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また出たな!って素敵やん

 夢をかなえる事ができたからかベッカ弟に満足げな顔してるがヤバいんじゃねーか?と心配されたが、まあ、なんとかなるっしょ。

 俺は適当な返事をして横たわってる男達を縛り上げる。それを見てベッカ弟とビゴロ君は思い出したかのように縄を手に前の部屋に戻って行く。自分達が倒した連中を縛り上げに戻ったんだろう。


 「おーい、そろそろ目を覚ませ」


 俺は紳士の顔に水魔法で水を被せる。


 「ぶはっ!はぁーはぁーはぁー」


 意識を取り戻し顔を振った紳士は肩で息をした。


 「おはようさん、とりあえず名前から聞こうか」


 俺は紳士の顔を見てそう言った。


 「…ミー」


 「は?はっきりと喋ってくれよ?な?」


 「バウミー、ジョン・バウミーだ」


 「はいバウミーさんね。で、色々と聞きたい事はあるんだけど、まずはあのアエシュマ強化兵をどうやって手に入れたかだな。教えてくれよ」


 「それを言えば俺は殺される…」


 バウミーは青白い顔をしてそう言った。


 「おう、待たせたな」


 「先に始めさせてもらってたよ」


 陽気な声をかけて部屋に入って来たビゴロ君に俺は答える。


 「先に始めるって飲みじゃねーんだからよう。もう、拷問しちまったのかよ?そういうのは俺にやらせてくんねーかな」


 ベッカ弟が不服そうに言って近くにやって来る。


 「拷問されても話せないもんは話せない。話せば俺は絶対消される、そういう人なんだよあの人は…」


 「ほう?んじゃその前に俺が殺してやるよ」


 ベッカ弟はそう言ってバウミーの首をつかむ。


 「まあまあ、その辺にしといてくれ。なあ、バウミーさん、それじゃあまずは話せるところから話してよ」


 「バウミー?何バウミーってんだそいつ?」


 ビゴロ君が何か考えるような顔をして俺に言う。


 「ジョン・バウミー君、よろしくね」


 俺はバウミーを手で示し言う。


 「ジョン・バウミー、ジョン・バウミーどっかで聞いた事あるなあ?」


 ビゴロ君が首をかしげバウミーが嫌な顔をする。


 「あ!思い出した!ちょっと前に話題になってたろ?魔物ヨラーズって魔物避けの薬。あれの販売者が確かジョン・バウミーって名前だった!」


 ビゴロ君が手を打って嬉しそうに言う。


 「違う違う!販売者じゃない!開発者だ!」


 バウミーが興奮して言う。


 「へえ、そんな偉いヤツがなんでこんな事してんのよ?」


 「確か、あの薬、獣型には有効だったんだけど、虫型は逆に寄って来ちまうってんで騒ぎになってさ。あっちゅー間に見なくなっちまったんだよな」


 「へえ、それじゃああれか?不良品だったんで回収騒ぎやらなんやらで大変だったんじゃねーの?」


 「お前、マジで知らねーの?新聞くらい読んだ方がいいぞ?」


 「普通俺らみてーなのは新聞なんて読まねーだろ、んで、どうなったんだよ?」


 ベッカ弟が肩をすくめて聞く。


 「回収は勿論だけど、その薬を使って損害を受けたって人が続出してさ。開発者は多額の負債をしょい込んだって話よ」


 「なるほどね、そんで小遣い稼ぎにアエシュマ販売に手を染めちまった、と」


 「違う違う!こんなもの、私一人で作れるわけないだろーが!幾ら私が天才薬学者だとしても元々の原材料が手に入らないんじゃいかんともしがたいだろうが!」


 ビゴロ君とベッカ弟の話を聞いてバウミーは顔を赤くしてそう言った。


 「薬学者にしちゃ随分目つきが悪いよな」


 俺はバウミーの顔を見て言う。


 「目つきだけじゃねーだろ?まともな仕事してる奴のやるこっちゃねーもんよ」


