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仲間にするのに必要な事って素敵やん

 「つーかクルちんってマジで彼女いないの?」


 「ケイトちゃんが彼女なのかと思ったけど違うの?」


 前を歩くベーやんがおかしな事を言いメイがそれを受けてくるりと俺の方を振り返った。

 

 「はい?違いますけど?」


 俺は答える。


 「そりゃそーでしょ。ケイトっちみたいな極上の女、クルちんごときに捕まえられるわけがない」


 シーボーズがキツイ事を言う。


 「わかりすぐるわ。つーかなんでケイトっちクルっちんの事、ジミーさんって言ってんの?確かディアナちんもそう呼んでたよね?」


 「そうそう、うちもそれ気になってたー」


 「私、彼女だから特別な呼び方してんのかなと思ったのよねえ」


 みっちょんが言い、ベーやんとメイがそれに続き俺を見た。


 「なんだっていーだろ」


 俺は一から説明するのがあほらしくてそう言った。


 「なになに?そんなにヤバイ理由なの?えげつないド下ネタとか?」


 「マジマジ?聞きたーい!教えろ教えろ!」


 「今すぐ言った方が身のため」


 みっちょんとシーボーズが俺に詰め寄る。あんま身体を密着させるなってんだよ!オメーらみたいなアンポンタン娘どもでも一応うら若き乙女なんだぞ?


 「待て待て、教えるから勘弁してくれ。ディアナがな、俺の顔は地味だからジミーだって言い始めてさ、それが始まりって訳」


 俺はふたりを押し返して返答した。


 「あ~なるほどね~。さっすがディアナちゃん!上手い事言うわ!」


 「どこがじゃい!」


 手を打って言うベーやんに俺はツッコみを入れる。

 皆はそれをみてケラケラと笑った。

明るい雰囲気の俺達だったがべーやんの案内で進んで行く道はうらぶれた寂しい雰囲気が漂うようなって来た。


 「ここ?」


 崩れ落ちた昔の大きな建築物の前で足を止めたべーやんにシーボーズが聞く。


 「そう」


 「マジで?こんなとこに人住めんの?」


 短く答え廃墟に足を踏み入れるべーやんに顔をしかめるみっちょん。


 「シーマンがいるってんだからいるはずよ。名前なんてったっけ?」


 「ジンジャー。ゼン・ジンジャー」


 クルリと振り返って尋ねるべーやんに答えるメイ。


 「ジンジャー!居るんでしょー!居たら返事をしてー!」

 

 「ジンジャー!」


 「おーいジンジャー」


 「ジンジャー!いるのー!」


 ベーやんが叫ぶとみっちょん、シーボーズ、メイも続いて声をかける。


 「ジンジャー!出ておいで遊びましょー!ジンジャー!」


 「ふざけないで真面目に探せ」


 前世で大好きだったストリートギャングの逃走劇映画にて、終盤敵の悪者ギャングが主人公ギャングを呼ぶときのフシ、それも吹き替え版でのフシでやってたらにシーボーズに怒られちゃった。シーボーズのくせに生意気な。


 「ふぇ~い」


 俺はわざと気の抜けた返事をしてから深く呼吸をし周囲の気配を探っていく。

 前にいるベーやん達の気配、それと廃墟のもっと奥に複数の気配。それもなにやら殺気立った気配が感じられた。


 「おい、奥に誰かいるぞ、気を付けろ」


 俺は大きな声を出す。と、同時に前方からべーやん達以外の誰か男性の怒声が聞えてくる。

 スタタタっとシーボーズが駆け出して行く。

 ゲイルダッシュで後に続いた俺の目に入ったのは、筒状の物をべーやんに向けた男の顔にシーボーズのドロップキックが入るところだった。

 

 「ざけんなよっ!」


 メイがそう叫びながら転がった瓦礫を他の男達に投げつける。前に見える男の数はケイトに蹴飛ばされた奴を除いて五人。

 

 「待てメイ、そんな事で肩を使うな。勿体ない」


 「でも」


 「いいから見てろって、うちのチームの実力を。お前らも巻き添え食わないように引っ込んでな」


 次の瓦礫を投げようとするメイを止め、残りの連中にも釘をさす。

 

 「だって相手多いよ?」


 不安そうな顔をするメイ。

 

