決意〜民の暮らし〜
しかし、女帝の言は思いもよらぬものであった。
「辞任により責任を取るのではなく、事業の完遂で責任を取れ。」静かだが、揺るがぬ声だ。
「順序を誤っただけではないか。ならば、正せ。」
順序を誤った、たしかにそうだ。辞職にこだわるだけでは、改善が見込まれない。リュカは、洪水被害者への見舞金を支給し、新たな洪水対策を考える。
リュカは新たに地図を広げた。だが、今度は地図だけではなかった。そこには被災地で聞いた言葉、見た光景が重なっていた。
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新たな洪水対策の骨子は、以下のとおりである。
東国の河川を水路・運河として活用し、移動の便を図ることを基調とした。洪水を防止するために、自然の低地や湿地を利用した遊水地を作ることとした。禿山や河川流域の植林を推奨し、土壌を保全する。小規模の分流工事を行い、村単位や支流単位での流れを変える。であった。つまり、ハードで中央集権的な治水を改め、分散と吸収による治水を旨とするのだ。
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「つまり……僕が間違えたのは、川だけを見ていたことなんだね…」
リュカは地図を見つめながら呟いた。
「本流を整えれば、全体が安定すると考えていました。しかし、東国の河川は一本の線ではない。支流や森、そしてそこに暮らす人々すべてが関係していたのですね。」
「そうですね。」とヘレナは頷いた。「水の流れだけではなく、土地全体を見る必要がありました。」
ホンテは静かに付け加えた。
「森は川の一部です。木々が水を蓄え、土が水を受け止める。それも東国の治水なのです。」
特に、その費用を渡し守り事業を国営化して、その輸送運賃により賄うことが画期的だった。たしかに、同じ河川事業だが、治水と水運は、従来は切り離されていたからである。
「今まで、僕は、地図の上で最も効率的な方法を考えていたよ」
リュカは新しい計画書を広げた。
「しかし、それだけでは足りない。これからは、土地で暮らす人々の声を聞きながら治めよう。」
リルが微笑む。「少し変わったね、リュカ君。」
「ああ。正しい答えを探すだけではなく、その土地に合った答えを探さなければならない。」
見舞金支給と住民の対話を行ったリュカは次のように宣言した。「地図の上ではなく、民の暮らしから治める。」その言葉は、かつての自分との決別でもあった。




