クラブ活動って素敵やん
生徒会の役員決めは、生徒たちによる話し合いにて無事に決まった。
俺やキーケちゃんたちのクラスのように、貴族商会組と制服組から均等に役員を出そうと言う事になり、生徒会会長に、7クラス、ウィンスナイド君、副会長に、1クラス、ゼニスさん、風紀委員長、2クラス、サイホームさん、風紀副委員長、11クラス、ビュッテン君、となった。
ウィンスナイド君は、あの振る舞いから満場一致で決まり、風紀委員長に選ばれた女生徒サイホームさんは、ウィンスナイド家のコネで名前が挙げられたこともあり遠慮していたのだが、同じクラスの委員から、制服組に偏見もなく公平なものの見方が出来る人だと押されるなど、他薦もあり決定した。
生徒会副会長のゼニスさんは、1クラスの委員長でハキハキした物言いをする女生徒で、口調は強いが愛嬌があり憎めない、そして根底には優しさが垣間見れる副会長には持って来いの人物だった。
風紀副委員長のビュッテン君は大柄な男子生徒で、フライリフを強く推薦していたのだが、フライリフ自身が今のポジションで手一杯だから勘弁してくれと言い、じゃあ、自分がやるからその代わりに半年委員をやってくれと言う事で、フライリフを半年委員にさせた交渉力が買われた。
まあ、なんやかやあったが、当初あげていた人物がふたり入った事でジマオウ先生も顔が立ったと感じたのか、少しだけだが不機嫌が和らいではいた、そもそも、そのくらいの事で大の大人が不機嫌マックスだったのもどうかと思うけどね。
俺はその後で理事長に、本日の生徒会についての報告をした。
「わかりました。ありがとうございます。上手いまとまり方だと思います。しかし、ジマオウ先生は夢想家だとおっしゃられたか。うーむ、ジマオウ先生もね悪い方ではないんですよ、教師生活の長い方ですし。ただ、気が小さすぎるんですな、この学園の理念では学園として運営出来ないと考えてらっしゃるんですな。自分が気をつけていないとこの学園が破綻してしまうと、いわば間違った責任感をもっていらっしゃるんですな。」
「間違った責任感ですか?。」
「左様、彼には当初この学園の理事長にと言う話しもあったんですよ。ですが、彼はその話しを蹴っているのです。」
「それは、なぜ?。」
「そうした理念ではとても学園の安定した運営が出来るとは思えない、なにかがあった時に自分はその責任を負えないと、そう言いましてね。」
なるほどねー。わかったよ。そうした人は前世界でもいましたよ。
責任は取りたくないけど口は出すってのはなあ、ちょっと大人としてどうかなとは思うが。
前世界で会った人は、自意識と自己顕示欲の強さもあって職場の同僚の多くとぶつかって、最終的には居づらくなって辞めてしまった。
ジマオウ先生はそうならなければいいんだけどなあ。
「なるほど、わかりました。気をつけてみます。」
「すいませんね、色々とあるとは思いますが、よろしくお願いします。」
まあ、いろんな考え方の人がいて、そうした多様な価値観とも共生できる人を育てましょうってんだから、ある意味都合の良いサンプルではあるのかも知れないな。
ああした人とどう共生するのか?。
いやー、でも、多様な価値観を認めない人との共生ってどうなのかね?。
勿論、認めない理由にもよるんだけど。
私はあなたの意見には反対だ、だが、あなたがそれを主張する権利は命がけで守る、って言ってたのは誰だっけ?民主主義、言論の自由について述べた言葉だったはずだが、今の俺も似たような気持ちだよ。
ジマオウ先生の言っていることには反対だが、ジマオウ先生がこの学園にいる事は擁護しましょうよ。
まあ、俺に人事権があるでもなし、なんだけどね。
翌日、生徒会による全校集会が行われ、生徒会役員の紹介がなされた。
その後、クラブ活動について説明がなされ、キーケちゃんとアルスちゃんが壇上に上がった。
生徒会長より、クラブは最低4人揃えば認定され学園から部屋の使用許可や活動補助金が出ると説明される。
「いきなり、自分たちで作りなさいと言われても見当がつかないかも知れませんね。まずは、ミキイケ先生とアルス先生に顧問となって頂きまして、ふたつのクラブを作りましたのでこれをモデルにして貰えればと思います。それでは先生方、お願いします。」
「只今紹介を受けたミキイケだ。あたしは武術全般について研究し鍛錬する武術クラブの顧問を引き受ける事となった、興味のある者は本日放課後この場所に来られたし。以上。」
