれたんですか?」


 「それが、なんだかんだ言って教えてくれないんですよ。こっちはいつも見張ってるから気にするなってどいつもこいつもそう言って」


 「どいつもこいつも?」


 「ええ、こっちはいつも見てるんだから気にするなって」


 「ほう」


 「店長!店長!」


 女性店員さんが息せき切って入って来る。


 「どうしたの?まさか……」


 ブロックハートさんがゆっくりと顔を上げて女性店員さんを見る。


 「そのまさかです。また違う連中が来て店長に会わせろって」


 「うわぁー、もう勘弁してくれ~」


 ブロックハートさんは頭を抱えてしまう。まあ、気持ちはわかるよ。


 「どこに来てるんですか?」


 「あ、裏口ですけど、店長?この方は?」


 俺の質問に答えた女性店員さんは怪訝そうな顔をしてブロックハートさんを見た。


 「ああ!そうだった!このお方は有名なトラブル解決屋さんでね!もう大丈夫だよネイルさん!ね?早く、クルースさんを案内してあげて!クルースさん、よろしくお願いします!」


 急に元気になった様子のブロックハートさん。この人もなかなか調子の良い人のようだ。

 だが、まあ向こうさんからやって来てくれたのなら話は早い。


 「では、ブロックハートさん、一緒に行きましょう」


 「えっ?私もですか?」


 驚くブロックハートさん。


 「そりゃそうでしょう。今までの奴らと対応したのはブロックハートさんなんだから」


 「早くお願いします、あいつら待たせると怒ってそこらのもの壊しますよ」


 「早く行きましょう!クルースさんお先にどうぞ」


 女性店員の一言にぴょこんと席を立つブロックハートさんだったが、俺に隠れるようにして背中を押すのだった。

 俺はブロックハートさんに背中を押されるようにして女性店員と一緒に裏口へ向かった。


 「この野郎!いつまで待たせるんでいっ!」


 裏口に出るとそこには人相の悪い男達が数人立っており、先頭に居るスキンヘッドの大男が柄の悪い声を上げた。


 「そんな大声出さずとも聞こえますよ。ところでお宅さん達は何の用事でいらっしゃったんですか?」


 「何の用事もかんの用事もねぇっ!!みかじめ料だよ!みかじめ料!!」


 スキンヘッドが顔を真っ赤にして怒鳴り声を上げる。


 「それなら、もう別のトコに支払ってますよ。それも別々に複数のところに。ね?店長?」


 「そうそうそうそう!もう、五日連続で来てますもん。あたしゃ敵わないですよ。このままじゃ店潰れますよ……」


 ブロックハートさんは勢いよく話し出す。最初に来た団体の名前から昨日の団体まで、団体名を出しながら説明した。


 「…という訳でしてね、もう、お帰り下さいと言いたい訳なんです。と言うよりも、あれですよ今までのみかじめ料、返して欲しいですよ」


 「返して欲しい?だったらうちに任せりゃ大丈夫だ、そんな半端な奴らものの数じゃねえさ、なあ?」


 スキンヘッドが仲間を見てニヤリと笑うと他の連中も下卑た笑い声を上げた。

 

 「そうそう!そんな奴らじゃ話になんねーよ!」

 「だいたい俺らが来てもそいつらこねーだろ?ビビってんのよ俺らに」

 「ぎゃはははは!なんつってもここらは俺らのシマだからな!」

 「俺らこそここの真の支配者ってわけさ」

 

 「だから俺らにみかじめ料を払うのが筋ってわけよ。わかるだろ?」


 手下の連中が調子に乗って得意になっているとスキンヘッドがニヤリと笑って俺たちにそう言った。

 ブロックハートさんがすがるような目で俺を見てくる。

 

 「コホン、あのですね…」


 「ああっん?何言ってんだかわかんねーよっ!もっとデカい声で言ってくれよ!」


 話し始めた俺の機先を制するように大きな声を上げるスキンヘッド。

 自分の優位に保つための小細工だろう、セコイやっちゃ。


 「え~、条件によってはみかじめ料を払う事も構わないんですけどね。うちも五日連続であなた方のような人が現れてはお金だけ受け取って肝心な時に助けに来ないんですから慎重にもなろうってものですよ。こちらの事情もご理解ください」