 「なんでも、薬学者になるために色々悪事を働いてたって話だぜ?黒い交際とかで新聞にでかでかと載ってたの知らないのかよ?」


 「知らなかったよ。もっと新聞読んどくんだったな」


 「オメーまでそんな事言うのかよ~」


 ビゴロ君に答えた俺の言葉に落胆した様子のベッカ弟。いやいや、俺は別に不良じゃねーっつーの。


 「新聞など嘘ばかりだ!」


 「かもしれねーけど、お前の事はホントなんだろ?」


 悪態をつくバウミーの頭を軽く引っ叩くビゴロ君。


 「その黒い交際とかで知り合った奴が今回の黒幕なんだな?そうなんだろ?そうだと言え!じゃなきゃ、もう、どいつもこいつも実態がわからんとか、頭が痛くなってくるぜ」


 ベッカ弟がバウミーに言いながら頭を押さえた。まったくだ、いい加減、全ての事情を把握してる奴が出てきてくれなきゃ日が暮れちまうよ。


 「まず、お前らが取り上げた荷物の事から聞こうか。それはお前さんの考えでやったのか?最近、あちこちで出没してるって噂の盗賊なんかもお前の息がかかってるのか?」


 俺は尋ねる。


 「いや、俺の考えなんか何もない。ただ、指示に従っているだけだ」


 「お前の考えが何もない?あんたのような腕のある薬学者がアエシュマ販売に関わっていて自分の意思が何も通らないって事はないだろう?上だってあんたの技術を見込んで是非にと声をかけて来たんじゃないのか?」


 「まあ、そうではあるな」


 バウミーはまんざらでもない顔をする。


 「だろ?あんたほどの頭脳を世の中が放っておくはずないもんな。あのアエシュマ強化兵だって弱点が変わってたのはあんたのプランじゃないのかい?」


 「ふふふ、良くわかったね。アエシュマ強化兵は痛覚が鈍くなる代わりにどうしてもどこか一点に弱点ができてしまう。どうしてもできてしまうのならば攻撃しにくい場所に設定するのが良いに決まっている。そんな簡単な事が偉いさんにはわからんのだよ。まったく」


 バウミーは自慢げに言い肩をすくめる。ベッカ弟が肩眉を下げてイラついた顔をするが俺は目で言いから俺に任せろと合図をする。ベッカ弟は渋々といった感じにため息をついて頷いた。


 「まあ、どこもそんな感じだよな。上の人間は現場に出ないで数字しか見てないから、そういう微妙な肌感みたいなのに鈍いんだよ。質の高い仕事をするにはそういう現場の肌感が重要なんだよな。でも、あんたのとこは意見が受け入れられたんだろ?まだ、マシな方じゃないか?」


 「バカを言っちゃいけないよ。この意見が聞かれるのにどれだけ苦労したか。だいたい今までの強化兵は非常に単純な指示しか実行できなかったのを、ある程度のお使いまでこなせるようにしたのはこの私なんだ。こうした地道な成果があって初めて組織内での発言力も高まって来るんだ。ただ、不平不満を言ってるだけじゃあ何も変わらないのだよ」


 「てめっ…」


 「まあまあ」


 バウミーは得意げに語りベッカ弟が何かを言おうとしてビゴロ君に肩を叩かれる。


 「ごもっともごもっとも。確かにあの強化兵は随分と進化しているように見受けられる」


 「君は以前のものを見た事があるのかね?」


 「まあ、ね。その時はただ戦闘を行うだけの操り人形みたいなもんだったな。同士討ちしないのがやっとって感じで」


 「そうそう!そうなんだよ!あれじゃあ、ただの出来の悪い操り人形に過ぎん。これから、私が更に改良を重ねる事で更に高度な任務もこなせるようになる。それを上はわかってないのだ、上はそんな事よりも、普通の人と外観上見分けがつかなくさせる事を優先せよという。そのためなら戦闘能力を削っても良いと。それでは強化兵の意味がないんだよ。そんな事がしたいのなら、カース使いの連中に任せておけばよいものをまったく、ハンドラーという組織も底が知れると言うものだよ」