 「ダイジョブだってほら見てみな」


 みっちょんとべーやんは素早く動き回ると男の術式武器から発射された火の玉は他の男の胸にあたって四散しその男は火まみれになり叫びながら地面に転がった。シーボーズが近くにいた男のケツを蹴っ飛ばし炎上して転がる男の上に倒す。

 

 「うわっ!!」

 「うぎゃあぁぁぁ!早く!助けてくれーー!!」


 炎悲鳴を上げ転がりまわる男ふたりの火を必死で消す他の男達。


 「ちっとやり過ぎちゃうみんな?」


 俺は思わず声を出してしまう。


 「あんたらここで何してんのよっ!」


 メイが大きな声を出す。


 「あんた達もこいつに用があったのか?でも残念だったな、こいつの身柄はうちで預かる事になってんだよ」


 奥から背の高い細身の男がゆっくり歩いて来て俺達にそう言った。男の後ろにはボロキレみたいな服を身にまとった女性が別の男に刃物を突き付けられている姿が見える。


 「ジンジャー!ジンジャーなんでしょ?怪我は無い?大丈夫なの?」


 「この子達は関係ないの!関係ないんだから!」


 下を向いたまま叫ぶ女性。やはりジンジャーなのか。

 俺は深く呼吸して体内の気を回す。この場に後何人いるのか、まだ伏兵は居るのかそいつを確かめないとうかつな動きはできない。そいつを確かめるまで、時間稼ぎを誰か。

 俺はすがるような目でみんなを見る。すると、驚いた事にこっちの意図を察し口を開いたのは怠い怠いとばかり言ってるみっちょんだった。


 「ちょっと待って?お宅さん達、彼女の借金の取り立てに来たんでしょ?だったら、こんなとこで争わなくてもなんとかなると思うんですけど?、こう見えて私、お金持ちのお嬢様だからお金はあるのよお金は。パパに言えばその子の借金くらいなんとでもなっちゃうんだから」


 「ふ~ん、その制服はファルブリングカレッジか、なるほどねえ。確かに世間知らずのボンボンってツラしてるな、なあ?」


 「ナムデイさんの言う通りでさあ!まったく腑抜けたツラしてやがるぜ」


 長身細身男が言い、女性に刃物を突き付けている男が追従し他の男達も笑い出した。どうやら細身長身男の名前はナムデイと言うようだ。ナムデイがこいつらのリーダー格と見て間違いないだろう。俺は気配察知の範囲を広げる。


 「あは、あはっあはっ。そう言う事だからお金で解決しましょ?ね?それが一番いいんじゃないかしら?お互いに」


 「こっちは手下がふたりいかれてんだ。ちょっとやそっとの額じゃあ済まないよお嬢ちゃん」


 「なんだとっ!みっちょん!こんな奴に金なんか出す事ないよっ!」


 「まあまあ、ケガするよりいいじゃない。ほら、私のパパってちょっとやそっとの金持ちじゃないから、そりゃもうスッゴイんだから」


 憤るメイを制止して言うみっちょん。いいぞ、その調子だ。奥のフロアからは人の気配なし。次は二階だ。


 「へえ、そんなにお金持ちなのかい?」


 ナムデイが瞳をキュっと細めて嬉しそうに笑って言う。得物を見つけた肉食獣の顔だ。せいぜい笑ってろよ、今の内にな。


 「うん、パパの知り合いも偉い人ばっかりだもんね。ご領主さんとか国防軍の人とか近衛兵団の師範さんとか、あと誰がいたっけ?」


 ペラペラと喋るみっちょんの話を聞いてナムデイの表情が微妙なものになった。もしみっちょんの言ってる事が本当だとしたら、こんなヤツに下手に絡んだらドエライ事になっちまうんじゃないか?とそんな事が脳裏によぎったんだろうな。

