前へ前へと進む旅って素敵やん
伍長殿との話しも終わり、トーリの事をお任せし俺達は衛兵詰め所を後にした。
「さて、時間食っちまったな。ペース上げて行こうぜ!」
「おいおいおいおい!ちょっと待てよ!おめーっケイトモのなんなんだよ!聞かせろよ!」
「おいバカ!よせっ!うちの取引先の親分なんだろっ?すんませんこのバカ、学生気分が抜けて無くて勘弁してやってください、てへへへ」
俺の言葉にベッカ弟が絡んでくるがスベン君が速攻で間に入って来た。
「いや、勘弁してくれよ。俺は創設時にちょっと手伝っただけで今は運営にはほぼ関わってないんだから。それよか早く行くぞ!道案内してくれよ!」
「お任せ下さいませ!ほらっ!急げ急げ!」
ジャージメを急いで馬に乗せたスベン君は手綱を当て馬を走らせた。
「なんだよ、ったく、結局どうなんだよ?」
「だから、創設者ってのはマジだって話だろ?」
ベッカ弟の言葉にベッカ兄が答える。
「んで、実際のトコどうなんよ?」
「え~?うちの学園にも支店があるし、そこで務めてるディアナちゃんはクルース君が捕まえて来たって言うし…」
ビゴロ君に答えるハリアー君を後に俺はアクセルをひねりスベン君達に続いた。
「ところで、ひとつ聞きたい事があるんですが」
先頭の馬に近付くとかしこまった口調でスベン君が俺にそんな事を言う。
「勘弁してよ、スベン君の家が取引してるのと俺は関係ないからさ、今まで通り頼むよ」
「そうか?だったらそうさせて貰っちまうけど」
「そうしてくれそうしてくれ」
俺はスベン君に調子良く言う。
「ちっと聞きたいんだけどよ、衛兵隊が犯罪者を雇うだなんてそんな事あんのかい?俺、ちょっとびっくりしちまってよう。そんな事、他にもあるのか?」
「あまり聞いた事はないけど、あってもおかしくはないんじゃないかね?」
「なんでっすか?俺にも聞かせて下さいよ」
ジャージメがスベン君の後ろから俺に尋ねる。
「て言うのもさ、罪を犯して監獄に入れられる人ってあれはあれで金がかかんのよ」
「飯代っすか?でも強制労働ってのもあるんすよね?それって飯代くらいにはなりませんか?」
ジャージメ君が聞く。
「いやあ、どうだろうな。微妙なとこじゃないか?バッグゼッドじゃ監獄に入れられた人が釈放されるとき、社会復帰の一環としてある程度の現金を渡されるって話だし。それにさ、かかるのは飯代だけじゃあないんだよ、他にも彼らの衣服代、監獄の土地代、看守の経費なんかも考えなきゃいけないからね」
「そう考えると監獄入りも結構金がかかるもんなんだなあ」
スベン君が言う。
「まあ、かかるのよ実際。だからさ、できれば収監されてる者達には本当は利益率の高い仕事をさせたいわけよ。専門性の高い奴やつをね。そう考えれば案外無茶な話でもないだろ?」
「なるほどなあ、そんな見方もあるのかあ。勉強になるなあ、さすがケイトモの創設者だ」
スベン君が妙な納得の仕方をする。
それから俺達は目的地のアニスタまで特に問題なく到着する。
「ここっすけど、本当に行くんすか?今なら引き返せますけど」
ジャージメが青い顔をして言うが、確かに案内された飲み屋は薄暗くどんよりしており看板も出ておらず不気味な事この上なかった。
「今更何言ってんだ、行くぞ!」
スベン君はジャージメの背中をバシンと叩くとつかつかと店に向かい派手な音を立ててトビラを開けた。
「何かと騒がしい奴だな」
ベッカ兄が言い後に続く。
「久しぶりの現役復帰なんだ、目をつぶってやれよ」
「お?わかってんじゃんかよ」
ベッカ弟が言いビゴロ君がニヤリと笑いトビラをくぐる。
俺もその後に続き店内に入った。
「…なんです?報告には一人で来るよう言ってあるはずですが?」
店内は薄暗く、入って奥にカウンターが左右にテーブル席がある。そのカウンター席に座った細身の男がジャージメを見て静かにそう言った。
「お前がレッドバラクーダとやらの元締めかい?」
スベン君が聞く。
左右のテーブル席にはジャージメが言ったような青白い顔をした男達が複数人座っている。ざっと数えて十人程か。以前に出くわした劣化版人造魔神ことアエシュマ強化兵は皆一様にスキンヘッドだったからわかりやすかったが、ここに居る連中は普通に髪を生やしているのであの時のアエシュマ強化兵と同一なのか俺には判別ができない。
