輸送って素敵やん
その夜、食堂にて。
「ほう、馬術クラブか。面白そうではないか。」
「いや、俺もそんなに馬術について詳しい訳じゃないんだけどさ。顧問をやるくらいはいいかなってさ。それに、あいつら、どうも心配でさ。ほっとくと何するかわかんないからさ。シエンちゃんはどうするのよ?。」
「うーむ、我もトモちゃんと一緒に馬術クラブをやりたいところなのだが、実はうちのクラスの生徒から顧問を頼まれてなあ。」
「へー、なにクラブ?。」
「料理クラブだ。」
「そりゃ、シエンちゃんにピッタリじゃないの!。」
「きひひ、主に食べるほうか?。」
「おっ、キーケちゃん、お疲れ様!。」
「いや、思っていた以上にクラブ希望者が多くてな。参ったぞ。」
「あら、キーケちゃんもですか?。」
「お、アルスちゃん、お疲れ様です。」
「はい、お疲れ様です。まさか、あんなに沢山の生徒が文芸に興味を持っていたとは思わなかったですよ。」
「ふたりでやった実演の効果もあると思うよ。あれ、良かったもん。なんかちょっと感動したもんね。しかし、シエンちゃんの料理クラブってのも、いいんじゃないの?アウロさんのおかみさんに料理教わってから、ちょいと料理に凝ってたじゃん?。」
「そうよなー。理事長に聞いたら調理実習室もあるし材料費も支給って言うからさ、トモちゃんもピッタリだって言うし、やってみるか!。」
そんな感じで俺たちは各々クラブ活動の顧問も決まったのだった。
そうして後日、俺はフライリフに顧問をやる事を伝えた。
フライリフは最初はスニー、エイヘッズ、ネージュの4人で登録して幾らか活動してからメンツを増やしていこうかと考えているなんて言うもんだから、それは任せるよお前が部長なんだから、と俺は言った。
「え?俺が部長?。」
「そりゃそうだろ、発案者なんだから。」
「ウーム、ま、仕方ねーか。」
「よし、じゃあ、職員室に来い。届け出を出そう。」
という事で話しはとんとん拍子に進み、無事、馬術クラブ発足と相成った。
そして、その日の放課後。
「なによ?フラちゃん、本当に馬術クラブ立ち上げたんだって?。」
「エイヘッズ、お前、他人事みたいに言ってっけど、お前とネージュはクラブメンバーとして登録してっからな。」
「わーってるって。俺もネージュもそのつもりで愛馬を取り寄せたっちゅーの。」
「あら、見せて、見せて。ネージュ自慢の子を。」
「うふふふ、じゃあ、見に行っちゃう?先生も行こ!顧問でしょ!。」
てなわけで、エイヘッズとネージュの馬を見に行くことになりました。
学園の馬小屋、キットたちも預けてる場所に俺たちは向かう。
馬小屋にはフレーナさんがおり、水と飼葉をあげてくれているところだった。
「フレーナさん。いつもありがとうございます。」
「あら、クルース先生お疲れ様です。今日は生徒さんと馬を見にいらしたのですか?。」
「ええ、馬術クラブを発足しましてね、この子達はそのメンバーです。」
「あら、そうですか。えーと、フライリフ君の馬はゼケーロちゃんね、スニーちゃんのはカッティードちゃん、そちらのおふたりさんは。」
「どうも、エイヘッズです。今朝方、こちらに2頭、到着したはずなのですが。」
「はいはい、それなら、こっちね。」
俺たちはフレーナさんに続いて馬小屋を移動した。
「この子達かしら。」
フレーナさんが指し示したのは、黒に近い茶の体色に引き締まった筋肉質の馬と、尾の先が白っぽい明るい栗毛のシャープな馬の2頭だった。
「よーしよしよし、いい子にしてたか?アーリマー。」
黒に近い茶の馬を撫でてエイヘッズが言う。
「じゃあ、こっちの子がネージュの馬?。」
明るい栗毛の馬を見てスニーが尋ねる。
「そう、ケイピーって言うの。かわいいでしょ?。」
「フーン、けっこー速そうじゃない。」
「やだもう、かわいいって言ってよ。私に似てるでしょ?。」
「確かに、負けん気が強そうなとこは似てるかも。」
「もうっ!失礼しちゃうわ!。」
「へー、いい馬だな。アーリマーって言うのか。賢そうな目をしてるな。」
「へっへ、そうかい?俺の言う事をよく聞いてくれる忠実な相棒さ。どっかの負けん気強い欲深猫とは違うぜ。」
「なによっ!もうっ!みんなして!。」
「そう怒りなさんなって、みんなネージュがかわいいから、からかってんだよ。」
「優しいこと言ってくれんのフラちゃんだけだわ。これでフラちゃんが大金持ちだったらねー。」
「悪かったな、金がなくて。」
「金がない方が欲深猫に懐かれなくって良いってなもんだよ。なあ、フラちゃん。」
「ほんっと、ガサツなんだから、バカビン!。」
「まあまあ、お前ら、程々にな。さてと、こうしてみんなの馬が揃ったわけだが、どうするかね?なにか案はあるかい?部長。」
「実はあんのよ、ちょっとした案が。」
おっ、やるなフライリフ!