 みっちょんの表情が緩み意地悪な笑みが垣間見られた。こいつ、調子に乗り始めたな。俺は急いで二階の気配察知をする。


 「そうだ、あとワットモウ王国の第一王子さんとかも来てくれたっけ」


 「このガキっ、ワットモウの第一王子は国外に出ない事で有名だ!そんな人が来るわきゃねーだろっ!ハッタリかましやがって!」


 「あっ、間違えた、第二王子だった」


 「バカ野郎!第二王子は国際経済機構の代表としてゴーエンツェレシュ入りしとるわっ!新聞読んどらんのかっ!つまんねーハッタリかましやがって!」


 みっちょんが下を出してテヘヘってな具合に俺を見る。おいおい、諦めてどうすんだ。ってまあ、こっちの気配察知はなんとか間に合ったからいいけどさ。

 俺は音も無くしゃがみ込み、地面すれすれに寝た形でゲイルを使い滑るようにジンジャーの下に行くと彼女に刃物を突き付けていた男に空雷弾を喰らわし、即座に二回へジャンプする。半壊した二階の瓦礫の影に隠れて術式武具を構えていた男に空雷弾を喰らわす。

 二階の別の場所で隠れてる奴がこちらに気付き、隠れていた瓦礫から身を起こして術式具を構えるがお前の場所は既に察知済みだ。俺は空雷弾をそいつに喰らわすと、二階に隠れていたもうひとりの男にも空雷弾を喰らわし一階全体が見渡せる場所に陣取り空雷弾で男達を狙撃して行く。


 「やっちまえ!っておい!ポック!どこ行った!」


 ナムデイが叫ぶが時すでに遅し。

 

 「メッテ!ビスト!ボン!オメーらどうした!」


 次々と地面に崩れ落ちる男達を見てナムデイが混乱して大きな声を出す。


 「いいぞ!みんな!」

 

 俺が声をかけると地面にへたり込んだジンジャーの元にメイが駆け寄り、ナムデイの後ろに回り込んでいたシーボーズがニヤリと笑って手に持った棒を振り上げた。


 「ナムデイさん、おつかれさん」


 「こいつっ!じゅっ!」


 懐から出した術式具を握ったままナムデイは頭に一打を喰らいピーンと硬直して地面に倒れた。


 「うおっ、ちょっと今の倒れ方やばかったか?」


 棒が倒れるようにバターンと倒れたナムデイを見て俺は思わずそう言ってしまう。


 「気にしなくていんじゃね?こいつら、持っている武器やばいもんばっかりじゃん。だったら自分もそれなりの覚悟はしてるっしょ?」


 「うわっ!ベーヤン怖っ!ちょっち引くわぁ~」


 「いや、むしろ甘い。こんな奴ら殺して良し」


 笑って言うみっちょんに怖い事を言うシーボーズ。


 「ジンジャー?大丈夫?」


 「平気よ。とりあえずありがとうと言っておくわ。それじゃあ、ね」


 メイに抱えられるようにして立っていたジンジャーは、最後の力を振り絞るようにしてそう言うとよろめきながら歩き出した。


 「危ないっ!」


 よろめいて倒れそうになったジンジャーに思わず手を貸すシーボーズ。


 「だいじょぶだから」


 小さな声で言い再び歩き出すジンジャー。


 「待ってジンジャー!私…私、あなたに色々話したい事があるのよ!ゴメン、ゴメンねジンジャー」


 「謝らないでっ!!!謝らないでよ…私がみじめになるじゃない…」


 メイの言葉に一瞬激高したジンジャーは徐々に言葉の勢いをなくししまいにはその場にへたり込んでしまった。

 即座に駆け寄ったメイはジンジャーにかぶさるようにして抱き寄せた。

 ふたりの肩が震えている。

 俺はただそれを見ているしかできなかった。

 

 「つーか、いつまでもこんなとこいない方が良くない?こいつらの目が覚めるかもしれないし」


 「だから殺した方が良いと言った」


 べーやんが言いまたもやシーボーズが物騒な事を言う。


 「シーボーズがホントに殺しちまう前に行くか」


 俺は皆に言う。


 「ふふふっ、こいつが血を吸わせろと騒いでる」


 「よしたほーがいいよ、そんな誰のもんかわからないもん触るの。ばっちぃーよ?」


 落ちてたナイフを手に取り不敵な笑みを浮かべるシーボーズに顔をしかめて言うみっちょん。シーボーズは急いでナイフをほっぽり投げ傍に倒れている男の服で手を拭いた。お前、いい加減にせいよ。

 シーボーズのすっとぼけた振る舞いに毒気を抜かれたか、メイとジンジャーは身を起こして少し笑った。

 

