電撃戦で踊れ!って素敵やん
次なる目的地ニューアイリオン駅に着いた我々は、そこから馬車に乗りニューアイリオン学園に向かった。
ニューアイリオン学園は駅から離れた森に囲まれた高台にあった。
周囲に民家などなくまるでお城のようである。
「な、なんだか立派な学園ですねえ」
「つーか、街から隔離してるようにも見えね?」
「見える見える、なんか罪人閉じ込めとく牢屋みたいな?」
ソロの言葉にベーヤンとみっちょんが怖い事を言う。この歳の女の子ってのは想像力が豊かだよ。
森の中を進み丘を登り俺たちはニューアイリオン学園に到着する。
ニューアイリオン学園ベリンボールチームであるフェアナイツの監督さんに出迎えられた我々は、グラウンドで軽く練習をし早速試合開始と相成った。
俺はと言えば管理技能員さんが現在外出中という事で、戻るまでは試合観戦ができる事となったのだった。
管理技能員さん、ゆっくりしてきて下さい。
「一同、礼!」
審判さんの号令に並んだ両チームの選手が一斉に礼をする。
『ゴトリ』
鈍い音がしてフェアナイツの選手の制服からごっついバールが落ちた。
「あ、すいません。実家が大工なもので」
フェアナイツの選手はにっこり笑って言うとバールをしまった。
はい?なんでそんなもん持ってるの?そして審判はなんで没収しないの?
俺の頭は疑問符でいっぱいになった。
「プレイボール!」
審判の威勢の良い掛け声で試合は始まる。
ドギューズの先攻バッターは一番みっちょん。
ピッチャー第一球を投げみっちょんはヒットを打つ。
打球は深く構えた内野が危なげなく捕り一塁へ。
みっちょんはなかなかの俊足ぶりを見せつけ無事にセーフに見えたが、捕球した一塁手が滑り込むみっちょんにグラブを叩きつける。
激しい滑り込みによる土煙がしばし発生する。
俺たちは息をのんで土煙が止むのを見守る。
「セーフ!」
塁審がセーフのジャッジを下すが、そこに見えたのは一塁手が振り下ろしたバールを塁の上に転がりながらスパイクの裏で受け止めているみっちょんの姿だった。
「おい!なんだよそれ!!」
マーがグラウンドに駆け出すが、足でバールを蹴り飛ばしたみっちょんは立ち上がりタイムの申請をした。
審判は頷き試合は中断、みっちょんはゆっくりとドギューズベンチに向かって歩いて来た。
今回のベンチ位置はうちらドギューズが二塁側、ホームのフェアナイツが一塁側ベンチとなっている。ちなみにベリンボールは三角ベースシステムなので二塁側が野球で言う三塁側ベンチという事になる。
「やると思ったよ」
「だいじょうぶか!怪我無いか!」
肩をすくめて言うみっちょんにマーががぶり寄る。
「向こうのほうが怪我してんじゃない?スパイクでいってやったからね」
「なんなのあれ?」
シーボーが尋ねる。
「あいつらの得意技はラフプレーなんでしょ?フェアなナイツなんてあんまりあからさまな名前じゃない。審判も向こうから出して貰ってるから当てにならないよ」
「ラフプレーの域を超えてるけどね」
メイが呆れたように言う。
「つーか、あいつら嫌な顔してるわ~。引くわ~」
向こうチームがニヤニヤと笑っているのを見てベーヤンが言うが、その顔は不敵な笑みを浮かべていた。
「上等だよ!ぶっ殺してやるぜ!」
「お待ちください、そんなチームと試合を組んだ私のミスです。ここは私が頭を下げて試合を中止してもらいます」
息巻くマーを止めるようにケイトが言った。
「ちょ待ってケイトちん。このまま引き下がるのはプライドが許さない。向こうがラフプレーならうちらはそれを力で乗り越える。それがカッコイイ」
シーボーが言いみんなはそれがいい!と盛り上がる。
「わかりました、では私が一肌脱ぎましょう!みなさん、手袋とスパイクにこれを張り付けて下さい」
勢いよく立ち上がったフーカさんはザックの中からガムくらいのサイズの長方形の物体をふたつ取り出した。
