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良くわからない連中って素敵やん

 俺達は床に転がってる劣化版人造魔神を縛り上げてから、細身男の話を聞く事にした。

 細身男の名前はトッジで元々この街を仕切っている愚連隊レッドバラクーダの頭だった。ある日、身なりの良い男がやって来てドッジに仕事を頼みたいと言って来た。

 

 「…その仕事ってのが、こいつを捌く事だったんだ」


 ドッジはそう言ってポケットから粉の入ったフクロを取り出して見せた。


 「テメー!そりゃあボナコンか!」


 「の野郎!そいつでイカレちまったヤツ何人も知ってんだよっ!クソみてーなもん売りやがって!!」


 スベン君の後にベッカ兄が言いドッジに掴みかかる。


 「違う違う違うっ!あんなんじゃないって!勘弁してくれよ!」


 「そんじゃあ、なんなんだよ!」


 襟首をつかみ更に恫喝するベッカ兄。


 「アエシュマだよ!それもかなり純度の高いやつ!」


 ドッジはそう言って袋をベッカ兄の目の前に掲げて見せた。


 「確かにこいつはキレイな青色してんな。ボナコンならもっとくすんだ色をしてる」


 袋を覗き込んだスベン君が言う。


 「そうだよ!こいつはアエシュマの中でもミスリルスノーと呼ばれる一級品だよ!一発決めてみな?もう他のじゃ満足できねーぜ?」


 ドッジは小袋を振って嫌な笑みを浮かべた。


 「クソがっ!うちはなあ、薬物厳禁でやってんだよ!ボケがっ!!」


 ベッカ兄はそう言ってドッジの持っている小袋を叩き落とし足で踏みつけた


 「あっ!何すんだよ!勿体ない!」


 ドッジは床にはいつくばってブルーの結晶を必死に集める。


 「みっともねー事、してんじゃねー!」


 ベッカ兄がドッジを蹴り飛ばす。


 「おい、随分荒れてんじゃねーのかお前のアニキ」


 「マブダチがアエシュマでダメになっちまったんだよ。めっちゃおっかねぇー先輩だったんだけどさ、アエシュマにハマってからはデタラメになっちまって。ダチの彼女に手を出すわ、後輩から金借りてバックレるわで周りに人がいつかなくなってさ。アニキは最後までやめさせようとしたんだけど、もうやらねーって約束してもその日のうちに買いに行っちまうんだよ。しまいにゃ、誰かに見張られてるって言って刃物持って道で暴れて、馬車に向って行って馬に頭蹴られちまって、今じゃ寝た切りよ」


 スベン君にそう言うベッカ弟。


 「あの手の薬はヤベーよ。上手く止められてもなんかの拍子に戻って来ちまってしばらくぼんやりしちまったり、痙攣が止まんなくなったりするからな。後で真っ当な仕事につこうっつっても難しかったりすんだよ。それで、やっぱ真っ当な仕事ができなくて元に戻っちまったりすんだよ。見てらんねーよな。うちのもんにもその手の薬だけはやんなって言って聞かせてんだ」


 「まあ、確かにありゃみてらんねーよな。んじゃーよ、オメーらは勢力広げてクソ薬の販売網を広げるのが目的なんだな?」


 ビゴロ君の話に同意したスベン君がドッジに尋ねる。


 「いや、俺らのじゃねーよっ!奴らのだよ奴らの!俺らじゃこんなもん手に入んないもんよっ!」


 ベッカ兄に襟首掴まれたままのドッジが必死で言い訳する。


 「その奴らってのはよう、結局誰なんだよ?」


 ベッカ弟が聞く。


 「それが俺にも良くわかんねーの」


 ドッジがエヘヘと笑う。


 「この野郎?なめてんな?なめてるよな?なめてんのかっ!!!」


 ベッカ兄がドッジの耳元でがなり立てる。格闘技の合宿じゃねーんだから。それが思い切りか?それがお前の!!やってみろおらぁ!殺すぞこの野郎!!てか?