しかし、こいつらから感じる独特の薄い気配はあの時の連中に凄く似ている。
俺は呼吸を整え臨戦態勢に入る。
「随分無礼な物言いですね。ジャージメさん、あなた誰を連れて来たんです?」
細身の男は目をキュっと細めてジャージメを見る。
ジャージメが委縮して身を縮こます。
「俺らはあんたらがチョッカイかけた街の頭よ。挨拶に寄らせて貰ったんだが、歓迎の言葉もなしかい?」
ビゴロ君がスベン君の横に並んで言う。
「ジャージメさん、困りますねこんな事じゃ。ペナルティーを科さなければなりませんよ?」
細身の男はカウンター席から立ち上がり強い口調で言い、パチンと指を鳴らした。
左右のテーブル席に座っていた青白い顔の男達が一斉に立ち上がりこちらを向きなおる。
「これが歓迎の挨拶かい?」
ベッカ弟が嬉しそうに言う。
「話が早くていいだろうさ、おらっ!!」
ベッカ兄が近くにあったイスを細身男にぶん投げる。近くにいた青白い顔の男が素早く細身男の前に立ちふさがり右手を振るうと、投げられたイスは派手な音を立てて砕け散った。
その音を合図にするように青白い顔の男達は一斉に俺達に襲いかかる。
「上等!」
「やったるぜ!」
「来い!こらっ!」
「踊れやっ!」
スベン君達は楽しそうな声を上げ男達と殴り合う。
俺も向かって来た男の耳の下を叩く。前に戦った劣化版人造魔神と同じならこれで動きを止めるはずだ。
「効かねーじゃねーかクルース!」
ベッカ弟が文句を言う。
「いや、俺も困惑してるんだよ。どっかに弱点はあるはずだから探してみてくれよ!」
耳の下に手刀を喰らっても平気で動く青白い顔の男の攻撃を避けながら俺は叫ぶ。
動きは以前にやった劣化版人造魔神よりもスローなので対応はしやすい。首の後ろ、額、喉、みぞおち、金的、膝、脛、足と攻撃を加えていくが相手は動きを止めない。
「なんだよっ!弱点とかホントにあんのかよ!」
「諦めずに攻撃を加え続けろ!」
「続けろっつても、この野郎、ただのでくの坊じゃねー!」
ビゴロ君、ベッカ兄、スベン君が声を上げる。
「わかりましたー!脳天です!脳天を狙ってくださーい!!」
店の入り口付近んで木剣を持ったファブロー君が叫んだ。
「お!ホントだ!」
スベン君が脳天を拳で殴りつけ崩れ落ちる男を見て言う。
「なんだよ、からくりが知れりゃあ大した事ねーな」
「ホントホント、からっきし手ごたえがねーや」
「お前ら、さっきまで泡食ってた癖に調子がいいなあ」
ベッカ兄がビゴロ君と弟に言う。
「さてと、次の歓迎の挨拶は何かな?」
スベン君が細身の男ににじり寄る。
「くそっ!!」
細身の男はカウンターを飛び越え裏口から逃げていく。
「のやろっ!待ちやがれ!!」
スベン君が大声を上げカウンターへ向かうと逃げたはずの細身男が両手を上げこちらへ戻って来た。
「もう、みんな正面から突っ込んでっちゃうんだもの。裏口もひとりは見張ってないとダメっしょ?」
細身男に続いてこちらにやって来たハリアー君はそう言い手にした木剣で男をつついた。
「ひっ!」
「荷物、返して貰うよ」
短い悲鳴を上げる細身男にハリアー君が静かな声で言う。
「何の事ですか?」
「とぼけんなよこら!お前のドタマも勝ち割ってやろうか?あん?」
「テメーらが馬車襲って奪い取った荷物だよ!あんま呑気くれてんと耳引き千切るぞ?」
凄むベッカ弟に続いてベッカ兄がカウンター越しに細身男の耳をつかむ。
「ひいっ、勘弁してくれ。荷物の在り処なら俺も知らないんだ!俺らも頼まれてやってるだけなんだから」
「なんだって?」
スベン君が怖い顔をして細身男に尋ねる。
「だから、俺らレッドバラクーダも依頼されてやってるだけなんだよ、全部話すからそんな顔して俺を見ないでくれよ、頼むよ」
細身男はさっきまでのクールな態度はどこに行ったのか、すっかりビビッてしまっていた。しかし、こいつも誰かの雇われってどんだけだよ?中抜き中抜きで何次受けにも中間業者かますって、前世の経済かい!そんな事ばかりしてると無駄ばかり増えて停滞しますよ?




