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無重力格闘少女伝説オメガスクリームⅡ世  作者: 川場託
VS.サンダークラップ
24/71

第二十四撃

 繁華街というだけあってさまざまな人々が通りかかる。


 親に手を引かれて歩く子、連れ立つ男女、老人等……、ファッションもさまざまで、いまはやりのものからフォーマルなもの、等、いろいろいる。


 それらの喧騒を見下ろすようにしてポーズを決めた大きな銅像が立っている。


 このローズ・コロニーを建造した偉大なリーダーの像である。名前は忘れてしまった。


 ローズ・コロニーの人々はこのあたりで待ち合わせをするときはこの銅像のことを指して単に「銅像の前で」と言うらしいが、友麻はいままでそのような約束をするような相手もなく、こうしてここで待ち合わせをするのも当然はじめてだった。


(銅像なんて、前時代的な……)


 待ち合わせの場所としては優秀だが、いずれ旧悪が暴かれて倒されるはめになるのではないかとさえ勝手な想像をしてしまう。


 約束の時間までにはまだ三十分ほどある。


 もちろん楽しみにしていたわけではなく、単に待ち合わせには早く来る習慣なだけである。


 近場の自動販売機にて水を購入する。


(そろそろ減量しなきゃならないが……)


 減量に苦労するほうではないが、それでもあるていどはしなければならず、口に入れるものについては注意する必要があった。おそらく余分にとれる水は今回が最後になるだろう。


「あの……?」


 水を飲んでいると数歳ばかり年下のようである女の子が話しかけてきた。


「オメガスクリームⅡ世さん、ですよね?」


 看破され、しかしながらいまさら驚かない。それなりに有名人だからこういうことはよくある。


 うなずくと、


「サイン、良いですか?」


 と言って着ていたシャツの裾を引っ張ってこちらに向ける。


「あいよ」


 ペンも受け取り、さらさらと記名してやる。


 女の子は礼を言い、近くで待っていた仲間らしき集団の中に入って行った。


「サインもらっちゃったもらっちゃった!」


「えー? オメガスクリームⅡ世でしょ?

 わたしあいつ嫌い!」


「言葉遣い悪いよね!」


 本人が近くにいるというのに、仲間だか友達だかの一人が嫌悪の感情を示した。


 腹立たしいことではあるが既に慣れていることでもある。


 それに、いまはそれどころの気持ちではなかった。


 先ほどの女の子をきっかけに、さらに数人からサインや握手を求められ、それが途切れるのに十分ほど要した。


 モバイルを取り出し、待ち受け画面を見る。


 約束の時間がだんだんと近づいてきていることが表示された時計から読み取れた。


 気が重い。


 スージーになにか話をしなければならないということである。それも単なる雑談ではなく、あるていど決定的なことをしなければならない。


 怒らせてしまい泣かせてしまったスージーと何を話せば良いのかまったく見当がつかない。


 軽い感じで押し通せばうまくやりすごせるのかもしれない。


(『いやーごめんごめん。ちょっと考えすぎてやることおかしくなっちゃったんだよね!』

 なんてな)


 無理である。


 自分にそのようなことができる器用さがあるとは思えなかった。


 頭を掻いた。


「帰るか」


 つぶやき、その場に背を向ける。


 自分にできることがあるとは思えない。いまさらなにをどうつくろったところで事実が変わるわけでもない。スージーには小石につまづいて転んだくらいの考えで諦めてもらうしかない。


 サンドラやキムに対してごまかしの言葉を考えなければならない。それはそれで憂鬱だったが、スージーと向き合うよりはいくらかましではないだろうか。それでもそれはそれで気が重いことは確かではあるが。


「まだぜんぜん遅刻じゃない」


 背中に聞き覚えのあるアニメ声を投げつけられた。


 ため息をつきたかったが、さすがにそれはまずいだろうという判断くらいはつけられる。ゆっくりと振り向くと、


「まだ七分あるじゃない」


 腰に手をあてて睨みつけてくるスージーの姿があった。



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