まるで軍人の伝令だよ。
続いてアルスちゃん。
「わたしは、絵画や演劇、戯曲など芸事全般を研究する文芸クラブの顧問を引き受けさせて頂く事になりました、アルスです。芸事の好きな人、興味ある人は放課後職員室のわたしの所まで来て下さいね。ゆくゆくは、わたしたちでそうしたモノを製作し発表したいと思っています。よろしくお願いしますね。」
アルスちゃんらしいかわいい紹介だね。
「さて、皆さん、実際に教わる先生がどのくらいの腕なのか見てみたいですよね?これから、壇上でミキイケ先生とアルス先生の木剣を用いた模擬戦を行います。剣術の試合と言うよりは見せる事を前提にした、お芝居風の模擬戦という事です、是非、ご覧下さい。それでは、両先生、よろしくお願いします。」
イケメン生徒会長、ウィンスナイド君の司会でなんだか物騒なショウが始まる様子。
まあ、あのふたりなら大丈夫だとは思うけど、ショッキング映像にならないようにお願いしますよ。
壇上のイスなどが下げられ、短い木剣の二刀流アルスちゃんと身長に対してスタンダードな長さの木剣を持つキーケちゃんが向かい合い、互いに礼をする。
上段に構えたキーケちゃんが、ゆっくり進みアルスちゃんとすれ違いざまにキレイなフォームで振り下ろす。
互いに向き直って、今度はアルスちゃんがすれ違いざまに、舞を踊るような回転で二刀を繰り出して見せる。
両者ぴたりと動きを止める。
しばしの静寂後、キーケちゃんがダッシュで間合いを詰め片手で剣を払う。
アルスちゃんは飛び込むようにその剣を避け、キーケちゃんを頭上から切りつける。
その二刀を軽く剣で払いのけ、アルスちゃんの着地地点に向け飛び蹴りをするキーケちゃん。
蹴りを両手の木剣で受け、更に後ろに飛んで勢いを消すがキーケちゃんは追撃してくる。
両手に剣を持ったままキーケちゃんの蹴り足を掴み、上空へ投げるアルスちゃん。
投げたキーケちゃんを追ってアルスちゃんも飛び上がり、空中で連続蹴りをするが全てキレイな手わざで払われる。
そのまま、互いに木剣で相手に一撃を加えるが、お互いその動きを読んでいたのか、その勢いを利用して間合いを取る両人。
そして、またゆっくりとした動きでお互い近づき、今度はお互いに舞を踊るように剣を当て捌き受け流す。
おおっ!これでシャンシャンと鳴り物でも響かせれば、まるで前世界の京劇のようじゃないか。
心得のあるふたりの動きは力強くも美しく、間に立って巻き込まれたらエライ事になりそうだという思いを抱きつつも、ずっと見続けていたくなるようなものだった。
所々、バチっと動きを止めるとこなんて、めっちゃカッコイイじゃんさあ。
そして、その舞を踊るような殺陣も段々と速度が増し、見ているこっちも手に汗握るような速度になった時に、カンッと乾いた音がしてキーケちゃんの木剣が宙高く回転して舞った。
飛びかかるアルスちゃんは倒れ込むキーケちゃんに馬乗りなった。
揉み合う二人の上に先ほどの木剣が落ち、上になっていたアルスちゃんに当たる。
オーバーに両手を上げて、ヤラレターとばかりに倒れ込むアルスちゃん。
身体のほこりを払い、額の汗をぬぐい立ち上がったキーケちゃんは生徒たちをを見て一礼した。
一瞬の静寂後、割れんばかりの拍手、指笛、喝采の声。
アルスちゃんも立ち上がり、キーケちゃんとふたりで喝采の中、手を振りゆっくりお辞儀をする。
会場割れんばかりの拍手喝采の中、おいおい、グランドフィナーレですかい?チルデイマ行進曲ですか?青春燃ゆってますかい?なんか、胸にジンときちゃうじゃないの!やっぱキーケちゃんかっこいい!!
「やだー、ミキイケ先生かっこいいー。入っちゃおうかな武術クラブ。」
「いやーちょっと、あんたじゃ無理っぽくない?一緒に文芸クラブ入ろうよ。さっきのあーゆーのやってみたくない?。」
「マジでミキイケ先生強かったんだな。気のツエー婆様かと思ってた。」
「バッカ、オメー知らねーのかよ、シエン先生より強いらしーぞ。」
「マジ?噓だろ?シエン先生、昼に食堂のメニュー全制覇してたぞ!それに勝てんのかよ?。」
「それ関係なくねー?。」
「俺たちもクラブ作ろーぜ!。」
「なに作んのよ?。」
「寮帰って相談だな。」
「なんだよ!面白そうじゃん!。」
「学園の剣術王になってやる!。」
まあまあ、皆さん触発されてますねえ、結構結構!そうでなくちゃあ、若者は!
