トークって素敵やん
そうして俺と生徒はなぜだか相談コーナーを開きながらの山登り、まあ、山登りと言っても整備された道を歩くハイキングなのでそれほどハードではないけどね。
みんな、なにかしら相談したいことってのはあるものだよ。
ほとんどは、相談ってよりも聞いて欲しかったって感じだけど、それでも誰かに話すと気が楽になるからね 。
そうして話を聞きながら歩いていると、時間が経つのは早いもので頂上に到着と相成った。
頂上に着くと生徒たちが走りだしたのでなにかと思ったら、例のお堂だ。
「こっちこっち!早く早く!。」
生徒たちが俺に早よ来い早よ来いと急かし囃し立てるので俺は小走りで近寄った。
近くで見るとそのお堂、三階建てだけど造りは前世界の五重塔に似てるものだった。
「あらー、これは、大したもんだねー。」
たしか前世界の五重塔は仏教的な意味合いがあったはずだ、地水火風空とかそうした仏教の五大思想を現していたとかなんとか。
「おう、トモよ来たか。」
「お疲れ様でした。この建物がお堂ですか。これは、なにか意味があったりするのですか?。」
「意味と言うと?。」
キーケちゃんが問うので俺は前世界の五重塔の事を話して聞かせた。
「ほうほう、なるほどの。確かに我々も魔法を使うにあたって世界の力とも言うべき元素に頼っておるの。土、風、水、火、光、闇、これが我々の認識する元素よ。これは遥か昔より変わらぬ認識のはずだ。このお堂を作ったのはモミバトス教が広く知られるよりも前、山に神性を感じ修行の場とした人々だと伝え聞いている。そうした人々は山や木や水、空を崇めたとも聞いている。この建築物に木が使われたのもそうした所なのだろうな。」
「山と木と水、そして空かあ。」
「うむ、以前にトモが言っておったな。木、火、土、金、水の五大要素や、陰と陽という対極的なふたつの要素がその内に各々の要素を入れ、相反しながらも調和を保つという思想を。」
「ああ、言ったねえ。木は燃えて火を生み灰を残す、灰は土になり土が集まって山となり山は鉱物、つまり金を産出する。金は腐食して水に帰り水は木を育てるってやつね。」
「木と金というのがどうにも面白くてな。なぜ、土と別けたか、それを考えておってな。トモは言うておったな、地の四方に中央を入れた数に起源があるとする説を。なるほどとも思う。5という数字のバランスという話しも、また面白くはあった。だがなあ。」
「だがって、まだなにかあったの?。」
「うむ、土魔法があるだろう。」
「うん、俺も教えてもらったから使えるけど、それがどうしたの?。」
「土魔法のやり方によっては鉱物も出せるのはトモもわかっておろう。」
「うん、わかるよ。」
「もしかすると、土魔法で植物を出すことも出来るのかと思ってな。」
「へー、そうした事ができる人っているの?。」
「うむ、人ではなく精霊だがおる事はおるし見たこともある。しかし、ああした者の力はそれこそ、元素のもっと源とも言われておるし、なんなら元素それ自体の凝縮した存在という説もある程でな、まさか精霊以外の者が使える可能性について考えもしなかったのだが、トモの話を聞いて以来、もしやと思ってな。」
「なるほどね。ちなみになんだけどさっきの木が燃えて火ってやつね、あれは木が火を強めると言った具合に相手を強める関係で陰陽で言えば陽、これを相生って言うのよ。」
「そうしょう、か。という事は逆もある、と?。」
「さすがキーケちゃん、鋭いねー。逆に相手を弱くする、陰陽で言う陰の関係を相剋と言うね。」
「ほほう、そうこく、か。」
「そう、木は土の養分を吸い取り痩せさせる、土は水を濁し吸い取りせき止める、水は火を消す、火は金物を溶かす、金物で作った斧なんかで木を切り倒すって具合。だけど、その関係も一方が強すぎると逆転すると言うのもあったね。」
「それはわかるよ先生、火が強ければ水を蒸発させるってことでしょ?。」
「ちょっと待ってよ先生。木は土を痩せさせるって言うけど、俺の親父は治水をしてるから良く聞くんだけど、山や森に木が多くあるから水が溢れずに済んでいるんだって言うよ。」
うおっ、いつの間にか俺とキーケちゃんの話しを聞いていた周りの生徒が会話に加わって来たぞ!
