だめだめチームって素敵やん
ベリンボールチームの助っ人制度は正式にオーケーを貰う事ができた。
できたのだが…
「なあジミー?助っ人の当てはあんのかよ?」
「そこなんだよなあ」
「おいおい、頼りない返事すんなよ~」
俺の答えにディアナが顔をしかめる。
実際、なんの当てもないんだから仕方がない。
「とりあえず部室に行きましょう。今ならまだ部員がいるはずですから、この件を教えてあげましょう」
ケイトに言われて俺達はベリンボールクラブの部室へと向かった。
「皆さん!朗報ですよ!」
ケイトが明るい声を上げてトビラを開ける。トビラには木を切り取ったかわいらしい文字で『ドギューズの部室』と貼られ語尾にハートマークが付けられていた。
女の子っぽいねどうも。ちょっと闘争心に欠ける所があって試合に勝てないのかな?と俺はチラリと思いながら部室に入った。
「チュース」
「あ、ケイト氏だぁ~」
「……」
「いいよ、そんな頑張らなくて」
「そんな事言ったら悪いっすよ」
五人の女の子がケイトにそう答える。
俺は部員達の顔を見る。なんだか締まりがないように感じるが。
「皆さん、親善試合に向けて学外からの助っ人が認められました!拍手!」
「わー」
ケイトが言ってディアナが声を上げ拍手をする。部員たちはしらこい目で見てるだけだった。
「だったら、フルメンバー助っ人で行けばいいじゃん」
先ほどケイトにそんなに頑張るなと言った女生徒が言う。この子はまったくやる気がないようだ。
「ざっけんなっちゅーの!うちらだけでフルボッコだっちゅーの!」
最初にチュースと軽い返事をした女生徒が大きな声を出す。この子はやる気はあるみたいだけど、勢いだけって感じがするなあ。
「ちょ、とぅっふ、み、皆さん、ケイトさんまだお話しがあるみたいですし」
「うっせー!オメーはいつもビビり過ぎなんだよ!」
そんな事を言ったら悪いとたしなめた子がおどおどしながら声を上げると、やる気はあるけど勢いだけっぽい女生徒が怒鳴って持っていた菓子の袋をぶつけた。
ケイトの声に無言だった女生徒は無言のまま何やら本を読んでいるし、ケイト氏だぁ~、と気の抜けた返事をした女生徒は周囲の事をまったく気にせず爪を塗っている。
むむむ、こやつらが勝てないのはどうやら闘争心とかそんな問題じゃあなさそうだぞ?
「皆さん、実はこちらにいるふたりは私達の事情を聞いて協力を申し出てくれたんですよ、ささ、ふたり共、自己紹介を」
ケイトが部員達の顔色を窺うように言った。ケイトにしては珍しい態度だ、それだけ責任を感じているという事か?
「ディアナだよ、よろしく」
ディアナは明るく言って右手を上げた。こいつは相変わらず誰に対してもフレンドリーだなあ。
「知っとるっちゅーの!こないだはお菓子おまけでありがとニィ―!」
おかしな言葉遣いでディアナに手を振ったのは爪を塗ってた子だ。他の生徒もディアナの事は知っているようで概ね好意的な対応だ。まあ、ディアナは購買部で働いて上に一般向け授業なんかも参加してるからな、顔が広いんだよなとにかく。
んじゃ俺も続きますか。
「クルースです、よろしく」
「え~~!なんで男がいるわけ~~。テンション下がるんですけど~」
爪を塗ってた子が口を尖らせて言う。
「こんな腑抜けた面の奴にできんのかよ?ベリンボールは戦いだぞ?あん?」
勢い勝負の子が俺を値踏みするように見る。
「だるっ、マジだるっ。こいつがいると着替えもできないじゃん。マジだるっ」
助っ人フルメンバー説を唱えたまったくやる気のない子が俺を汚物を見るような目で見て言う。
くぅ~、なんだよめっちゃアウェイじゃんかよ~。もう、これ以上付き合うのやめようかな。一応、校外助っ人オッケーにしたし、仕事はしたよな。
「あんた、もしかしてこれの人?」
終始無言で本を読んでた子が突然立ち上がり持っていた本を俺に見せた。
「これって、何これ?」
俺はその本を手に取って見る。タイトルは『口八丁手八丁商人の冒険~私の好きなインチキ会長~』とある。作者はマリブラと書いてあるのを見るとルブランの作品のようだ。
裏表紙にある内容紹介を見ると、孤児を集めて商会を作ったミードルは巧みな言葉で人々を煙に巻き数々のトラブルを解決していく。これはそんなインチキ会長を一番近くで見ながら時にサポートし時に助けられ共に歩んで行く番頭ミーナの物語、とあった。
おいおい、なんだよこれ?