 

 俺はあくまで丁寧に対応する。こうした輩は軽く見られる事を極端に嫌うからだ。


 「まあ、払う気があるってんならいいのさ。こっちもできれば手荒な真似はしたくないからな」


 「さすがの貫禄ですな、今までの奴らとは一味違いますね」


 「そうか?へっへっへっへ、俺様も貫禄が出て来たって事かな」


 スキンヘッドはご満悦だ。


 「では、ひとつお尋ねしたいんですけどね。あなた達はどこを事務所にしてるんですか?」


 「事務所だと?」


 スキンヘッドが俺を睨む。


 「ええ、つまり普段

の集まり場所ですよ。何かあった時に連絡するのに知っておく必要がありますよね?ほら、知っていればこちらからみかじめ料をお持ちする事もできますしね」


 「いい心がけだがそれには及ばねえ、こっちはいつも見てるんだから気にするな」


 スキンヘッドの言葉にブロックハートさんが、ね?言ったでしょ?と目で訴えかけてくる。

 なるほどね。


 「これまでの連中もそう言って金を持って行きましたけど、結局来やしませんよね」


 「だから俺たちは今までの奴らとは一味違うと言ってるじゃねーか」


 スキンヘッドがイラついた調子で俺を睨む。


 「これまでの連中もそう言ってましたからねえ、やっぱり連絡がつく場所は教えて頂かないと信用できませんよ。だってそうでしょ?例えばみかじめ料は明日払うと言っておいて明日も明後日も同じ事を言って先延ばしにされたらやっぱり信用できないでしょ?」


 「そりゃそうだ、だから俺たちはみかじめ料の遅れは許さねえ事にしてるんだ」


 「だったらご理解いただけますよね?丁度良いので今からご一緒させて下さいよ、ねえ?いいですよね?その方が何かとお互い便利ですしね。さささ、行きましょう行きましょう」


 俺はスキンヘッドの肩を叩きここから移動するよう促す。


 「ちょ、ちょっと待て、だからそれは気にするなと」


 「いいからいいから行きましょうよ。場所がわかればうちもお世話になるんですから、差し入れぐらいさせて貰いますし。さささ」


 俺は抵抗するスキンヘッドをグイグイと押す。

 スキンヘッドの身体がズリズリとずれる。


 「うっ、お前」


 スキンヘッドの表情が変わる。


 「さあ、行きましょうよ。ね?」


 「ちょっちょっちょっ、ちょっと待てよっ!てめえ、ナニモンだっ」


 「その前にあなたたちこそ何者なんです?連日違う人間寄こして金を持って行く、面白い作戦ですけどさすがに六日連続ってのはやり過ぎでしてたねえ。さあ、アジトに案内して貰いますよチンピラさん」


 「のやろうっ!やっちまえ!」


 スキンヘッドが顔を引きつらせて怒鳴る。

 手下どもが戦闘態勢に入る前に俺はスキンヘッドの足を捕まえる。


 「うおっ!」


 驚きの声を上げるスキンヘッドの足をつかみ俺はジャイアントスイングに持ち込む。


 「んぐっ」


 俺に振り回されて鈍い声を上げるスキンヘッド。


 「ぎゃっ!」

 「うごっ!」

 「があっ!」

 「ぐわっ!」


 スキンヘッドの身体がぶつかりすっ飛ばされる手下ども。

 俺はぶん回したスキンヘッドを手放し壁に叩きつける。


 「ぐふぅ」


 壁にぶち当たったスキンヘッドが変な声を上げて白目を向いた。


 「クルースさーん」


 「大丈夫、殺しちゃいませんよ。おーい、起きろ親分」


 心配そうに尋ねるブロックハートさんに来たてた俺は気絶しているスキンヘッドの顔に水魔法で冷たい水をぶっかける。


 「ぶはっ!なっ!」


 「お?起きたか?んじゃ、行こうか」


 「い、行こうってどこに」


 「そりゃ、おたくさんらの集まり場所に決まってるっしょ」


 俺はとぼけた事を言うスキンヘッドに元気良くそう答えてやった。

 スキンヘッドはまだ事態が飲み込めないのかキョトンとしている。

 まだまだ夜はこれからだ。


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