終わりよければってまだなの?って素敵やん
ダーミット副長に経緯を話してから改めて倉庫の中に入る俺。
倉庫の中は半分以上の荷物が瓦礫にうずもれるか燃えているかで、まともに確認できる荷は半分以下であった。
それでも丁寧に見て行くうちにファルブリングカレッジの校章のついた荷物を幾つか発見できた。少なくともここに盗品があった事は確認されたのだった。
「副長殿!これを!」
衛兵さんが木箱を抱えてダーミット副長に見せた。蓋の開いた木箱の中身は個包装された白い粉であった。
副長さんはジャケットのポケットから短い筒を取り出すと粉の入った袋に向けた。
筒からは光が出て白い粉が青く光った。
「間違いないアエシュマだ、それも高純度の」
「やはりですか」
副長さんに言われた衛兵さんは難しい顔をして頷いた。副長さんが持っていた筒はどうやらアエシュマ探知のための術式具だったようだ。ペロ、これは!みたいなのも見てみたかったな。
「クルースよう、ちょっといいか?」
おずおずとビゴロ君が話しかけてくる。お?どした?妙に委縮した感じだが?
「ああ、どうした?」
「いや、さ。なんだか一応、決着はついたみてーだしさ。もう、いいかな?」
「ん?何がだ?」
俺はビゴロ君に尋ねる。
「いや、だからよう、こんなに衛兵だらけじゃどうも落ち着かなくってよう。わかんだろ?」
少し離れたところでベッカ兄弟やスベン君がひきつった笑みを浮かべオレに向かって手を振っていた。
「大丈夫だって、俺からも事情を話してあるし。ほら、君らだって色々と言いたい事もあるんじゃない?結果としてはこの件の黒幕に酷い目に遭った被害者なんだからさ」
「ドッジとバウミーは連行されちまったし、俺達の方はもういい、ホントにいいんだ。マジで」
ビゴロ君は噛み締めるように言って俺を見た。
「いいのかい?きちんと話を通せば被った被害の補償なんかも出るかもしれないよ?」
「いい、いい!皆で話し合ったんだよ、俺達だってそれなりのワルだ、こんな時ばっかり国に頼ってんじゃカッコがつかないってもんさ。パクられないだけありがてぇって事でよう、この辺で流れ解散って感じで願いたいんだよ」
スベン君達がコクコクと激しく頷いている。ふふっ、気持ちはわからんでもないな。これだけ衛兵さんが沢山いると悪いことしてなくても責められそうで座りが悪いんだろうな。
「彼ら帰りたいみたいなんですけど、帰って貰っても良いですか?」
「ふふふっ、いいですよ。お名前も聞かせて頂いてるようですし、何かあったらクルース君にお願いしますから」
「はははははっ、任せといて下さいよ」
冗談なのか本気なのかわかりずらい表情で言うダーミット副長に俺は乾いた笑いで返す。
「解散で大丈夫だって」
俺はビゴロ君達に声をかける。
「ワリーな、んじゃーよ、またな」
ビゴロ君は照れ臭そうに笑って言った。
「今度は仕事で、な」
スベン君が言い、俺は笑って手を上げる。だから、俺は実務に携わってねーっちゅーのに。
「世話になったな、楽しかったぜ」
ベッカ兄が笑って言う。
「けっ、どっちがツエェーかいずれ決着をつけてやるからな!あばよ!」
ベッカ弟はちょっと拗ねたような顔して言い兄に軽く小突かれた。
「じゃーな!またなー!」
「ばいばーーい!!」
「またどこかで!」
俺、ハリアー君、ファブロー君は馬で去って行く彼らに声をかける。
「いやー、いっちゃったねえ」
ハリアー君がちょっと寂しそうに言う。
「なんか、昔からの知り合いみたいな気がしちゃうな」
俺はハリアー君に言う。
「ふたりとも感傷にふけってる場合じゃないっす。学園に報告なくていいんすか?」
「あ!いけねっ!ちゅーか、ストーム聞いてねーのか?」
俺はニット帽型通信機の耳辺りを押えて言う。
「聞いてるよ、いけねじゃないっしょ、もう」
ストームの声がする。
「あー良かった。んじゃ、大丈夫だな、そう言う事でよろしく」
「よろしくじゃないよ、もう。こっちの事すっかり忘れてんだもんな~」
ストームが拗ねた声を出す。
「ワリーワリー、で?学園に報告は?」
「したよ、街道は完全開通、荷物も一部確保ってね。荷物の種類や量まではわからないから、詳細は頼むよ?」
「おう、それは大丈夫。ハリアー君がやってくれるから」
ハリアー君がギョッとした顔をする。
「あんまりこき使わないでよね。これでも、うちの副部長なんだから」
「え?そうなの?ハリアー君、馬術クラブ副部長さんなの?」
ハリアー君は困ったような笑みを浮かべ頷く。
「なんだよ~、言ってよ~。ごめんね、なんか、色々と」
俺は一応謝っておいた。結構、あーだこうだと指示出したり勝手な行動したりと振り回しちまったもんなあ。
「いやいやなんでなんで?別に謝られるよ―な事、なにもなかったじゃない?それどころか、こっちこそ色々とお世話になっちゃって本当に助かっちゃったよ」
「そう?えへへへ、聞いたかストーム?助かっちゃったって」
「聞えてるよ。クルース君、もしかして仕事終了した気になってない?」