 「とりあえず、シーマンのとこ行こ。シーマンも心配してたし」


 べーやんの提案に頷いた俺達は一緒にまたあの作業部屋に向かった。

 シーマンはまだ作業部屋におり、俺達が顔を出すと笑顔で歓迎してくれた。

 

 「シャワーお借りできますか?」


 申し訳なさそうに問うメイ。


 「私は構わないけど…」


 そう言ってジンジャーを見るシーマン。恐らく、以前も風呂を貸そうか?とか何かしらの援助を申し出て断られた事があるんだろうな。ジンジャーって子、かなり肩ひじ張って生きて来たみたいだからな。でも、もう大丈夫じゃないかな?

 

 「お借りできますか?」


 ジンジャーが小さな声で言うとシーマンはにっこり笑って優しくジンジャーの肩をポンと叩き部屋の奥に連れて行った。


 「覗きに行くなよジミー」


 「行かねーっちゅーの!!」


 ニヤニヤしながら言うべーやんに俺は強めに返す。こいつは強めに返さんとあかんタイプと見た。


 「いや、ベーが言わなきゃジミーは行ってたね。そんな顔してるもん」


 「縛っておいた方が良い、ケダモノの目をしてる」


 「お前らえーかげんにせいよ?」


 変な事を言ってお互い頷き合うみっちょんとシーボーズを俺は睨んどく。こいつらも強めに返さんとあかん口だ。


 「みんな、ありがとね。ホントに、ありがとう」


 「何言ってんの。こっちこそ、ありがとーだよ」


 「いや、だって、まだジンジャーがチームに入るかわかんないのよ?」


 メイが嬉しそうにそう言うべーやんを見て不思議そうな顔をする。


 「それでも、いいの。だって、なんかスッキリしたっしょ?そっしょ?」


 「あ、それな、ベーいいこと言うわ」


 「ベーにしては、だけど」


 みっちょんとシーボーズが言うとベーヤンは殴る真似をしてみせた。こうしてると年相応の女の子って感じで可愛らしいんだけどな。

 

 「ほら、見違えたわよ~」


 ホクホク顔のシーマンの後に部屋に戻って来たジンジャーは、小ざっぱりした白のワイシャツにパステルカラーの膝下丈パンツを履いて現れた。ジンジャーは照れ臭いような眩しいような何とも言えん表情を浮かべていた。

 汚れをすっかり落としたジンジャーは前世で観た昆虫と交信できる少女が殺人鬼と戦うジャッロ映画の主演女優によく似た美少女であった。


 「お!めっちゃイケてる!メー姐さんといいうちら美少女軍団じゃね?」


 「自分で言うのが凄い」


 「メー姉は少女じゃなくね?美女じゃね?」


 べーやんが言うとシーボーズとみっちょんが即座にツッコミを入れた。


 「あら、こう見えても私とジンジャーは同級なのよ。まあ、確かにジンジャーは童顔だけどね」


 「そんな事よりあなた達、彼女に何か言いたい事があるんでしょ?それを伝えなきゃダメじゃない」


 笑って言うメイに続いてシーマンが穏やかな口調で俺達に言った。

 メイはじゃあ、改めてだけど、と前置きをして話し出した。

 自分の置かれていた境遇からファルブリングカレッジベリンボールチームに加わる事になった経緯を、そして自分が加わってもチームの人数が足りない事、その時に思い浮かんだのがジンジャーである事を時折震える声で説明したのだった。


 「話はわかった。あなたは私に誠意を見せてくれたし、あなた達は私を助けてくれた。だから、チームに加わるのは構わない…」


 ジンジャーの言葉にメイ達が喜びの声を上げたがジンジャーの表情は晴れない。


 「…でも、私の事情を聞いてから決めて欲しい。じゃないと迷惑がかかるから…」


 ジンジャーは真剣な表情でそう言い続きを語り始める。まずは祖父が亡くなった理由だが、祖父の経営する木工所の経営が厳しくなり従業員が皆辞めてしまい、祖父ひとりでやらなければならなくなった事に端を発する。祖父は寝る間も惜しんで働いていたため製品を出荷しにでたある日、居眠りして馬車ごと崖下に転落してしまったのだった。