 なんだと?ハンドラーだと?こいつ、ハンドラーの一員だって言うのか?こんな所でその名前が出てくるとは、ったくどこまで手広くやってるんだあの連中は?つー事はだよ?劣化版人造魔神もハンドラーの所有物って事か。やつらなら、その作り方や実験体を手に入れる事くらいはやってのけそうだ。面倒なトコが出て来たなあ。

 

 「どうしたんだね?黙り込んで。君の所属先も先を見通す力の無い暗愚が権力を持っているのかね?」


 「ん?ああ、そうそう、足なんぞ飾りだと言っても偉い人にはわかって貰えなくて苦労してるよ」


 ハンドラーの名前を聞いて考えちまっていた所に突然話しかけられて思わず頓珍漢な答えをしちまう。気休めかも知れませんがあんたなら上手くやれますとでもフォローしとくか?


 「ふうむ、君の所もそうなのか。まったく上が無能だと苦労するな」


 「まったくだ。しかし、ハンドラーってのは割としっかりしたトコだって聞いてるけどな?貴族や財界人が多く加わっていると聞くし、風通しの良い組織だって話だが?」


 「はっ!とんでもない!貴族や金持ちが多い組織が風通し良い訳なかろうさ!実際の所は金や権力を求めた欲深い奴らの巣窟でな、崇高な理念などどこへやら。どいつもこいつも自分のためしか考えてない俗物の集まりだ」


 「ハンドラーの理念ってすべての国や組織を裏から操るってあれだろ?さすがに理念がデカすぎじゃないのかね?」


 「それもあるが、本来の根本的な考え方は世界の正常化さ。聞いた事ないかね?新しい世界秩序ってやつを」


 「ああ、聞いた事があるが…」


 と言っても前世の話だが。新世界秩序、ニューワールドオーダーってのは東西冷戦後の国際秩序を指す言葉で時のアメリカ大統領が提唱した、力ではなく国際法や国際機関による平和的な秩序の維持を意味する言葉だが、陰謀論界隈では人類を管理するための秘密結社が行う作戦のように語られていた。

 こいつらが前者のような意味で言っているとはとても思えないが。

 俺はつばを飲み込み話を続ける。


 「…それってのは、戦争ではなく別の第三者機関やルールによる秩序を望むって考え方じゃなかったか?」


 「ふふっ、それは表向きの話でな。実際は人族、魔族すべての種族の統一とすべての種族のイチ組織によるコントロール、まあ世界のコントロールだな、それを目指したものなのだよ。今の世界を見給え、下手に国家間のパワーバランスが出来上がってしまっているばかりに、戦争も滅多に起きないような事になってしまっている。起きてもせいぜいこのあいだのジャーグル王国侵攻のようなレベルですぐに決着がついてしまう。これでは、人口の抑制のための働きをしないし、魔学の発展においても遅々として進まなくなってしまい世界が停滞し飽和してしまう。これは由々しき事態だとは思わんかね?」


 「ゆでガエルって訳か」


 「なんだねそれは?」


 バウミーは興味深そうに聞く。


 「カエルを見ずに入れてゆっくりと熱するとカエルは環境の変化に気付かずしまいには茹でられて死んじまうって話しだよ」


 「まさにそれだ!上手い例え話だ!今度の報告会で使っていいかね?」


 「かまわないよ。その報告会ってのはいつあるんだ?」


 「三日後だよ」


 「へえ、どこで?」


 「ヘルマセール伯爵の屋敷だよ。彼はハンドラーの地域監督をしているからね」


 「それじゃあ、分捕った荷物なんかも伯爵の家に?」


 「ああ、そう言う事になるね。というか君、随分、ハンドラーに詳しいがどこの組織の所属なんだ?」


 「その辺は気にしなくていいよ」


 俺はバウミーの肩をポンと叩いて電撃を食らわしてやる。


 「きゅっ!」


 バウミーは白目を向き気を失った。


 「さてと、スベン君とベッカ君、ここでの話は聞かなかった事にしてもらっていいかい?」


 俺はふたりに向きなおって言った。ハンドラーの名前が出てきちゃ、子供のケンカの範疇じゃ無くなっちまうからな。


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