第二十六撃
「ところで」
スージーが顔をうつむかせて上目遣いでこちらを見ている。こちらより背が高いからそうするにもやや屈み気味になっていた。
友麻はいちど脱いだジャージをはおって、あごをクイと持ち上げ、ファスナーを上まで閉じる。両腕を軽く持ち上げて肘の突っ張り感を調整する。
「どうしてそんなもの着て来てるの」
なにやらスージーは心底疑問なようである。
しかし、そんなものとは何のことだろうか。
肩を二、三度ゆらして更に着心地を整える。着慣れているジャージのフィット感に改めて満足する。
「そのジャージのことだよ。
街で遊ぶってのに、その格好はないよ」
「そんなこと言われてもな」
ジャージの上のポケットに左手を突っ込み、右手を首筋にあてがった。
「ふだん街で買い物なんかしないし。だから、どういう格好をすればいいのかなんてわかんないからこういういつも出歩いている格好で来たってだけだし」
「いつも出歩いているって、トレーニングのときのことじゃないの」
「いやまあそうなんだけど」
確かにそうであることは否定しがたい事実ではあるもののそれではまるで自分がそれ以外に外出などしないようではあるまいか。
「いやまああのほら。
ジャージって、素晴らしい服なんだぞ」
「ジャージが?」
小首を傾げている。
そこを疑問に持たれたのが悔しく、拳を握りしめて、
「なにより動きやすい!
それに、ストリートファッションって感じで格好良い!
軽い!
通気性に優れている!」
空中に向けて軽く一発パンチを放つ。
「よくわかんないけどジャージを愛していることは伝わったよ?」
なぜか慰めるような微笑みを浮かべているのが苛立つ。
「それに、ジャージ以外の外行きの服を持ってないし……」
少しすねるような口調になってしまったのが我ながら恥ずかしかったが取り消しようもない。舌打ちしかけたがスージーが怖がるかと思いとどまる。
「信じられない!」
勢いよく肩を掴んできて前後に揺さぶってくる。
「ユーマ、もったいないよ! せっかく街に来て遊ぼうってのに、可愛い服や格好良い服着ないなんて!」
「いやまあなんだそのジャージ格好良いじゃないか?」
「良くないよそんな体育の授業みたいなの!」
「体育の授業……!」
創作ダンスや跳び箱をするときの服装だと思っているらしい。こちらこそ信じられない。
「それじゃあ、ユーマのおしゃれな服買いに行こう!」
腕を掴んできてスージーは雑踏の中に引っ張った。
「あたしは筋肉質だから似合う服なんてねえよ」
「そんなことないって!
ユーマだってそれなりだよ!」
「それなり……!」
表現の仕方に傷つかないでもなかった。確かにスージーの外見に比べたら可愛さは格段に劣るだろう。しかしもう少し言いかたというものがあるのではないだろうか。
スージーは遊具ではしゃぐ用事を連想させる楽しがりようで、
「ユーマ?
ほら、早く!
ユーマに似合う千鳥格子のスカートがあるんだよ!」
友麻の腕力ならば振りほどけないでもなかったが、なぜかそうする気にはなれなかった。