 ジンジャーも祖母も悲嘆にくれたが、悲しんでばかりもいられなかった。なぜなら、馬車が積んでいた製品の代金は既に貰っており、しかもその前払金は借金の返済にあてすでに手元に無かったことが判明したからだ。

 違約金を支払うか期日までに製品を納品するか選択肢はふたつだったが、祖母もジンジャーも祖父に任せっぱなしにしていたため木工細工などやった事はなかった。

 それで結局作業場と住居を売り払い、それでも足りない分は月割りで返していく事となったのだった。

 ジンジャーは学校を辞め、祖母と一緒に安い借家に住んだ。

 祖母は裁縫の内職をし、ジンジャーは昼間は魚を配る仕事を夜は屋台の売り子をして稼いだ。

 そんなある日、屋台の常連客がジンジャーに気になる話をした。

 その客は祖父の死因にはおかしなところがあると言うのだ。

 馬は賢いから御者が眠ってしまってもそうそう崖なんぞ落ちるものじゃあない、何か他に理由があるんじゃないか?例えば何者かに激しく追われたとか無理矢理突き落とされたとか、知り合いに衛兵がいるから調べ直して貰ったらどうだ?とその客はジンジャーに言うのだった。

 ジンジャーはその客にお願いする事にした。

 ところが。


 「…そのお客さんに言われた場所に行ったら誰も来なかったのよ。調子の良い事言って気を引こうとしただけだったのかなってその時は思った。でも家に帰ったらそうじゃない事がわかったの…」


 家に帰ったジンジャーが見たのは家探しされて荒れ果てた室内と消えた祖母の姿だった。

 ジンジャーは驚き、すぐに衛兵へ知らせた。

 衛兵は何か無くなっている物はないかと尋ね、よく見てみないとわからないが今の所なさそうだというジンジャーの答えを聞くと、このところ外国人による窃盗が流行っているから気を付けるようにとだけ言って帰ろうとしたそうだ。

 ジンジャーは慌てて、窃盗よりも行方不明になった祖母を探して欲しいと言った。

 恐らく自分が留守している時に部屋を荒らされて責任を感じて家を出たんだろう、子供じゃないんだし、そのうち帰って来るでしょう、帰ってこない日が続くようならまた連絡しに来なさい、と言って結局衛兵は帰ってしまった。


 「酷いっしょ!許せないっしょ!」


 「まあ、この辺はあまり治安がいい場所じゃないからね。衛兵もそんな小さな事件には本腰入れないものなのよ…」


 ベーヤンが怒るとジンジャーは軽く笑ってそう答え話を続けた。

 ジンジャーはその夜、ひとりで祖母を探した。夜の街を歩き回っていると男の集団に囲まれゼン・ジンジャーかと尋ねられた。

 直感的にこいつらが祖母の行方不明に関わっていると感じたジンジャーは、祖母をどこにやったの?返してよ!と男達に掴みかかった。

 男達はそれに答えずいきなりジンジャーを殴りつけた。

 殴り飛ばされ転がったジンジャーが見たのは懐から刃物を出す男達の姿だった。

 こいつら私の身体が目当てじゃない、本気で殺す気だと直感したジンジャーは近くにあった酒瓶を投げまくり命がけで走った。

 ベリンボールの現役を退いてまだ間もなかったので走る事には自信があったジンジャーは、ほぼ一晩中走り回り男達からは無事に逃げおおせた。

 

 「…その後私はしばらく地元を離れて情報を探る事にしたの。私、昔から勘が働く方でね、やっぱりあの時、逃げて正解だったわ。情報収集しているうちにとんでもない事がわかって来たのよ…」


 どうやら祖父の死に関わっているのはベルツザルグ一の大商会ビッグプレイスの会長、ファスト・ビッグプレイスらしい事がわかったのだ。


 「ちょっと、ビッグプレイスって言ったらこの街のボスみたいなものよ?この街で暮らす者ならみんななにかしらのかかわりを持っている程よ。そんな大物がどうして?」


 シーマンが驚きの声を上げる。

 街の人のほとんどがかかわりを持って生きるような大商会の会長が、なぜいち木工所のお爺さんの死に関わっているのか?

 ジンジャーの話はまだ続くのであった。


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