マジで言ってるの?
「まぁ、待て。我々は蛮族ではない。諸君ら、いきなり頭ごなしに済まなかった」
ひときわ綺羅びやかな装備をした男が馬から降りて話しかけてくる。
「申し遅れた。我はマギロス王国第一騎士団の団長。セテウス・メギストスと言う」
話し方は偉そうだが、雰囲気は物腰柔らかな魔族だった。
「私はウェスティアといいます」
「よ、ヨーイチ・キノシタです……」
「シェルティエルよ」
「それで、貴殿らはなぜここにいる? 魔脈目当てか?」
こちらの心の内を見透かすように鋭い視線で問いかける。
「いや、俺たちは盗賊退治をしたところだ」
俺が代表して答える。
「ほぅ、確かに戦闘痕があるな。相手は15人前後といったところか」
死体は魔脈の力を得てゾンビやグールになることもあるらしいので、全て焼き払ったが、この場の状況で人数まで言い当てた。
「確かにこの辺りを盗賊が根城にしているというのは聞いている。それを貴殿ら3人で制圧したと?」
俺の姿をジロジロと見る。
シェルティやウェスティアさんはともかく、俺はまったく強そうに見えないからな!
「しかも、その盗賊は大富豪の家を襲い、かなりの魔石や魔装具を奪い去ったという。その戦力は倍以上あって、やっと制圧できるほどだと聞いたが……」
「たまたま魔脈を制圧できたからな」
「なるほど。我々は最近この辺りに吹き出た魔脈の調査に来たのだが、それがその魔脈か?」
「そういうこと。山賊に襲われて、反撃をしていたらこの場所にたどり着いて、つい数時間前に倒して今は休憩していた所だ」
その時、一人の女性が一歩前に出てセテウスとやらに声をかける。
「彼等は嘘は申しておりません」
「修道女の使う魔法ね。相手の嘘を見抜く魔法だわ」
シェルティが、呟く。
なるほど、探りを入れてたわけか。最悪、俺たちが盗賊として処分されてた可能性も考えると、ありがたい限りだ。
「しかし、ヨーイチ様」
修道女が俺に話しかける。
「アナタには違和感を感じます」
「ん? 俺に? 嘘はないと言ったのはそっちだろ。痛くもない腹を探られるのは勘弁だ」
「いえ。 アナタはこの世界の人間ではないですね?」
そう来たかぁ。
「我々は魔脈の調査と、盗賊退治を国から依頼されてね」
馬車の中でセテウスが話す。
「おかげで作業が捗った」
「そりゃ何よりだ。んで、俺たちはどこに向かってるんだ?」
「もちろん魔都マギロスだ。ぜひ歓迎させて頂きたい」
魔脈を封じて、国の管理下に置くことによって魔獣の強力化と、さっきの盗賊団みたいなのの根城にならないようにしてるらしい。
「しかし、ヨーイチ殿は肝が座ってるな」
セテウスが言う。
どのへんがだろう。
「私も思いました。国の第一騎士団ともなれば、この大陸最強の軍隊。さらにその団長ともなれば、この大陸1強いといっても過言ではありません。そんな方相手に最初からそんな尊大な態度で接する事のできる人はそうはいません」
褒められてるのか馬鹿にされてるのか微妙なところだ。
それにしても、高待遇過ぎやしないか?
べつに俺たちなんて徒歩でも構わないのに。
その答えを、さっきの修道女さんが教えてくれた。
「近々、我々の前に救世主となる異世界人が現れるとお告げがあったのです。それによれば、私共の行く先にいるとのこと。そのお告げに従うならば、ヨーイチ様がその救世主となるのです」
お告げすげーな、そんな簡単に俺を救世主扱いするなんて。
「でも、歴代の異世界人なんて、なにもできないで、結局世界を救えてないんでしょ? 期待しすぎじゃない? 今んとこ、こいつ無能だし」
何がおかしいのか、俺の肩をバンバンと叩きながら笑うシェルティ。
「痛てぇよ! 無能に無能って言うな! 気にしてんだから!」
「いや、お告げによれば、今までにない能力を持った異世界人が来るという話なんだ」
今までにない能力ねぇ。無能ってことじゃね?
「とりあえず、我等が王に謁見してもらおう」
クックック、と楽しそうに声を漏らすセテウス。
「いきなり王様にですか!?」
ウェスティアさんが声を荒げる。
「そうだ。あの《・・》人嫌いの王が会いたいと言っているのだ」
「え、そんな人の前に姿表して殺されたりしない?」
なんか非常に心配になってきた。
イキナリ斬り殺されるなんてことないよな!?
そんな心配は杞憂に終わった。
──なんてことはなかった。
「さぁ! その力を存分に発揮して見せてくだされ!」
デウスと名乗った王は挨拶もそこそこに剣を引き抜いた。
しかも真剣かよ! せめて木剣くらいにしとこうぜ!?
王都に着いて休むまもなく危機にさらされる俺。
俺が一体何をしたってんだよぉ!!