人とつるむなんてあほらしいってクール気取るのも悪くないけど、大人になれば、人は根っこの根っこじゃ孤独なんだって腹が痛くなるくらい理解できる時が来るんだからさ、若いうちは若いうちにしかできない事をやっとけ!!
俺は微笑ましい気持ちで盛り上がる生徒たちを見ていた。
そして、クラブ紹介と説明会が終わり、各々教室に帰る道すがら。
「トモちゃん先生はクラブの顧問なにかやらないの?。」
ネージュが話しかけてきた。
「そうなー。今ん所、特に予定はないなあ。」
「先生よう。馬術クラブやろーぜ。俺っちメンツ集めっからさあ。」
「フラちゃん!そういうの辞めたんでしょ!。」
「ちげーってスニー。健全なやつよ。俺っちのクリーンな伝手で荷物運びの仕事何かもあっからさ、そんなんで小遣い稼ぎもできるしよ。」
「あー、それならいいかも。他所のクラスの女の子で馬乗りたいって子何人か知ってるから誘ってみようかな。」
「なに?女の子?どんな子?かわいい子?。」
「エイヘッズか。どっから湧いて出た?。」
「へへへー、女の子と聞いちゃ黙ってられねーって。なによ?なにクラブ?。」
「馬術クラブだってさ、まったく、鼻の下伸ばしちゃってみっともない。」
「うっせーよネージュ!馬術か。馬か。俺も嫌いじゃないんだよね。学園には連れてこなかったけど持ってこさせっかな。」
「ほー、なによ?エイヘッズ、乗れんのかよ?。」
「へへー、まあな。マハのフライリフって言えばホースパレッタ連中の伝説だって言うじゃないか。是非、挑戦したいもんだね。」
「いいぜ。いつでも受けて立つぜ。」
「やーねー、ホント男ってなんでも勝負なんだから。」
「なによネージュ、馬に興味ないの?。」
「そんな事はないよ。自分の馬も持ってるし。かわいいんだからー。」
「ふーん。かわいいんだ。私のカッティードはねえ、速いよ。」
「へー速いんだー。それはけっこーでございます事。」
「あら、乗ってこないわねー。つまんない。」
「うふふ、そんな見え透いた挑発、誰が乗るものですか。」
「うーん、それじゃーねー。あっ!そうだ!馬に乗りたいって言ってた子で確かメッツェラー海運商会の子がいたっけ、彼女、お兄さんがいたって言ってたな。」
「ちょっとちょっと!大金持ちじゃないのよっ!紹介しなさいよ!ねーったらねーっ!。」
「私のカッティードに勝てたらね。」
「やったろーじゃないのさ!俄然やる気出ちゃったもんね!ビンちゃん!うちの子も一緒に連れてきてよね!。」
「おう、そりゃ構わねーけど。」
「うふふ、私、なんかネージュの扱い方、わかっちゃったかも。」
小声でスニーがエイヘッズに言う。
「基本、単純だからなあいつは。」
小声でエイヘッズが言う。
「何か言った?ビンちゃん?。」
「いや、何でもねーよ。俺にも金持ちの子紹介してくれってよ、スニーに言っただけさ。」
エイヘッズはそうネージュに言う。
「ならいいけど。楽しみだわー、メッツェラーの御曹司でしょー、どれだけ絞り取れる事か、にひひひひ。」
「ちょっと、ネージュ君ねえ、同級生の家族にあんまり無茶な事しないようにね。頼むよ本当に。」
俺はネージュの笑顔があんまりにもあんまりだったもので、つい言ってしまった。
「ネージュ、おまえ今、凄い笑い顔だったぞ。ちょいとばかりおっかなかったぞ。」
「ぎゃははは、ゲヘナバウンサーをビビらす笑顔って、どんだけだよネージュ。お前の欲深さにゃ地獄の用心棒も形無しってか。」
「フーンだ!何とでもお言いなさいな。私は絶対玉の輿に乗ってやるんだから!その時になってお金貸してくれなんて言ってきても遅いんだからね!。」
「先生よう、おとぼけコンビの愉快な冗談はさておき、馬術クラブ顧問の件、考えてみてくれよ。頼むわ。」
「誰がおとぼけコンビだ!。」
「誰がおとぼけコンビよっ!。」
「確かに息ぴったりだな。顧問の件、前向きに考えとくよ。ほら、みんな早く教室に行きな。」
「ウイーッス。」
「はーい!。」
「もう!失敬しちゃう!。」
「そりゃ、俺のセリフだ!。」
まったく賑やかな連中だ。しかし、馬術クラブ顧問か。面白そうではあるな。
それに、あいつらを野放しにするのも心配だしな。
やってみるか。




