第六十七撃
「ユーマ、ユーマ、ユーマっ!」
そう呼ぶ声はまるでスージーのようだったが、今回のそれはサンドラのものだった。
帰りにジムに寄ったところ、興奮しているサンドラが駆け寄ってきたのである。
スージーとはあまり気持ちの良くない別れかたをしてしまった。そのことが心のどこかにひっかかっていたのか、かすかに苛立ってしまう。
「落ち着けよ」
友麻は冷たくなだめようとしたが、
「これが落ち着いていらりょましょうかっ」
と言ったのはいつも冷静なはずのキムだった。
二人ともそれなりに普段は大人の落ち着きがあるはずなのに今はそれが見られず、非日常的な恐怖を覚える。同時に、こちらも落ち着きをうしなった振る舞いをせねばならないのではないかという不安も感じた。
「絶対王政が崩れた!」
サンドラに肩を掴まれた。
「絶対王政?」
この〈サミュエラ〉は王政ではない。つまりは何かの比喩で言っているのだろうが、見当もつかない。
「スターストームが……!」
サンドラの言葉に、そういえば今日はローズ・チャンピオンであるスターストームの防衛戦がある日だった。その結果が出たのだろう。
「おちついてくだしゃいサンダラ」
キムがキムらしくない。
「サンダラって誰だ。
わたしはサンドラだ。
それは良いや。
とにかく、ユーマ」
「スターストームが負けたんだろ」
「なんでわかった!」
言い当てるとサンドラもキムも愕然としていた。
長くやっていればいずれ負けることもあり得る。それは実力があったとしてもほんとうの意味では絶対的な力というのは存在しないからである。確かに圧倒的な力を持っていて敗北などありえないと思わせるほどではあったが。
「なんでって、そんな感じだったじゃねえか。
で、勝ったのは誰?」
「それがな、スイートボルテクスなんだ!」
「誰?」
心あたりのない名前を出され友麻は困惑した。




