団体行動って素敵やん
さて、学園生活で楽しいイベントと言えばなんだろう?
そう、遠足ですな。
そろそろ生徒たちも学園生活に慣れてきただろうという事で、チルデイマ学園でも2クラス合同で遠足をすることになりました。
俺のクラスはキーケちゃんのクラスと一緒に、馬車で1時間程の所にあるハイデル山を登ることになった。
ハイデル山は領主都オッドウェイからも近く、標高もさほど高くないし頂上には大昔に山岳修行者が建設したお堂があり、それがちょっとした観光スポットになっていることもあり、割とメジャーな山なのだった。
そんな訳で山と言っても道行はなだらかで、整備もされており危険は少ないハイキングコースなのだ。
学生を引率して行くには丁度いいスポットだ。
天気もいいし絶好のハイキング日和だ。
頂上までは一本道、無理せずにケガをしないようにとジマオウ先生よりお達しが出され、生徒たちは元気よく返事をし仲の良いもの同士グループを作って山を登るのだった。
ネージュは取り巻きの男子たちに囲まれて、まるで姫のように扱われながら登って行く。
エイヘッズもこれまた幾人かの女子生徒と、キャッキャウフフと楽しそうに登って行った。
フライリフはどうかなと見ていると、まあ、あいつはあいつで漢気あるしスニー以外にも幾らかの仲間が出来たようで、男女混合のグループで山を登って行く。
俺はキーケちゃんと一緒に最後尾から、具合が悪くなったり怪我したりする生徒がいないか見ながらゆっくりと山を登った。
「この山の頂上にあるお堂ってどんなものなの?。」
俺はキーケちゃんに聞いてみた。
「どんなものと言われてもな。まあ、本当に古いものでな、なんせ3階建てなのにほぼ木造ときてるからな。珍しいものよ。」
「へー!木造建築かー!そりゃ是非見たいねー!。」
「そう言えばトモの故郷は木造建築が主流だと言っておったか。」
「ああ、なんせ山が多くて樹木が豊富でね。昔からの宗教建築物が木造だったもんで技術が発展したと言われてたね。後は温度が高くて湿気の多い気候だからさ、木材は湿気を吸ったり出したりするもんだから暮らしやすいってのもあったみたいね。」
「ほう、興味深いのう。」
「それにさ、前世界の故郷には世界最古の木造建築物があったからね。その建物は実に千年以上の歴史があったもんね。」
「ほほう、千年以上とな。それは凄いのう。」
「先生、先生!。」
「おう?どした?。」
声をかけてきたのはキーケちゃんのクラスの女子生徒だ、名前は確かミゼンと言ったかな。
「先生たちは世界樹の作った洞窟を通ったって話しですけど、どうでしたか?凄かったですか?。」
「世界樹と確定したわけではないが、確かに大海樹からクブロスカのトゲウオの街近くまで地下水路を通っていったぞ。ミゼンは世界樹に興味があるのかい?。」
あら、またキーケちゃんたら、先生モードね。とても優しい口調で尋ねる。
「はい、世界樹だけじゃないですけど、レインザー王国の歴史に興味があるんですよー。本当はアルス先生に顧問になって貰って歴史クラブを作りたかったんですけど、ふたつのクラブの顧問にはなれないらしくて。」
「ほうほう、だったら8クラスのトーヒガン先生に声をかけてやろうか。トーヒガン先生もそうした事には見識が深いぞ。」
「え?本当ですか?是非!お願いします!。」
「では、声をかけといてやろう。しかし、メンバーは集まっているのかい?。」
「はい、一緒にやりたいって子が後5人います。」
「では、十分だな。明日にでも職員室に来なさい、申請書をあげよう。」
「やったー!ありがとうございますー!。」
まー、キーケちゃんは、本当に先生だね、さすが。経験豊富でらっしゃるから、何やってもサマになるよ。
そうして、キーケちゃんはミゼンさんの他にも集まってきた生徒たちに世界樹の話しや、タスドラック領からクブロスカ領に向かって幾つかある湖の水位が連動している話しなどを歩きながら聞かせている。
生徒たちは感心したり時に質問をしたりと、ちょっとした授業のようになった。
キーケちゃんの話しは分かりやすく、時に実体験が混ざるもんだから俺も面白くなって聞いてしまった。
「先生?ネージュから聞いたんだけど、トモちゃん先生ってケイトモ事務所の所長なの?。」
