第4話 三度目に出会えた幸せ 2
「これは…もしかして前の…?」
私は翌日、届いた封書を手にラシオン様に会いに来た。
一瞬、相談するのを躊躇ったけれど、隠し事はせずにお互いに話せるようになりたいと思い、伝えた。
「ええ…多分、一人目の婚約者ディルと二人目の婚約者マクトルのどちらかだと思います。ディルが書いたものなら判別できたと思うのですが、この手紙はタイプライターで打たれていたので…。こんな事をお話するのは心苦しかったのですが、やはりあなたに相談すべきだと思いました」
「うん、相談してくれて良かったよ。一人目は他の女性を妊娠させ結婚したそうだが、その子供は元婚約者の子供ではなかったとか?」
「そのようです。ご両親からはさぞ叱責を受けたと思います」
「二人目は他の令嬢とホテル街へ行く現場を押さえたと…」
「はい。不貞の言い訳をしに一度我が家に来ましたが、その後、会う事はありませんでした。弁護士を通して婚約破棄しましたし。二人とも、今はどうしているのかも知りません」
「やっぱりこの二人のどちらかという可能性が大きいね。本当に…モラルのない人間の思考回路は理解できないな。僕の方で彼らの事を調べておくよ」
「お願いいたします」
「あと、決して一人で行動しないように」
「はい」
彼に相談して良かった。
抱いていた不安が、少し軽くなった気がした。
「ところで、近々夜会があるのだが一緒に出席しないか? 気分転換になると思うんだけど」
「はい、ぜひ」
まさかこの夜会で、あんなトラブルが起きるとは思いもしなかった……
◇
漆黒の空に浮かぶ白い月。
会場は外の静寂とは真逆の賑やかさに包まれていた。
天井からは星を散りばめたようなシャンデリアが耀きを放っている。
上品な白を基調とした花々が、テーブルを美しく飾っていた。
「すごい人ですね」
「迷子にならないように」
「迷子になったら、探して下さいね?」
「ふ、もちろん」
私はラシオン様の腕に手を回し、会場へと入って行った。
「…!?」
「どうかした?」
「…いえ、なんでもありません」
一瞬、誰かの視線を感じた気がしたけど…これだけの人だもの。
気のせいね。
だが…この時、胸に抱いた違和感を見過ごすべきではなかった――――…っ
「すまない、少しだけ離れるけど…」
「ええ、こちらでお待ちしています」
私は近くのテーブルにあった料理へ手を伸ばした。
その時…
「あ!」
隣にいらした令嬢のワインが零れ、私のドレスにかかった。
「も、申し訳ありませんっ 急いで拭かなければっ どうぞこちらへっ」
「えっ? だ、大丈夫ですからっ」
しかし令嬢は有無を言わさず、私を会場の外の廻廊へと連れ出した。
ラシオン様に何も告げずに出てきてしまった。
早く戻らねば。
「あ、あのっ 本当に大じょ…んぐっ!」
背後から、突然口を塞がれた。
ツンと鼻に付く匂いを嗅いだ途端、意識が遠退いた。
ラシ…オン…様…
声にならないその声は、誰にも届かなかった。




