なぜか注目の的って素敵やん
「どこに連絡するの?アフレー隊長のとこ?」
俺は携帯型魔導通話機を調整しているフーカさんに尋ねた。
「いえ、今度の件は内部調査とは別件ですからモルツ中尉のとこです」
「国防軍?とりあえず衛兵隊じゃなくて?」
「最近多発している薬物事犯は領をまたぎ衛兵隊だけでは対応が困難になってきているのです。そこで機動力に優れた国防軍魔導二輪部隊が手助けする事になったのです。これはジミーさんの働きに寄る所が大きいのですよ?」
「ああ、わかってますよ。俺のせいだもんね、薬物事件がややこしくなったのは」
わかってますって、もう、何人から言われた事か。俺がハンドラーだのなんだのって怪しい団体やら怪しい商会やらと揉めちゃったもんだからその手の団体がアエシュマビジネスから一斉に撤退して、ハングレみたいなのが市場に介入したもんだから事体は全体像がつかみづらくなっっちゃったんだもんな。
これでも少しは責任感じてますよそりゃ。
「何を拗ねてるんです?別に悪い意味で言ったわけじゃないですよ?魔導二輪の開発はジミーさんの力あってこそですから、うちと国防軍の関係が強まったのもジミーさんのおかげ。そもそもトーラステクノロジーの発見もジミーさんが絡んでますから、こうした新技術の開発もジミーさんの働きが大きい訳です。あなたはちょっと自己評価が低すぎるきらいがありますねえ。良くないですよ?そういうのは」
「あ~い、きをつけまうす~」
俺はおどけて言う。ちょいとばかり痛い所を突かれたからだ。
「まあ、いいんですけどね。やる事はやっている訳ですし、別に誰に迷惑をかけた訳でもありませんから、と。良し、準備は整いましたジミーさんもういいですよ」
「あいあいさー」
俺はそう言って握っていた線をフーカさんに返す。フーカさんは手慣れた様子で線を携帯型魔導通話機に収納すると箱の上部を外して顔の横にあてがった。どうやらそれが受話器のようだった。
「ボンパドゥのフーカです……はい、例の件で早速。…ええ、一緒に居ますよ。本当に引きが強いと言うのか何と言うのか。…ええ、今回は学園の倉庫ではありません。恐らく密輸品の放棄物だと思われます。…はいネクトロン学園から北西に進んだ岸壁の洞窟奥です。はい、お待ちしてます、よろしくどうぞー」
受付嬢みたいな調子で通話を止めたフーカさん。
「で?なんですって?」
「すぐにここに来るそうです。それまで現場はなるべく弄らずそのままにしておいて欲しいとの事でした」
「え?ここで待つの?なんかやだな~」
「まだ心配しているんですか?大丈夫だって言いましたよね?まったく小心者ですね~ディアナちゃんの言ってる事もわかりますよ~」
フーカさんは意味ありげな笑みを浮かべて俺を見る。
「なに?ディアナと連絡取り合ってるの?ディアナの奴何言ってたんのよ?」
「だって友達ですもん。うちと共同開発の商品なんかもあるんですよ?知ってましたか?」
「ああ、そう言えばボンパドゥ共同開発とかってコーナーがあったの見かけたなあって、そうじゃなくってディアナが何言ってたのかって事だよ気になってるのは」
「ああ、それでしたら…」
「おいおいおいおい!なんだよ、先客がいやがるぞ?」
「あぶねえあぶねえ、お宝を横からかっさらわれちまう所だったぜ」
「お前ら何者だ?ああん?」
「かまうこたぁねえ、ぶっ殺して海に流しちまえ」
フーカさんが話している途中になんだかガラの悪い連中が乱入してきたぞ。
相手は四人、武器は短刀に棍棒か。
どうする?俺は目でフーカさんに問いかける。
「先ずは話し合いで解決できるか試してみましょう」
「う~ん、どうでしょうねえ」