「なってるけど、なんで?終わってないのもしかして。まだ何かあるの?新たな敵でも判明したのか?」
「何とぼけた事言ってんのよー。元々の依頼は無事に荷を届ける事でしょ?こっちはとっくに済んでるんですけど?」
「あっ!いけね!忘れてた!俺達どこ行くんだっけ?」
俺は慌ててハリアー君とファブロー君を見る。
「フルールドポアリエでしょうが」
「早く行かないと日が落ちる前に帰れないっす」
ハリアー君とファブロー君に言われて俺はてへへと頭を掻く。
俺は急ぎ足でダーミット副長と必要事項のすり合わせをする。盗まれた荷物は確認後に学園と連絡を取り当初の目的地へ送られる事、カッシュリー商会からは既にこの倉庫は手放しており一切関係はないと通達された事などを教えて貰った後、これ以上はカッシュリー商会へ首を突っ込まないように釘を刺される。
「血の気の多い君の事だ、気が済まないだろうがここからは陰謀や悪事が渦巻く場所での水面下の戦いとなる。君には我々に任せて学生生活を楽しんで貰いたい」
ヘルマセール伯爵が言いダーミット副長がうんうんと頷いた。
「いやあ、別に私は血の気は多くないですよ。そうして頂ければ自分的には安心して学生に戻れますよ」
「はっはっは!またそんな心にもない事を言いおって」
伯爵は大きな声で笑って俺の肩をバシンと叩いた。
マジで痛いって。もう、マジで俺はそんな荒くれもんじゃないっつーの。なんでそんな勘違いしてるんだかまったくわからないが、訂正しようにもこのお方、まったく信じないんだからどうにもならない。
俺は微妙な笑いを浮かべて伯爵と副長に挨拶をし、急ぎフルールドポアリエへと向かった。
フルールドポアリエにて無事に荷を下ろし、街道通行の安全が確保された事を伝えたがすでに知らせは入っていたようであった。
ハリアー君は自分が一番乗りに知らせる事で、フルポアの女生徒からちやほやされる自分の姿を期待していたようでがっかりしていた。
何気にジェニファー・スプレーンはいるかフルポアの生徒に聞いてみたが長期出張で不在との事だった。
さすがに平気な顔で居座っちゃいなかったが、追い出されてる様子もない所を見るとそのうち体勢を立て直したらまた平気で現れるような気がするよ。
俺達はファルブリング行きの荷物を積むと学園へと帰った。
帰りの道筋はは通行の妨げも無く実にスムーズで、場所によっちゃ学園の馬車とわかると気を使って貰う事すらあった。
どうやら、ビゴロ君達がお触れを出してくれたようだった。
そんなこんなでファルブリングに到着。
ハリアー君とファブロー君はそれぞれまだ仕事があるとの事でここで別れ、俺は改めて報告をするために学長室へ向かったのだった。
「失礼します」
声をかけ学長室に入ると中では学長とマスターホフスとキーケちゃんが談笑をしながらお茶を飲んでいた。
「ご苦労様でしたね、詳細はストーム君から聞いていますよ」
「遅くなって申し訳ありませんでした」
俺は一応謝罪をしておく。
「いえいえ、フルールドポアリエの方が遠いのですから当然ですよ。それより、ヘルマセール伯爵とお知り合いになられたとか」
「ええ」
「豪快な方でしたでしょう?」
「はい、なかなかの豪傑でいらして」
俺は控えめに返事をする。
「ふふふ、伯爵から連絡がありましてね。今回はクルース君に随分と世話になった、と。それで礼としてファルブリングカレッジに援助をしたいと申し出て下さいましてね」
「かっかっか、そんな事を言うて大方我らが目的であろうよ。最近ではファルブリング三大美人と名高いからのう」
「またそんなことばかり言う」
ウェッパー学長が言うとマスターホフスとキーケちゃんはそう言って笑った。三大美女とは大きく出たな。とは言えキーケちゃんは勿論、学長もマスターホフスも若い頃はかなり男を泣かせたんじゃないっすか?と問いたくなるようなルックスしてはるからなあ。ちゅーか、今でも時折ドキッとするような瞬間があるもんな。気を付けねばな、くわばらくわばら。
「近いうちに学園にも顔を出したいとおっしゃられていましたから、その時はクルース君、あなたも挨拶をなさいね?」
「わかりました。私も伯爵殿には大変お世話になりましたので改めて感謝をしたいと思っていました」
俺が優等生的な返答をするとマスターホフスとキーケちゃんが大笑いし、こいつはこういう如才ないとこがある、世慣れとるのよ、と言い合った。
文化祭開催に向けて準備段階で色々な障害があったが、今回の事で大方取り除かれた事で学長たちも肩の荷が少しは降りたようだった。
そうして和やかな空気のまま俺は挨拶をして退出をした。
とりあえず一件落着って事で今日という一日は明るくしめられそうだ。
そんな事を思って学園内を歩いていると。
「ジミーさん、困った事になりました」
いつになく青い顔をしたケイトが俺に声をかけて来た。
なんだなんだ?いつもクールなケイトにしちゃ珍しいな?
「どした?なんかあったのか?」
俺はケイトの話を聞く事にする。何があったってんだ?




