なんとか……
ウェスティアさんの攻撃はかなり早い。
そのウェスティアさんと手合わせしていたおかげである程度避けるのはうまくなったつもりだけど、実際敵と相対すると、恐怖で上手く避けられない。
今回もそんな感じだ。
「殺す気できなさい」
「わ、わかりました」
剣だけは立派だが、へなちょこ剣法がどれだけこの武闘派王に通じるか……。
炎の魔石と、一回だけ使える防御魔法を使って隙を作るしかない。
「ほう。なかなか良い剣と魔石だ」
王は様子を伺っているようだ。相手が僕のような雑魚でも手を抜かないのが心情なのだろう。
王は俺の喉めがけ、鋭い突きを放つ。
突きの速さならウェスティアさんの方が上だ。これなら避けられる!
「駄目です! それは囮です!」
剣は途中で軌道を変え、横薙ぎになった。
俺は避けるつもりだったので、剣は遊んでいた。
それを無理矢理王の剣が飛んでくる方向へ勘だけで滑り込ませた。
それが功を奏したのか、なんとか防ぐことはできたが、王の膂力は凄まじく、僕はふっ飛ばされてしまった。
大理石でできた床を転がりながら受け身を取り、ダメージを最小限に抑える。
「ふむ。確かに剣も体捌きもド素人だ。貴殿にはどんな能力があるというのだ?」
「それが俺にもわからなくて……」
「しかし、この度神託があってな。近々くる異世界人は、今までの異世界人と少し違う、とな」
もしかして、その神託とやらはあの間抜けな神のことか?
どんな能力を授けたのかも知らせずにどうしろと……。
「しかし、役に立たぬなら、今ここで止めを刺しておいたほうがいいかもしれぬな。人間側に取られても癪に触る」
そう言ってデウス王は剣を構えた。
やべぇ、マジで殺される。
ここは土下座してでも命乞いをしなければ。
デウス王が俺に向かい、踏み込むと同時に俺は渾身の土下座を放った!
「申し訳ありません! 命だけは──!!」
「ぬっ!?」
いきなりの俺の行動に戸惑ったデウス王はたたらを踏む。
その瞬間、俺が投げ出した剣から魔石が外れ、デウス王の足元で大爆発を起こした。
あまりの衝撃に、デウス王は吹き飛ばされる。
もともと強力な炎の魔石は、魔脈でレベルアップを果たし爆弾のように爆発する爆熱の魔石になっていたらしい。(後から知った)
「ま、まさかこの様な奇策を……。しかしその奇妙な動きは爆炎から自身を守るための備えであったか……」
少しよろめきながら立ち上がるデウス王。
爆心地は完全に崩れ、下の階まで大変な事になっている。
あんなの食らっても無事なデウス王ってやべぇ魔族だな。
「お主の勝ちだ……」
折れた剣を支えに、片膝を大地について肩で息をしている。
「王よ! おのれ……!」
近衛兵みたいな人たちが次々と抜剣する。
「ちょ! なんで!?」
先に仕掛けてきたのはそっちだろ!
「辞めぬか! 我とヨーイチ殿との真剣勝負で我が負けただけだ! 我等の勝負を汚すような真似はさせん!!」
おぉ、流石だ。
近衛兵たちも王のあまりの剣幕に押されてユックリと剣を収めた。
「済まなかったな」
そう言ってデウス王は普通に立ち上がった。
もう傷も癒えている。
どんだけのバケモンだよ……。
「しかし、あの様な戦術を持っているとは……。剣の腕や体捌きに頼らず、自らの知恵だけで我をここまで追い詰めたのはそなたが初めてだ、ヨーイチ殿」
こうして魔族の王を打ち破った? 俺は英雄として魔族大陸に迎え入れて貰えたのだった。
その夜は大宴会だった。
魔王を打ち破るほどの勇者が異世界から来たと。
「ねぇ、ヨーイチ」
シェルティが俺のところへやってきた。
「ん? どうした? 魔王を倒した俺への賛辞か?」
「違うわよ。むしろ逆! あんたあれ土下座しようとしただけでしょう!?」
うっ。痛いところを……。
「やはりそうでしたか……」
ウェスティアさんも来て呆れた声をだす。
「仕方ないだろ、死にたくなかったんだから! 土下座でもなんでもするわ!」
プライド? 命の前にはそんなもん簡単に捨てられるわ!!
「まぁ、結果的には勝ったことになって、魔王に気に入られたのは運が良かったわね」
「まったくです。しぶとさだけは、異世界人ですね」
「なんとでも言え! 命も助かったし、魔族たちにも気に入られた! 結果オーライだ」
こうして宴も終わり、俺たちは久々にベッドで寝ることができた。
しばらくはこの街に滞在して、俺の特訓や旅の準備を整えるらしい。
が。そんな話しが出たにも関わらず、俺たちはすぐに旅にでる事になった。
「ドラゴン退治!?」
「そうだ。北の鉱山に住み着いたドラゴンを退治してほしいのだ。我を破ったお主にしか頼めぬことだ」
なんでも、討伐に向かった冒険者たちは皆帰って来なかったという。
騎士団とか軍隊とかいるでしょ!
なんで俺たちなの!?