四人組を見て俺は首をひねる。話し合いよりもドツキ合いの方が得意といった顔してるけどなあ。だいたい、いきなり殺して海に流せなんて言う人もいましたけど。
「おい、オメーら何をゴチャゴチャと」
「あなた方はここにある物の所有者ですか?」
ガラの悪い男が手に持った短刀をチラつかせながらしゃべりだした途端、フーカさんは良く通る声で男達に尋ねた。
「所有者?所有者だと?」
「ぎゃっはっはっはっは!所有者様と来たもんだ!」
「その所有者様がいないから俺らが頂きに来たんじゃねーか!」
「それともなにかい?お前らが所有者様だとでも言うのかい?」
「だとしたらどうします?」
凶悪な顔を歪ませて言う男達にフーカさんは毅然とした態度で言う。いや、毅然としたって言うよりもちょっと挑戦的な態度かな?顔がにやけているもんなあ。
「だったらお前らぶっ殺して頂いちまうまでよ」
「最初からそう言ってるだろ」
「いや、女の方は生かしとけ。楽しんでから売り飛ばしちまおうぜ」
「そりゃいーや!アエシュマに続いて女までとはツイてやがるぜ」
男達がいやらしい顔でゴチャゴチャ言ってる間にフーカさんは地面に置いたザックから厚みのある板を取り出した。板には何か突起の沢山ついており、なんだかリモコンのようだった。
「では改めて聞きますが、ここにあるアエシュマはあなた方の物ではないという事ですが、ではなぜここにあると知っていたのですか?」
「度胸試しでここに飛び込んだヤツが流されて見つけたのさ」
「その人はどうしたのです?」
「知ってどうしようってんだ?」
「もしかして殺したのですか?」
フーカさんの声に冷たいものが混じる。ちょっと怖いんですけど。
「ひっひっひ、殺しちゃいねーよ。だが、ここには来ねー、絶対にな」
「きっちりシメてやったやったからなあ」
「当分まともな飯は食えねえーんじゃねーか?」
「アゴが砕けて泡吹いてやがったからなあ」
男達は大笑いする。
「そうですか、ではここの事を他に知っている者は?」
「俺達だけに決まってんだろう?」
「そんな事を聞いてどうしよーってんだ?」
「お伝えしなければなりませんからね」
「誰に?」
男が怖い目で聞く。
「それをあなた方が知る必要はありません」
「なんだと!」
「大人しくしてりゃあ図に乗りやがって!」
「やっちまえ!」
「最初からそう言ってたろうが!」
男達が一斉にいきり立つ。とその時、フーカさんは手に持った板の先を男達に向けて突起を押した。
「がっ!」
「ぎい!」
「ぐうう」
「ゲッ!!」
板の先から短い矢のような物が飛び、それが刺さった男達は身体を硬直させて昏倒した。
「ふうむ、もう少し威力を落としても良かったかもしれませんね」
「なにそれ?術式武具?」
「はい、ジミーさんの得意技から拝借しました」
「俺の?」
「ええ、空雷弾と言いましたっけ?風魔法のエアバレットに帯電させたものを放つ技の」
「うんそう」
「さすがに現在の魔導テクノロジーではそこまで再現できませんので帯電させたダーツを放つようにしてあります」
「へえ、なるほどねえ。こりゃ凄いじゃん、非殺傷武器として有効じゃないの?」
「まだまだ課題は多いですよ。できればアエシュマ常用者がひとりでも居てくれたらそのデータも取れたんですけどねえ。今からでも摂取させてそれからもう一度撃ち込んでみましょうか」
「やめなさいって。電撃系の攻撃は興奮状態の相手には効きが悪い事もあるけど、場合によっちゃ危険な事もあるからね。アエシュマのような薬物常習者だと電気のショックで突然死する事もあるらしいよ」
「ホントですか?」
「まあ聞いた事があるって程度だけど、その人は幾度か見た事があるって言ってたね」
「ふうむ、そう言う事もあるんですね。完全な非致死性攻撃とは言えないんですね」
「その人は低致死性攻撃だと言ってましたよ」
