第三十六撃
「よせよ。
なに言えばいいのかわかんねえよ」
スージーが言い出した戦勝祝いはドリンクを飲みながらおこなうことになったのだが、乾杯に際してサンドラから一言を求められ、戸惑った。
「そんなことじゃだめだぞ。
いずれもっと多くの人が祝ってくれるようになる。
そのときになにも言えないんじゃ恥ずかしいぞ」
サンドラがたしなめつつ、
「それじゃあ、子供あつかいしてきたサンダークラップを倒した、ということについてはどう思う?」
と意地悪な笑みを浮かべた。
言われて友麻は、
「いや、まあ、なんだ……」
「子供あつかいってなに?」
スージーが口を挟んできた。この件はマスコミの記事にもならなかったし、教えることもなかったので知らないのだろう。
しかしなんとなくそれを自分の口から説明するのは気恥ずかしいものがあったので黙った。
キムがスージーに耳打ちをした。
「ああ、そうなんだあ」
「うっせ馬鹿!」
いやらしい笑みを浮かべるスージーに怒鳴りつけるしかなかった。そもそも子供あつかいしたのはサンドラが最初で、その原因にスージーも絡んでいるのである。別にスージーが悪いというわけではないのだが。いや、だからこそ笑っているのか。
「まあ、なんだ」
目をそらし、両手で包んだコップをなんとなく中のドリンクを渦巻かせるように回転させた。心なしか頬が熱い。
「別にどうということもなかったよ。
サンダークラップを倒したからって、自分が子供じゃないことを証明できるわけじゃないしな。
単にあたしが強かった、ってことだけがわかっただけでな」
別にそれがどうということでもないと思っていたが、
「かっちょいい~」
スージーがほめてくる。そんなつもりはないのだろうが馬鹿にしているようにも感じられ、
「んだよ。
サンダークラップが弱いんだから仕方ねえだろ」
「あんまり対戦相手を弱いって言うな」
サンドラが義手の肘で突いてきた。
「サンドラだってサンダークラップは格下って言ってただろ!」
「あれは、まあその、なんだ」
反撃が思いがけないものだったのか、あからさまにサンドラが目を逸らして動揺を見せる。
「そんなことより乾杯しませんか、そろそろ?」
キムが微笑みながら静かに言った。
あまり感情をあからさまに見せないキムだったが、やはり勝利は嬉しいのだろう。腹を撫でる妊婦のような慈しみに満ちた微笑みだった。
「ほら、ユーマ」
サンドラが促してくる。
「早く、早く」
スージーも同調する。
「みんな、待ってますよ」
キムまでそう言い出したので、
「んじゃまあ……、とりあえず、ありがとう!
乾杯!」
「乾杯!」
コップを掲げると、皆もそれにならった。




