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無重力格闘少女伝説オメガスクリームⅡ世  作者: 川場託
VS.スイートボルテクス
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第六十九撃

 口には出せないが、いつ終わるとも知れず長々と続く母からの説教に、


(知らねえよ)


 と思わざるを得なかった。


 こうしてうつむいているのは、説教を黙って聞いているようにも見え、しかしながら聞いておらず反抗しているような感じがあるようにも見えるというアマンダ・ライトなりのスタンスのためだった。


 聞きたくはないが、傾聴しているふうに見せるのはプライドが許さない。かといって聞いていないふうに見せるほどの勇気は持てなかった。


「聞いているのアマンダ!」


 母がテーブルを何度も叩く。


 かなり昂っているいるらしい。温厚とは言えない人物ではあるのだが、ここまでの感じはなかなか見せず、そうとう怒っているらしいことが感じ取れた、が、それこそ、


(知らねえよ)


 ということだった。


 スタンスを貫き、姿勢を崩さない。


「テスト前にぶらぶらしてたよね!

 勉強、明らかにしてなかったよね!

 どうして、わざわざ学校が設定してくれた目標があるのに、それに向けて頑張れないの?

 いい? アマンダの将来にとって、目標を達成するために対策するという経験は必ず役に立つの。それができないのとできるのとでは将来に大きく影響があるの。

 ちゃんと頑張らないアマンダが心配なの。

 将来どうなると思うの? ちゃんと頑張らないでこのままでいたら」


 一方的に自分の将来への見込みを否定されたように感じられ、アマンダは顔を上げ、


「学校の勉強が必ずしも役に立つとは限らないじゃないか!

 勉強できてもおかしなやつっていっぱいいるだろ、世の中!

 学校の勉強が役に立つって人がいるのは確かなんだろうけど、わたしはそれに当てはまんないよ!

 少なくとも、それがすべてじゃないってことくらい、わたしは知ってる……!」


 ニュースサイトに軽く目を通すだけで、うらやむ人もいるだろう学歴の人間が明らかに倫理を逸脱した話や行動をしているのが目に飛び込んでくる。罪を犯した天才などの話も決して少なくはない。


 そういう姿を見ている限りにおいて母の言うことに説得力を感じず、逆になぜ母はそう感じないのか不思議でならない。


「確かにそうだ」


 母の横に並んで黙っていた父が不意に言葉を発した。


 思わぬ助けに顔を上げる。


 しかし、


「何言ってるの? アマンダに何を聞かせるつもり?」


 母が眉の間を寄せて父をにらむ。


 父は少し怖気ついた風に上半身をそらしつつも、アマンダのほうをしっかりと見て、


「まあ聞いてくれよ。

 学校の勉強がすべてではない、というのは確かにそうだ。俺もそう思う。

 だけどな、将来のことをきちんと考えている者は学生時代からすでにそれに向けた自分の勉強をしているものだ。

 目的意識のある者は、自分の目指す業界に入るための真面目な努力をしている。

 それをしていないアマンダが、何か言う資格があると思うか?

 ないだろう。なら、学校の勉強を頑張って将来に備えるのが、今のアマンダがすべきことなんじゃないか?」


 父はこちらの両肩に手を置いてきた。


 鳥肌が立つ思いがした。


 アマンダは父の手ををはねのけ、


「うっせ馬鹿親! 馬鹿親! 馬鹿親!」


 叫んだ。


「勝手な馬鹿親たちの子供の成績上げゲームなんかに付き合っていられねえよ!

 もっともらしいことを言って、わたしの成績の数字があがったらうれしいとか、さがったら悔しいとかそれだけのことだろ!

 ひとの気持ちを踏みにじるようなことばかり!

 くだらないゲームのためにわたしの将来まで持ち出しやがって!

 もう知ったことか!」


 二人に背を向け、自室に向かう。


「待ちなさい!」


 両親からの声も無視した。


 自室に戻り、ベッドに横になる。


 ベッドの上には先客のようにアニメキャラのぬいぐるみがかざってある。


 小さなころに誕生日に両親から買い与えられたものである。


 両親からの贈り物であることが気になり、ぬいぐるみの手をつかんで壁にたたきつけた。


 軽いそれは大した音を立てるでもないまま壁から再びベッドの上に落ちてきた。


 引きちぎってやろうか、と思いもするも、理性が働き思いとどまる。


「わたしは」


 横になったままつぶやく。


「決して何もしていないんじゃない。

 いつまでも空っぽのわたしじゃない」


 空っぽなのは学校のほうであり、自分ではない。


 なのであれば、学校に行く意味があるのだろうか。


「くっそ、わっかんね……!」




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