「その案とは?。」
俺は尋ねた。
「小口運送で速度勝負の仕事があってね、マーハイヨからバンコウテまでなんだけどさ。小遣い稼ぎも兼ねて、ひとつどうですかねえ?。」
「ほっ!バンコウテまでのレースかい!いいねー!。」
エイヘッズが乗ってきた。
「レースったって基本は輸送だぜ。なぜ速度勝負の小口なのかってのがクセもんでね。まとめて運べないのは衝撃に弱わかったりするからでね、あんまり無茶な走りをして荷が壊れちゃー元も子もないってわけ。それでいて、速い到着が望まれる商品だからね、勿論その分、実入りも良いってわけさ。」
「フーン、面白そうじゃないの!で?いつやるのさ。」
ネージュも乗って来たよ、こっちはスニーからお金持ちを紹介してもらうためだろうけどな。
「次の休みはどうだい?。良ければ5人分の仕事を入れてくるけど。」
「いいぜ、やったろーじゃねーの。」
「勝ったら、お金持ちのボンボンよ!スニー、わかってるわよね?。」
「わかってる、わかってる。うふふ、カッティード、久しぶりに思う存分走れるわよー。」
「ちょい待ち。5人分?俺もやるのかその仕事。ついて行くだけじゃダメなのか?。」
思わず俺は尋ねた。別に俺は荷運びすることもないだろうに。あくまで監督なんだから。
「えー、それじゃあ、つまらないっしょ。やっぱ条件一緒じゃないと。」
「いや、俺、顧問だしなあ。」
「話は聞かせてもらったのである!。」
この声は?
「その勝負、このスウォン・ルホイが預かろう。ちょうど次の休みは取材でバンコウテに行くのである。無事1番早くに着いたものには、その日の取材協力店、プレ・ヒンメルで食べ放題を贈呈しようではないか。」
「ちょっと、プレ・ヒンメルって言ったら評判のお店じゃない!!やだ!!私、俄然頑張っちゃう!!。」
お?スニーがやる気を出しましたよー。
「さあ、クルース殿、いや、クルース先生であったな。これも教育であるぞ、勝負に乗られい。」
「スーちゃんにそこまで言われちゃ乗らざるを得ないな。よし、わかった。」
「へっ!そう来なくちゃ!。」
指を鳴らすフライリフ。
「ひひっ、悪いねー皆さん。1着も食べ放題も頂いちゃって。」
「いくらビンちゃん相手でも、そうは行かないわよ。ボンボンとご馳走がかかってるんだから手加減できないわよ!。」
「うふふふ、みんなやる気になったみたいで良かったわ。こういうのは本気でやらきゃつまらないもんね!ご馳走は頂きよ!ねー、カッティード。」
「フフフ、教師の面目を保つためにも負けられないであるな!。」
スーちゃんが俺の肩をバシバシ叩きながらそんな事を言う。
いやー、どうなの?俺に教師の面目なんて無くない?
まあ、とは言うものの、やっぱり勝負となったら負けたくはないよなー。
参ったねこりゃ。
「じゃあ先生、学園の方への報告はお願いしますよ。」
あっ!そうか!エイヘッズに言われて思い出したけど、これはクラブ活動だったんだ。
「お、おう!任せとけ!。」
「あーっ!トモちゃん先生、クラブ活動って事忘れてたでしょー!私とスニーみたいな可愛い子ふたりと遠乗りできるからって、鼻の下伸ばしちゃって。」
「やだ、トモちゃん先生。ゴメンなさいね。当日は置いてっちゃうと思うけど。」
「ネージュもスニーも勘弁してくれ。課外活動届や短期労働申請を提出しなきゃなんないの忘れてたんだよ。申請書はお前らに書いてもらわなきゃいけないんだから、これから職員室に行くぞ。」
という事で俺たちは職員室に行き、理事長に事情を説明し、課外活動届と短期労働申請書を提出し許可を貰ったのだった。