俺に声をかけてきたのは、うちのクラスの女生徒でラスティノさんだ。
貴族の娘さんだが、早いうちから制服組とも仲良くやってる、好奇心の強い子だ。
「いや、所長は別にいるよ。先生は立ち上げを手伝っただけだよ。」
「でも、ケイトモのトモってトモちゃん先生のトモでしょ?新聞に書いてあったんだけど、サラデザインのサラさんが最初に影響を受けたのは、この道に進むきっかけを与えてくれた恩人でもある人のデザインだったって話しだけど、これもトモちゃん先生の事でしょ!。」
「え?そんな事言ってんの?参ったなー。いや、それはさ、その時たまたま手元にあった空中ゴマの柄にサラが興味を持ったからさ、じゃあ、やってみなって、それくらいの事でさ。今、服飾から雑貨までいろんな物のデザインをやっているのは、サラの好奇心や才能だからね。」
「私、サラさんに憧れてるの。卒業したらケイトモに入りたいんだけどトモちゃん先生、紹介してよ。」
「紹介するのは構わないし、なんならサラ達と良き友になってくれれば嬉しいけどさ。ケイトモ事務所に入るってのは難しいんじゃないかい?親御さんが許さないだろいくらなんでも。」
ラスティノさんの家は古くからある貴族の名家で、ラスティノさんもご両親が年を取ってからの子なので、そりゃもう孫のようにかわいがられているのだ。
学園にも幾度か来て、俺も会っているから良くわかる。
変な虫がつかないように目を光らせておいてください、と来るたびに頼まれるからね。
「それは大丈夫!お父さまもお母さまも、サラデザインのファンですもの。」
「商品をご愛好頂いているのはありがたいけど、実際に働くとなるとどうだろう?親御さんも心配されるんじゃないかい?。」
「うん、ノダハに住むとなると心配はすると思うけど、家の事はお兄様たちがいるから大丈夫ですし、あとは私が大丈夫だって所を、どうやってわかってもらうかって所なんですけどねー。」
「もうそこまで考えてるのかい?気が早いというか、将来設計が出来ていて大したもんだと言ったら良いのか。しかし、先生も貴族社会についてはわからないことも多いんだ。その辺の事はキーケ先生にも相談してみなよ、かなり詳しいと思うからきっと良いアドバイスを貰えると思うよ。俺からも話しとくよ。ああ、それから、ケイトモ事務所ならいつでも遊びに来なよ、こっちも話しとくからさ。」
「ありがとうございます!よろしくお願いいたします!。」
「先生!先生!次、俺!聞いて欲しい事があるんだ!。」
「ちょっと、順番でしょ!次は私!。」
気づいたら俺の近くに生徒が集まってる!
なんだなんだ?
「なんだなんだ?どうしたんだ、みんな?。」
「いや、トモちゃん先生が相談聞いてくれるっちゅーからさ。」
「おいおい、なんで俺よ?。」
「だって先生、エイヘッズ君とフライリフ君を委員に決めたでしょ?だからよ!。」
「だからって言われても、ちょっとそれじゃ説明が足りないって言うか。」
「だから、最初からあのふたりに目を付けたってのが凄いって事!。」
「そーそー!フライリフ君なんてトモちゃん先生が良いって言うなら良いぜ、なんて言うもんねなんか頼むと。」
「あのふたりが一緒に行動するなんて考えられなかったもんね。」
「やっぱ、トモちゃん先生が初日に直接対決させたからでしょ。」
「それよね、やっぱり。スニーとネージュもそうよね。」
「そうそう、あのふたりもちょっと近寄りがたいと思ってたけど、実際そうでもないってわかったの初日のあれだもんね。」
「それで、トモちゃん先生さあ、ちょっと相談したいんだけどさあ、実は俺さあちょい気になる娘がいてさあ学園前の雑貨屋で働いてる娘なんだけどさあ。」
「あ!ちょっと待てよ!お前まさか、ジョリーさんの事、言ってんじゃないだろうなー!。」
「お前ら、ちょっと待て、そう興奮するな。で?サニズか、その雑貨屋の娘を気になってるってのは?その娘はジョリーっていうのか?。」
なし崩しに相談コーナーが始まってしまったよ。
相談登山って初めて聞いたよ。
前方ではキーケちゃんによる、ディスカッション登山が行われている。
なんだか、山登ってる意味なくないっすか?と問いたいが、これも若さか。
ゆっくりと生徒たちと雑談する機会もなかなかないし、たまには良いかね。