 「ひいっ」


 「おいおいおい、その辺にしといてやれよ、な?とりあえず俺に任せてみ?」


 短く悲鳴を上げるドッジをブルブル振り回すベッカ兄に、スベン君が冷静に言って間に入った。


 「お、おう、んじゃ任せっけど、甘い顔見せるとすぐにナメ散らかすからよ、そいつ」


 「わぁーったわぁーった。お前も、あんなガラの悪い顔の奴にデケー声出されたら、説明したくても説明できないよなあ?な?」


 「へ、へい」


 「ほっとけ」


 優しい声を出すスベン君に殊勝な声で答えるドッジ、そして不貞腐れた顔をするベッカ兄。


 「さ、詳しい事を話してみ?」


 「いやあ、詳しい事を話すって言うほどのあれじゃあないいですけどね…」


 「うるせえっ!いい加減ぶん殴るぞ!」


 「ひっ!でも、ホントに良くわからねーんすよ。最初に顔を合わせた時以来、直接会ってないんですよ」


 「じゃあ、どうやって指示を受けてんだよ?そのアエシュマの受け渡しとかはどうしてんだよ?」


 額をピクつかせるベッカ兄弟を制してスベン君が尋ねる。


 「そこの、気味悪い奴が持ってくんだよ。定期的にいなくなっては指示書や金や武器、薬なんかを持って戻って来るんだ」


 「指示書ってのは?」


 「読んだら燃やせって書いてあるから毎回燃やしてんの。用心深いでしょ?気味が悪いでしょ?」


 「お前、そんなんで言う通りにしてんのか?一回会っただけの奴なんかの?」


 「そう思うでしょ?こっちだって一応、この街ではちょいとうるさいチームよ?初っ端にバチっとかましてやりましたよ」


 鼻息荒く言うドッジ。


 「へえ、んでどうなったんだよ?」


 ベッカ兄が聞く。


 「俺も含めてその場にいた奴みんなボロクソにやられちまったよ」


 「それですっかり牙を抜かれちまったってか?ヤワなチームだな」


 ベッカ弟が吐き捨てるように言う。


 「いや、こういったらあれだけど、うちだってねはねっかえりはいるのよ。そういうのがアエシュマの上がりちょろまかしたり、混ぜ物して水増ししたりしてたんだよ。したらよう、どういう訳だかバレてそれが血だるまにしてここに連れてくんの」


 「こいつ、喋れんのかよ?つーか、オメー、自分とこの若いの管理しきれてねーのかよ?」


 ベッカ弟が縛り上げた劣化版人造魔神を見た後ドッジを見る。


 「へへへ、何分大所帯なもんで」


 「やっぱなめてる?」


 「なめてませんってば!こういう話し方なんすよ、もう。勘弁して下さいよ」


 ベッカ弟に凄まれてドッジは顔の前で両手をフルフル振って言う。


 「まあ、いい。とにかく、こいつらはほっとくと自分らで勝手に動くって事だな?」


 「ええ、まあ、そうっすね。必ずこうやってここに何人かはいますけどね」


 「じゃあ、こいつらで全員じゃないってのかよ?」


 「だと思います」


 「おいおい、またいい加減だな」


 スベン君が片方の眉を下げていぶかしげに言う。


 「だって、こいつら見分けつきます?なんかみんな同じような顔してるでしょ?」


 ドッジに言われて改めて劣化版人造魔神の顔を見てみるが、確かに皆、同じような髪形で同じような輪郭、眉の太さも似た感じで似てるっちゃ似てる。話してみてそれぞれのキャラがつかめれば見分けはつくんだろうけど、ドッジの話じゃ口をきかないようだし、その上、まったく感情を出さないと来れば余計見分けがつかなくなるってもんだ。

 

 「そんじゃあ、まだ、こいつらの仲間はいるんだな?」


 「そろそろ伝達係が戻って来る頃だと思うんで、少なくとももうひとりはいるはずです、あっ!ほらっ!来た!」


 ドッジが嬉しそうに言って入り口を指差すと、青白い顔をした劣化版人造魔神が店に普通に入って来た。


 「……」


 劣化版人造魔神は無言で店内を見渡すと、そのまま店の外へと戻って行った。


 「おい?ありゃなんだよ?」


 「わかんないっすよ、こんな事、初めてですもん」


 ドッジが肩をすくめる。


 「おい、ぼやっとしてる場合じゃないっしょ!ヤツを追わねーと」


 俺はそう言って店を出た。


 「あいつ、走ってったぞ?」


 後ろからついて来たベッカ弟が言う。劣化版人造魔神はまるでマラソンランナーのように一定のリズムで走り去って行く。一般的な若者の全力疾走くらいの速さだ。


 「おい、どうするよ?」


 ベッカ弟が俺に聞く。


 「とりあえず俺がヤツをおっかける。ついて来てもいいけど、何人かはここに残しといた方がいいぞ?」


 俺はそう言って外に停めていた魔導二輪に跨りアクセルをひねった。


 「お、おい」


 後ろでベッカ弟の声がするが俺は構わず魔導二輪を走らせた。うかうかしてるとヤツを見失っちまう。とりあえず、俺だけでも奴を見失わなければ後はどうにでもなるだろう。

 俺はハイペースで走り続ける劣化版人造魔神の後を一定の間隔をおいて魔導二輪で追う。

 なんだか駅伝の白バイみたいだな。


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