「なにそれ?」
俺は尋ねる。
「ふっふっふ、これはですね秘密兵器第二弾、接着式雷撃トラップ略してセツラップ!」
フーカさんはそう言うと、長方形の物体からそれこそガムのような薄い板をスライドさせると選手たちの手袋の甲とスパイクの裏に貼りつけていった。
「これは衝撃を与えると外側に電撃を放ちます。スパイクはスタッドのない部分に貼っていますので敵の攻撃をスタッドで受けられなかった時に電撃でお返しできるようにしてあります」
フーカさんの説明に選手たちは歓声を上げる。
「既にベリンボールじゃないような」
「いや、でもハルスマニだかラスピリヤだかじゃミックスボールって言うベリンボールと格闘技が一緒になったスポーツがめっちゃ流行ってるて聞いたよ。もしかしたら、バッグゼッドでも流行るかもよ?」
「流行ってもなあ…」
ジンジャーの話に困った顔をするメイだった。
「そんじゃ、戻るね」
「おう!ぶっ潰してこい!」
にっこり笑って塁に出るみっちょんに檄を飛ばすマー。
「よーし!一発デカイの飛ばしてくれるぜ!」
鼻息荒く言い立ち上がるマー。
「邪魔、次は私」
「ありゃりゃ」
シーボーがクールに言いマーは気勢をそがれてベンチに座った。ありゃりゃってマー、お前ホントは幾つだ?
俺の心配をよそに打席に立つシーボー。
ピッチャーはチラチラと一塁を見る。ベリンボールは一二塁間が長いので盗塁はほぼない。おかしいぞこれは。
一塁に向かって鋭い牽制球を放つピッチャー。
一塁手は球を捕ると勢いよくみっちょんにクラブを叩きつける。
「あ!」
ケイトが思わず声を上げる。
「んががががが」
一塁手は防御に入ったみっちょんんの手を肘で打ってから球を持ったグラブで頭を叩こうとでも考えたのだろう。
みっちょんの手の甲に思い切り肘をぶち当てた一塁手は奇妙な声を上げて弾き飛ばされてグラウンドにぶっ倒れた。
「大丈夫か君!」
審判がぶっ倒れた一塁手に駆け寄る。
「肘でイカれたうちの選手を先に心配しろよ!」
マーが叫ぶ。
みっちょんはひらひらと手を振り無事をアピールする。
「あびゃびゃびゃ、ちょーきもちーーあびゃびゃ」
目を回して言う一塁手は担架で運び出されて別に選手が補充される。
補充された選手は運び出された選手のグローブから零れ落ちた球を捕るとピッチャーに投げた。
審判が試合再開の合図をする。
「よーし!気合入れてけー!」
マーが叫びシーボーが無言で頷く。
頑張れシーボー!
俺は心の中で祈るように言う。
「あの~クルースさんはおられますか?」
「はい?」
突然声をかけられ振り返ると穏やかそうなお婆ちゃんがニコニコしながら俺を見ていた。
「ああ、あなたがクルースさんですか~。わたくし、ニューアイリオン学園管理技能員のミッシェル・ベルリッツと申しますどうぞよろしく」
ベルリッツさんはそう言って優雅にお辞儀をした。
「クルースです、どうぞよろしく」
「フーカです、よろしくお願いします」
「あらあら、今日はおふたりでやってくださるのですか?本当に助かりますよ~」
『カッキーーン!!』
「あばばばばば」
ベルリッツさんが穏やかに言うその向こうでシーボーの打球がいい音を立てて飛び、なぜかキャッチャーがひっくり返って痙攣していた。ちょっと目を離したすきにどうなってんだよ?
「それじゃケイトさん、これを置いて行きます。あれの耐用回数は三回ですので、終わったら貼り替えお願いしますね」
フーカさんはそう言ってザックから接着式雷撃トラップ略してセツラップを出しケイトに渡す。
ケイトはそれを受け取ると、ご苦労様ですと小さく言い俺たちを送り出すのだった。
やっぱり今日もまともに試合見られなかったか。
つーか、こんなラフプレーチームを擁する学園の管理技能員さんがこんな穏やかでお上品なお婆ちゃんで務まるのだろうか?
俺は疑問を感じながらベルリッツさんの後に続くのだった。