「先生たち、そういう面白い話しは授業でやって欲しいんですけど?。」
いたずらっぽく言うのはキーケちゃん所のクラス委員長、リリーデグスさん。
こちらも由緒正しいリリーデグス家の娘さんで、本物のお嬢様ってやつ、それこそ縦巻きロールのごきげんようって挨拶するくらいのやつでしたが、今じゃ制服組とも仲良くなってちょいとばかりお転婆いたずら大好きって感じになってるのよね、泣きべそなんてさよならね。
「いや、授業でやるって言ってもなあ、単なる雑談だしねえ。」
「まあ、そうだの、こんな話しはあたしらは良くしはするな。アルスやシエンも好きだよな、こうした話しは。」
「ですよね?私、食堂で先生たちの近くに座って話を聞く事があるんですけど、あれ、実は楽しみにしてる生徒が結構いるの知っておられましたか?。」
「はい?。」
「フム、近くに生徒が集まってくるのは知っとったが、大方アルスやらシエンやらの様子を見に来た者かと思っとったが。」
キーケちゃん気づいとったんかーい!
俺はなーんも気づかなかったよ。
「まあ、そうした生徒もいることはいますが。」
「いるのかいなっ!。」
「コホン、まあ、います。いますが今はその話ではありません。皆さんのお話しについてです。この前は剣を使いながらも剣を使っていないような扱い方の強さって話しから、そうした現象は他にも見られるのではないかって話題になり、アルス先生が絵画についても似た方向性のものがあるといった話しになりましたよね。そっくりに描く事を離れる事で出る魅力について語ってらっしゃいましたよね、あのお話しは聞きごたえがありましたわ!わたし達の間でもあれは神回だったと話題になった程で。」
「ストップ、ストップ!ちょっと待ってね。なによ?そんなにしょっちゅう聞いてるの?楽しみにして?多くの生徒が?。」
「はい。そうですわ。一応、私が場を仕切らせて貰ってはいますけど。」
「場を仕切るって、リリーデグスさん、あなた。」
「ええ、誰かが仕切らないと混乱してしまいますからね。不肖わたくし、リリーデグスめが、席の順番などを決めさせて頂いております。頂いてはいるのですが、最近、先生たちの雑談愛好者の数が増えまして、そろそろ、ちゃんと場を作って定期的にやって頂きたいと、そう思っておりまして、ならば、これは授業としてやるのが一番であろうと、そこでこうして直談判にやってきたわけです!。」
えへんどうだ!とばかりに胸を張って言うリリーデグスさん。
どうしたもんかね、これは。
「フーム、トモよ、これはどうしたものかね?。」
キーケちゃん、それ、今、俺も思っていたところだよ。
テレパシーみたいで嬉しいねって言うとる場合か。
「そうねー。そうした事情なら、時間と場所を決めていっちょやったりますか。」
いわゆる、トークイベントね、いいじゃないの!そうと決まれば俺もそういうのは好きなのよ!
「そうして頂けると嬉しいですわ。私も、もう食堂の席決めをしなくて済みますわ。」
「いや、君にはこのイベントの仕切りをそのまま頼みたいんだけど。教室の確保やなんかはこっちでやるからさ、リリーデグスさんは生徒の方をお願いしたいんだけど。」
「はい?。」
立場逆転、今度キョトンとするのはリリーデグスさんの方だった。
俺は彼女に、観客が混乱しないように調整するイベンターの仕事を説明した。
まあ、営利目的ではないし会場は教室で良い、トークイベントならスタッフもそんなに要らないだろうが、人が一カ所に集まるってのは色々と問題事も起きるってなもんだ。そうならないような調整は是非、生徒諸君の自治でお願いしたいのだ。
似たようなことを既にしていたリリーデグスさんが、それには適任だろう。
そんな説明を聞かせると、わかりましたわ!、とリリーデグスさんは力強く返事をした。
これが後に、放課後雑談室と言う名で週に1回1時間の人気イベントになるのだが、それはまた別の話しなのであった。