「この八丁会長ってあなたの事でしょ?ねえ?ねえねえ?あとがきでマリブラ先生書いてるんですけど?ねえ?」
「はいはい、そこまでー!それ以上は作者の意向にそぐわないので追求しないで下さーい!」
ディアナが割って入る。
「え~?つーかそれじゃあディアナちゃんがミーナって事?だとすると」
「だぁーー!ストップストップ!作品を愛してくれているのならそこまでで止めてておくべし!それが好事家の嗜みなり!」
俺の手から本を奪い取りぶつぶつ言いながら席に戻るマリブラファンの子をたしなめるディアナ。
「はい、それでは今度は皆さんが自己紹介して下さいねー。まずはキャプテンからどうぞ」
ケイトが言うとやる気はあるけど勢いだけっぽい子がすくっと立ち上がった。
「キャプテンのティア・マーシャルだ。なめんなよ?」
赤い髪をポンパドールリーゼントにしたマーシャルが俺を睨みつけて言う。別になめちゃあいないけど。
マーシャルが座ると隣りにいた爪を塗ってた子が立ち上がる。
「ロジー・ベイカー、レギュラーだみょ。にょりーったん」
ピンク髪をハイツインテールリングにしたベイカーは早口でそう言い目の前で横ピースする。つーか、そんな長い爪で運動できるんすか君?んでレギュラーって、そりゃそうだろ。
ベイカーが座りルブランファンの子が立ち上がる。
「パティ・シンプソン、見てるから」
ブルネットおかっぱ頭のシンプソンはチョキにした指で自分の目を指した後、俺を指して言う。勘弁してくれよ、もう。
シンプソンが座りもろやる気無しの子が立ち上がる。
「キャスリーン・ミラー、別に好きにすればいいけどダルイのは勘弁ね」
シルバーがかったブラウンヘアーを切りっぱなしのボブにしたミラーが肩をすくめて言う。う~ん、やる気無し子ちゃん。
ミラーが座りおどおどしてた子が立ち上がる。
「わ、私はパっ、パトシリアじゃなくって、ぱとりしら、パトリシア・ソロトト、ニック…」
「テメーの名前ぐらいサラッと言えんのかい!」
「まあまあ、熱くなんないで。ほら続けて続けて」
キャプテンのマーシャルが切れてやる気無し子ミラーがなだめる。ミラーって子は思ったよりムードメーカ的な所がある子なのかも知れんな。
「す、すみませんす。パトリシア・ソロニックです。あのー、つかぬことお伺いしますが…」
金髪高めお団子ヘアーのソロニックはおずおずと俺を見る。
「なんでしょう?」
俺はなるべく優しく言う。
「く、クルース様はもしかしてギライス祭史上初のバスガルゴールを決めた、あの」
「いやそれはフェロウズな」
俺はソロニックにツッコんでおく。
「いえ、あの、そうじゃなくってバスガルゴールのアシストをしたあのクルース様ですか?」
ソロニックはキラキラした目で俺に言う。
「まあ、そうだけど、その様ってのやめてくれない?」
「えーー!マジかよ!つーかギライス祭のクルースっつったら、シタルカネをやったクルースだろ?」
「うっそ?エロ教師撲滅委員会のクルース?」
マーシャルとベイカーが身を乗り出す。
「まあまあまあまあ、静粛に!この冴えないフェイスのお方こそがそのクルース様って訳よ。わかったら、静かに話を聞くように」
ディアナが言うと、身を乗り出してたふたりはマジかよ?ヤバくない?と言いながら席に着く。何がヤバいんだっちゅーの。もう、このこの子らと一緒にいると疲れるんですけど?まだ、街のチンピラやら謎の組織やら魔獣やらとお付き合いしてた方が疲れないよ。
とほほのほ。




