濁流に消えた村
「なんだって?」とリュカは突然の報告に愕然とする。
「下流の扇状地へ鉄砲水が押し寄せて、いくつもの集落が飲み込まれた?」
「どうやら本流の水位が高く、支流の水が逃げ場を失ったようです…」とマリー。壁のような濁流が、一瞬ですべてを押し流した。
「支流の開発が進んでいたため、森林面積も減少していて、森林による保水力を担保できなかったようです。」とヘレナ。
「これは、議会でリュカ君を追求する声が起こりそうだね…」とリルは静かに言う。
***************************
それは一瞬だった。支流の水は逃げ場を失い、壁のような濁流となって押し寄せたのだ。
被災地に赴いたリュカの目に映ったのは、かつて村であった場所だった。
「……ここから、やるべきだったのではないのですか」
生き残った老人の言葉は、責めるでもなく、ただ事実を突きつけるものだった。
***************************
議会では案の定、リュカの辞任要求が噴出した。
「このような大惨事を予測できなかった宰相閣下の見識が問われるべきだ。」と反リュカ陣営が騒ぎ出したのだ。
リュカも責任を痛感していた。(私は、何を見逃したのか…?)(報告はあった。兆候もあった。それでも――選んだのは、私だ。)
理論は正しくとも、現実は嘲笑うこともある。
リュカは翌日には、テレサ女帝に辞任願を出す。




