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無重力格闘少女伝説オメガスクリームⅡ世  作者: 川場託
VS.サンダークラップ
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第二十七撃

 スージーの見立てで千鳥格子のスカートを身に着けているが、ほんとうにこれで合っているのだろうか。


 流行とは関係なくスージーの個人的な好みだという可能性もなきにしもあらずだったが、はやりに疎いのでそこはわからない。


 スージーが騙そうとしておかしな格好をさせている可能性も考えないではなかったが、さすがにそれはないだろう。


 自分でファッションを追いかけるような服装を購入しないのは、サミュエラ人のセンスは地球人のそれとはまた違っており、どういう着こなしをすれば正解なのかわからなかったからというのもある。サンドラに訊けば喜んで教えてくれたかもしれないが、二人の間に横たわる微妙な距離感がそれを許さない。


 街を通る人々の視線を気にしてみたが特に疑問を持った目つきはなかった。サミュエラ人が他人のファッションへの興味が薄い可能性があったが、そこまではわからない。


 自分がさせられている格好がはずれだった場合を想像してひそかに不安になっているが、スージーの態度を見るにそれを言い出せない。


「ほらほらあれ見て!

 可愛い!」


 スージーが陳列されているアクセサリーを指さす。


 遊ぶというのだから映画を観たりウィンドウショッピングをしたり食事をしたりするのかと思っていたが、スージーに任せっぱなしにしていると、もっぱらショッピングばかりしていた。もっとも、食事を楽しむ文化がサミュエラにはないから、その線はもともとなかったが。


 既にかなりの荷物をスージーは抱えている。


(そんなに買って大丈夫なのかよ?)


 友麻はそれなりに稼ぎがあるが、スージーは単なるハイスクールの生徒である。自由にできる金額がそんなにあるとは思えなかった。


「あのさ、買い過ぎじゃね?

 金あんの?」


「パパが働き者で、いっぱい稼いで、いっぱいお小遣いくれるから大丈夫なんだ!」


 アクセサリーを手に取り、スージーはレジに足を運んだ。


 そうやって背中を向ける寸前に見せた表情は、無理した笑顔に見えた。暗さを力づくでねじ伏せる無理さをそこに見出したが、


(別に友達じゃねえから、そこまで突っ込むこともな……)


 と、明らかにしようとするのを諦めた。


 それにしても、ハイスクールの生徒という身分にふさわしくない金額を小遣いに与える父親の存在に疑問を持った。


 比喩としての「パパ」だとしたらうなずけるが、スージーの性格にそぐわない気がした。もっとも、それを判断できるほどにスージーという人格を知っているわけではない。もし当たっていたとしたら恐怖だが。


 店を先に出て会計を終えるのを待っていると、新たな包みを荷物に加えたスージーが少ししてやってきて、


「パパのこと、訊かないんだね?」


 言って、しかし頬を赤らめて顔を逸らした。突っ込んだことを言うのに恥ずかしさを覚えたのだろうか。


「そりゃ、まあ」


 先を歩くスージーを追い、後ろから声を発する。


「訊いてもどうにもなることじゃないだろ?」


「それはそうだけど、わたしは踏み込んで欲しかった」


「ひとに求めるなよ。

 あたしはそれに応えられない」


「どうにもならなくっても、訊いて欲しかった」


 だんだんとスージーの足が速まる。


「わたしは、ずっと、さみしかった。

 だから、訊いて欲しかった」


 口調もやや早口になっている。


「友達に言えよ」


「友達なんていないもん。

 わたしクラスで孤立してるから」


 さっさと通り過ぎたい話題であるかのようにスージーは一息にそう言った。声音に涙が混じっているのが感じられ、こちらの気分も不安定になる。


「……まあそれは何となく察してたけどよ。

 でも。

 あたしに言うことじゃなくね?」


 不安定さを立て直そうとしてなのか自分でもわからないが、冷たくそう言った。


「言うよ。

 ユーマが好きだから。

 だから聞いて欲しい」


 と言って真っ赤になって涙を流す顔をこちらに向けてスージーが立ち止まる。


 街の真ん中で立ち止まって往来の邪魔になるが、あえてそこには触れず、聞かざるを得ない雰囲気に呑まれてしまう。


「ママがね、男の人が好きな病気なの」


「ん?

 ああ、なるほど」


 要するに浮気性ということだろう。しかし父親の話ではなかったのか。


「ママはしょっちゅう家を空けて男の人のところに行って、全然帰ってこなくて。

 パパはそんなママに何も言えないで、仕事に逃げて。

 わたしはそんなパパもママも嫌い。

 だから、パパはわたしをどう扱って良いのかわからないから、お小遣いたくさんくれることでごまかして……」


 言葉の端々にしゃくりあげる声が混じる。


 友麻はスージーに向けて足を踏み出した。


「わたしのいるところなんて、どこにもないんだって、いつも感じてる。

 だから、ジョギングはじめたばかりのわたしが足をひねったのを助けてくれたユーマが、ほんとうにやさしい人だって感じて、だから」


 ジョギングがどうのこうのという話は友麻は覚えていないが、たぶんそうしたのだろう。そのような小さな親切ていどでやさしい人と言われるのもむず痒い感じがしたが、


「わかったよ」


 スージーの後頭部に手をまわし、強引に胸元に引き寄せる。


「ユーマ?」


 最敬礼のようなかたちで友麻の胸に頭を突っ込むスージーがくぐもった声を上げた。


「安心しろ。

 あたしは、やさしいからな」


 微笑みを浮かべてみたがこの体勢では見えていないだろう。


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