第三十五撃
オメガジムを前にスージーは悶えていた。
繁華街で一緒に遊んだ日から友麻に連絡は取っていない。試合が近づくと忙しくなるからなるべく近づかないようにしていた。試合が終わってようやく連絡を取っても良いと思えるときが来たのである。
トゲにおっかなびっくり触れるかのようにジムの玄関ドアのノブに手をかけては放し、を繰り返す。頬に手を当てたり頭を撫でたりがっくりとうなだれたりとせわしなく動く。
連絡を取らなかったのは試合だけが理由ではない。
(ユーマが好きだ、って言っちゃったからな……)
そのことを友麻がどういう意味で受け取ったかはわからない。
とくに驚いたようすもみせなかったところから判断すると友達としての意味に取ったのかもしれない。普段から「マイ・フレンド」を連呼しているのでそうとったと考えるのが自然だろうか。
しかしそうではなく、こちらがいかにも重い話をしようとばかりの態度をとったからこちらの好意についてはとりあえず無反応でいたのかもしれない。話の雰囲気からこちらの意味に取ったという可能性もある。
もし後者だったとしたらどうすればいいのだろう。
あとになってこちらの好意にその解釈をした友麻がどういう反応をみせるのかは未知数だった。
からかわれるかもしれない、あるいは真剣に受け取るかもしれない。
どちらにしても、
(恥ずかしいよ……!)
頭を文字通り抱えてしまい、その場にかがみ込む。
その瞬間、ドアが開き、ぶつかりそうになってしりもちをついた。
「お前か。
なにやってんだよ」
ジャージ姿の友麻が中から姿を見せた。
「なななななんでっ」
後ろに倒れた姿勢から立ち上がろうとして勢い余って四つん這いになってしまう。
「えへへ」
立ち上がり際に恥ずかしくて笑顔でごまかそうとしたが、友麻は反応しなかった。かえって恥ずかしさが増した。
「入り口のセンサーがピーピー鳴いてうっせんだよ。
なに入り口でうろついてんの?」
「し……、思春期の悩みだよっ」
適当なことを言ってごまかすと、
「そ、そうか。思春期の悩みならしかたないけど。
それより、なんの用だ?」
思春期の悩みで納得されたのは意外だったが、
「そうそ、用事!
用事があるんだよ!」
「だからそれを訊いてる」
きまりが悪くて慌て気味になっているのに友麻は冷たい声で言ってくる。一見すると冷たいようだが、ほんとうの友麻のやさしさを知っている身とすればそれは表面的な態度に過ぎないとわかる。
だから、
「ユーマの戦勝祝いに来たんだよ!」
「いらね。
帰れ」
「そんなこと言わないでよお」
友麻の肩を掴んで前後に揺さぶる。
「スージーか。
入れよ」
ジムの奥からサンドラの声が聞こえてきた。
友麻は舌打ちし、立てた親指をクイとジムの中に向けた。
入るということは友麻がスージーの好意をどうとらえているか聞かされるのではないかとおそれたが、いまさら断るわけにもいかず、
「えへへ……」
愛想笑いを浮かべて入った。