俺はフーカさんに言う。勿論、この話は誰かに聞いたものではなく前世で見聞きした話である。
「なるほどねえ、威力の問題だけでもないって訳ですか。これは研究のし甲斐がありますね」
フーカさんは更なる闘志を燃やし始める。ううむ、このお人はやはりたいしたお方である。
まあ、因みにだが完全なる非致死性武器なんてものは存在せず催涙ガスでもゴム弾でも低致死性武器なのだ。相手の体格や状況、体調などにより危険度は違ってくるからそれは仕方がないのである。
なんせ、世の中には面白い事があって笑い死んだ人やキスされて出来た内出血で血栓ができ死んだ人なんかもいるんだ、そういう意味じゃ笑いやキスも完全なる非致死性ではないと言えるわけだ。
そんな話をフーカさんとしている所にモルツ中尉達が到着、フーカさんは俺の話を面白がってメモをとっていたので俺が代わりに状況を伝える。
「さすが持ってますねえ」」
モルツ中尉は感心したようにそう言うと、部下に転がっているゴロツキを引っ立てるよう指示した。
「ああ、彼らがここの情報を聞いた相手と言うのもしっかり調べて事情聴取しておく事」
「イエッサー」
モルツ中尉から追加の指示を受けた兵士は歯切れの良い返事をしてゴロツキ共を引っ立てていった。
「あ、そうだ!モルツ中尉…」
メモをとり終わったフーカさんはモルツ中尉にネルトロン学園用具置き場の件を話し、捜査終わりにはトビラは締めておいてもらえるようお願いした。
モルツ中尉は了承し、最後に俺を見ると持ってますねえと笑ったのだった。
その後、急いでネルトロン学園に戻り管理技能員さんに事の次第を伝えると非常に感謝され、地下の井戸跡を埋めるか学園長と相談するとおっしゃられた。
そうして本日の便利屋業は完了し俺は、いや俺たちはグラウンドへと急ぎ向かう。
俺たちと言い直したのは、どういう訳かフーカさんもついて来たからだ。
到着したら試合は既に終了しており結果は三対二でドギューズの勝利であった。
ううむ、スパイラルクイーンズの魔卓機ベリンボール観たかったのに!
と、悔しがってる暇もなく我々は午後の練習試合へと向かう。
今日は一日二試合のハードスケジュールなのだ。
そうして次なる対戦相手が待つニューアイリオン学園へ我々は魔導列車で向かう。
列車内で早めの昼食を済ませたドギューズのメンバー。
俺もひと仕事終えて腹が減っていたので一緒に昼食を取り一休みしているとフーカさんが話しかけてくる。
「忙しいですねえ」
「まあ、学祭前だからね、みんなこんな感じよ。ところでフーカさんはどこまでついて来るつもりなの?」
俺は尋ねた。
「何言ってるんですか?あなたの便利屋業がある限りついて回りますよ、なにしろ国防軍、技術局、帝国保安局の御三方からのご依頼ですからね。これだけ注目を集めているって事、ジミーさんも心得ておいて下さいよ」
フーカさんは当然でしょ?と言った感じに話すが俺は初耳だ。
「え?そうなの?モルツ中尉のトコとアフレー隊長のトコだけじゃないの?それに帝国保安局って?」
「それがアフレー隊長さんの所属する組織ですよ。正確には帝国保安局国内課ムーモン衛兵隊です。そして技術局は今度の件で新製品の有効性をアピールし来年度の予算額アップを狙っているのでくれぐれもよろしくお願いしますよ?うちの研究予算とも直接かかわってきますからね」
「結局それかあ」
鼻息荒いフーカさんに俺はぼやいた。この人は本当に研究バカ一代だよ。金なき研究は無能なり!研究なき金も無能なり!とか言いそうだなこの人は。
「ふふふっ、午前中だけでも随分沢山確認できましたからねえ。これは午後もきたいできますよ~」
ザックの中をかき回しながらほくそ笑むフーカさんなのだった。




